
新旧問わず世界中のアニメや映画が視聴できる「Amazonプライム」。6月の視聴ランキングは『薬屋のひとりごと』をはじめ、ファンタジー色の強い作品が多数ランクインしている状況です。
今回は「Amazonプライム6月の視聴ランキング(日本)」の上位3作品のアニメを紹介しつつ、ランキング結果の分析を行います。気になる作品があれば、ぜひチェックしてみてください。
本記事は、Amazon.co.jpのプライムビデオ視聴ランキング(2025年6月19日8:00現在)に基づいてランキングを集計しています
●Amazonプライム6月の視聴ランキング:3位『薬屋のひとりごと』
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中華風のとある大国を舞台に、薬師の少女が活躍する一風変わったミステリー作品『薬屋のひとりごと』Season2が3位にランクイン。Season1の放送当初から高い人気を獲得していた本作。まさしくファン待望の最新シリーズということで、冬アニメとして登場以降、ランキングの上位をキープし続けています。
街で薬師をしていた少女・猫猫(マオマオ)がとある事情により後宮で毒見役に任命され、陰謀渦巻く後宮で起こる事件に、その類まれな推理力と薬学知識などを駆使して、立ち向かっていく物語です。登場する薬学知識の細かさはSeason2でも健在で、独特な発想と共に語られる含蓄のある説明はやはり魅力的です。
薬学のみならず、服や水路の構造など、作中で登場するものにはなんらかの合理的な意味が与えられており、きわめて説得力のあるフィクション世界が構築されています。Season2では隊商(キャラバン)が訪れることで、またもや後宮で不穏な動きが見られるようになり、猫猫の推理がさらに冴え渡ります。
『薬屋のひとりごと』と言えばSeason1の時から音楽に力を入れており、緑黄色社会「花になって」は2025年6月時点で約1799万回という驚異的な再生数を記録。Season2のオープニングテーマ幾田りら氏の「百花繚乱」は約717万回再生され、第2クール目のオープニングテーマMrs. GREEN APPLEの「クスシキ」は、約413万回再生を記録し、高い評価を集めています。物語や画作り、音楽のどれをとっても良質で、Season2も見逃せない作品に仕上がっています。
●Amazonプライム6月の視聴ランキング:2位『片田舎のおっさん、剣聖になる』
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田舎で剣術指南を行うセミリタイアぎみのおっさんが、かつての教え子に導かれて出世し、強敵と戦うライトノベル原作のアニメ『片田舎のおっさん、剣聖になる』が2位にランクインしました。
シリーズ累計発行部数が800万部を超えるなど、ライトノベル及びコミカライズ版のポテンシャルがそもそも高く、テレビアニメ放送に合わせてフルカラー縦漫画版(Webtoon版)の配信がスタートしたことも後押しとなり、放送開始以降、上位をキープし続けています。
さらに主人公ベリル・ガーデナントの声をゾロやジョニー・デップの吹き替えでおなじみの平田広明氏が担当し、ヒロインのアリューシア・シトラスを東山奈央氏が務めるなど、豪華な声優陣を起用しています。
そしてT.M.Revolutionのボーカルとしてはもちろん、多方面で活躍している西川貴教氏のオープニングテーマ「HEROES」や、これまで数々のアニソンを手掛けてきたFLOWのエンディングテーマ「Alright!!!」など、音楽面でも強力な布陣をそろえています。
いい意味で憎らしいのは、主人公がおっさんということで、声優や音楽を担当するアーティストに、きっちり中年層の布陣をそろえているところ。中年視聴者層が思わず共感してしまうような仕掛けを、多数用意している作品と言えます。
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近年増えつつある、中年のおじさんが転生したり、下剋上したりするタイプの、いわば「おっさんTUEEE系」のど真ん中を行く作品です。人生の折り返しを迎えた、中年層ならではの哀愁を含みつつ、人生を大逆転していく爽快感が、視聴者の心を捉えているのかもしれません。先日、最終回の場面カットとあらすじが公開され、フィナーレに向けて、今再び注目を集めている状況です。
●Amazonプライム6月の視聴ランキング:1位『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』
スタジオカラーとサンライズの共同制作により、当初から注目を集めていたガンダムシリーズ最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(以下、『ジークアクス』と表記)』が1位に輝きました。監督を務めるのは『フリクリ』や『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』などの作品で知られる鶴巻和哉氏、シリーズ構成に榎戸洋司氏、そして脚本に庵野秀明氏を迎え、超豪華な制作陣が集結した話題作です。
アニメ界のスーパークリエイターたちによって一体どんなガンダムが作られるのかと、放送前からすでにさまざまな考察がSNS上で展開されていました。シリーズ序盤は劇場版として公開され、シャアがガンダムに搭乗する、ジオン公国軍が勝利したパラレルワールドが描かれるなど、予想の斜め上を行く内容に、多くのファンが度肝を抜かれることになりました。
さらに先日放送された第11話は、後半にかけてとんでもない描写の連続でSNSは大騒ぎの状態。映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)」が流れるなど、放送中から「ヤバいことが起きた……」とファンだけでなく、驚きをつぶやく著名人の投稿なども相次ぎ、大きな反響を呼びました。具体的に何が起こったのか、まだ見ていない人はぜひ本編を確認してみてください。
本作は設定や展開など、ガンダムシリーズファン、あるいは富野由悠季氏のファンだからこそ分かる、ハイコンテクストな作品と言えます。考察しがいのある内容で、放送のたびに各々が自分の考えを投稿するという現象が発生。視聴者と一緒に盛り上げていく、視聴者参加型とも言えるコンテンツになっており、一種の祭りと化している状況で、大変な盛り上がりを見せています。最終回、どんな締めくくりを見せるのか、目が離せません。
●Amazonプライム6月の視聴ランキング:トップ10
10位:『WIND BREAKER』
9位:『勘違いの工房主〜英雄パーティの元雑用係が、実は戦闘以外がSSSランクだったというよくある話〜』
8位:『LAZARUS ラザロ』
7位:『Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。』
6位:『一瞬で治療していたのに役立たずと追放された天才治癒師、闇ヒーラーとして楽しく生きる』
5位:『薬屋のひとりごと』
4位:『片田舎のおっさん、剣聖になる』
3位:『映画版 変な家』
2位:『バチェラー・ジャパン』
1位:『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』
●Amazonプライム6月の視聴ランキング:『ジークアクス』が快進撃を見せる! 一方、ジャンプ作品はランク外に。
2025年6月のアニメ視聴ランキングは、『ジークアクス』が怒涛の勢いで順位を上げ、首位を獲得。そのほか異世界ファンタジー系の作品が多数ランクインする結果となりました。
2位の『片田舎のおっさん、剣聖になる』、6位の『一瞬で治療していたのに役立たずと追放された天才治癒師、闇ヒーラーとして楽しく生きる』、7位の『Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。』、8位の『勘違いの工房主〜英雄パーティの元雑用係が、実は戦闘以外がSSSランクだったというよくある話〜』の4作品がランクイン。俺TUEEE系、異世界転生系の強さは、4月から続いており、春アニメではファンタジー作品が上位に食い込む傾向にあるようです。
また『片田舎のおっさん、剣聖になる』以外の3作品がいずれも、いわゆる「追放系」ないし、それに類する内容であるという点も特徴です。タイトルの長さも共通項で、さらにタイトルの前後が読点によって区切られ、前半で「追放」という絶望を書き、後半で「逆転」を匂わせる要素を入れるという、タイトルの構成も似ています。こうしたタイプの作品をヒットさせるためのフォーマットが、かなり確立されていることが伺えるでしょう。
『薬屋のひとりごと』は登場以降、不動の人気を示しており、2月は1位、3月は2位、4月は2位、6月は3位とトップ3入りが続いている状況です。オリジナルアニメ作品としては渡辺信一郎監督の『LAZARUS ラザロ』、庵野秀明氏が脚本を務める『ジークアクス』の2作品がランクイン。オリジナルアニメの場合、いずれも世界的に著名なクリエイターが参加しているという点で共通しています。
一方で、毎回のようにランクインしているジャンプ原作のアニメが、6月は1作品も入っておらず、やや勢いが落ち着いている状況です。3月まではファンタジー作品とつばぜり合い状態でしたが、4月からジャンプ作品が徐々に弱くなり始め、6月はついに主導権を異世界ファンタジー系が握る結果となりました。