2025年5月29日から6月1日まで開催されていた「Pokemon GO(ポケモンGO)」の大型イベント「Pokemon GO Fest 2025:大阪」にて、ポケモンGOのチームリーダーであるエド・ウー氏にお話をうかがう機会を得た。
ポケモンGOは、5月29日に米国のゲーム会社、スコープリー(Scopely)に買収されたばかりだが、ゲーム方針に変更はあるのか。また、2026年に10周年を迎えるポケモンGOを、どのように発展させていきたいのか。
●パンデミックで試練が訪れるも、9年で素晴らしいプロダクトに成長した
エド氏は、ポケモンGOのローンチ以前から、エンジニアとしてNianticの位置情報ゲームの開発に従事しており、ポケモンGOのローンチ時点からエンジニアのチーム全体を率いている。現在は、ポケモンGOとその他のゲームも統括している。
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ポケモンGOは2025年で9年目を迎えるが、エド氏は「素晴らしいプロダクトに成長した」と振り返る。「9年続いた後もなお、スタンプラリーやルートなどの新機能も搭載しています。今回、Go Festを実施するにあたり、吹田市でもそうした機能(スタンプラリーやルート)をローンチできました」(エド氏)
開発は全てが順風満帆だったわけではない。2020年に新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、外出に制限がかかった。外で遊んでもらうことが基本コンセプトのポケモンGOにとって、外出できないことは、ゲームを楽しむ上で致命的だ。
このパンデミックの間、「世界を再び探索できるようになることを夢見て、プロダクトがどう進化すればいいかを考えてきました」とエド氏。結果的にパンデミックは終息し、Pokemon GO Festは2022年にリアルイベントとして復活、この1〜2年は新機能も積極的に追加している。エド氏が冒頭で触れたルートやGOスタンプラリーもそうだし、2024年に実装した「ダイマックス」と「キョダイマックス」も、多くのプレイヤーが外に出てプレイするという、ポケモンGOの原点に立ち返ったといえる機能だ。
ダイマックスとキョダイマックスに変化できるポケモンは、ポケモンGOにも続々登場しているが、現状、これらのポケモンをレイドやGOバトルリーグなどのバトルに参加させることはできず、ダイマック/キョダイマックスのポケモンの討伐にしか使用できない。エド氏は「ダイマックスやキョダイマックスのポケモンを捕まえた後、いろいろな場所で使えたらいいと思っているプレイヤーがいることは認識している」と話す。今後、活躍の場が広がることを期待したい。
●スコープリーの買収後も、同じチームで運営を続ける
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スコープリーに買収されたことへの影響も気になるところだ。この件は弊誌でも度々伝えてきているが、買収後もエド氏をリーダーとする開発チームは変わらず、従来と同じチームが自律的にポケモンGOの開発を継続していく。
エド氏は、今までのチームを継続することで、ポケモンGOがさらに進化すると信じている。
「(ポケモンGOは)スコープリーに買収はされましたが、スコープリー自身が、今のチームだからこそポケモンGOができたと思っていただいている。ポケモンGOは、たゆまぬ変化と改善を続けています。だからこそ、同じチームのまま運営できたと思います」
「私はNianticのゲームに10年かかわっていますが、今の姿になったのは、これまでのチームのおかげであるし、同じチームを進化させ続けることで、今までのようにすてきなものができると信じています」
スコープリーも、エド氏たちの意思は尊重している。「スコープリーは全面的にNianticのチームを信頼いただいている。そこに自分たちが加わって一緒にやろうというわけではない」(エド氏)
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●2026年にローンチ10周年 「より大きくて楽しい体験を」
さて、ポケモンGOは2026年にローンチから10年を迎える。この節目のタイミングで、どんな仕掛けを考えているのだろうか。エド氏は「具体的な計画は共有できませんが……」と前置きしつつ、「10周年という節目の年はとても楽しみにしていますし、興奮しています。当然、それに合わせて、より大きくて楽しい体験をご提供できたらと考えています」と話す。
今やポケモンGOは、毎月、いや、毎週のようにゲーム内でイベントが進行しており、Pokemon GO Festのような大型イベントも、年に数回開催されている。そもそも、ポケモンGOのように、多数のユーザーを抱え、毎年大きな進化を繰り返しているモバイルゲームはまれな存在といっていい。そんなゲームが10年目で何を仕掛けるのか、期待せずにはいられない。
一方で、エド氏は以下の通りに続ける。
「規模が大きいことばかりに注目しているのではなく、われわれが改善しないといけないことは、ユーザーへのコミュニケーションの仕方です。より早く、正しい情報をお届けするなど、細かい点で改善する必要があります」
ポケモンGOで度々批判の的になるのが、情報の伝え方だ。例えば、イベントで不具合が起きてもSNSでしか発信されず、プレイヤーに伝わり切れていないことがある。イベントの内容についてはアプリの「ニュース」に集約されているが、不具合の内容や補填などは、アプリのみでは分からないケースもいまだある。重要な情報を、より早く、多くのプレイヤーに伝える仕組みを確立させてほしい。
●不具合減少に向けてコードを大改修 4つのバトルシステムに適用へ
日々、多数のイベントや機能が実装されているポケモンGOでは、不具合をいかに減らすかが課題といえる。
コミュニティーデイや大規模イベントなどで、ゲーム体験を損なうほどの大きな不具合に遭遇する頻度は減っていると感じるが、不具合自体は多くある。既知の不具合は、ポケモンGOのヘルプセンターから確認でき。例えば2025年6月時点では「ラプラス」が10kmタマゴから出現しない、ダイマックスまたはキョダイマックスバトルで攻撃をかわしたにもかかわらず全ダメージが適用される、といったものがある。
繊細な操作が求められ、多数の処理が実行される「GOバトルリーグ」も、不具合と隣り合わせのコンテンツだ。最近目立つのが、バトルが終わった後に他のアプリに切り替えると、BGMが消えるバグ。こちらはヘルプセンターにも明記されており、「現在修正作業中」とのことだが、数カ月前から一向に直る気配がない。
細かいところでは、ポケモンの交代時にノーマルアタックを差し込めない、相手の攻撃でHPが0になったはずなのにその判定がなされずスペシャルアタックを打ててしまうバグなどもある。また、通信環境の影響なのか、バトル中にフリーズしてしまい、気付いたら数ターンの攻撃を受けていたということもよくある。1ターンの攻撃が勝敗に直結するバトルリーグにおいて、たとえ1秒でもフリーズするのは致命的だ。こうしたバグに嫌気がさし、GOバトルリーグをやめたり、距離を置いたりしている人を周囲で見かける。
大多数のプレイヤーがさまざまなコンテンツをプレイするポケモンGOで、不具合はどのように減らしていくのか。エド氏に聞いたところ、ポケモンGOでは「ジム」「レイドバトル」「GOバトルリーグ」「ロケット団」という4つの異なるシステムがあることに言及する。そして、不具合をなくすには、これら4つのシステムが採用しているコードを改善する必要があるという。
エド氏によると、2024年にバトルに関するコードを大きく改修しという。具体的には、2024年に導入したダイマックスとキョダイマックスでは新たなコードに書き換えたそうで、これを他のバトルシステムにも適用することで、不具合をより効率よく修正できる。これまでバラバラだったコードを1つに統一したことで、上記4種類のバトルシステムを改修する際に、4回ではなく1回で済むためだ。
コードの改修によって「ゲームの安定性が向上し、バトル関連で出ていたバグの大本の原因をつぶせた」とエド氏は手応えを話す。ジムとレイドバトルへの適用は終わっており、残るはロケット団とGOバトルリーグだという。今後も改修が進むことを期待したい。
●都市部と地方の不公平感は解消されるのか
もう1つ、ポケモンGOで度々聞く不満が、都市部と地方の不公平感だ。アイテムをゲットできるポケストップは、公園、駅、商業施設など、人口が多い場所に多く設置され、地方では少ない場合が多い。レイドバトルも、都市部では人数が集まっても、プレーヤーの少ない地方では人数が集まらず、伝説ポケモンを討伐できないケースもある。
エド氏は、こうした地域格差の解消につながる取り組みの1つに「コミュニティーアンバサダー」プログラムを挙げる。このプログラムでは、ポケモンGOプレイヤー同士の対面での交流イベントをサポートする。アンバサダーはNianticの審査を経て認定され、コミュニティーを作ってイベントを開催できる。
コミュニティーアンバサダープログラムは都市部だけでなく地方でも拡大しているので、「人の集まりやすさや、プレイヤーの仲間を見つけことにもつながります」とエド氏は期待を寄せる。
またエド氏は「いろいろなコミュニティーを訪れていますが、特に地方都市を訪れたときに、コミュニティーの温かさを感じます」と話す。
ポケストップはユーザー自らが申請できるが、これをユーザーが一緒に審査する「Niantic Wayfarer」という仕組みがある。ポケモンGOではレベル37以上のプレイヤーがWayfarerに参加でき、申請されたポケストップを承認すると、ゲーム内に反映される。申請すれば必ず承認されるものではないが、Wayfarerの参加者が増えることで正しく審査できる人材が増え、ポケストップの増加にも寄与するだろう。
ポケモンGOでは、コミュニティーのイベントに参加したり、他のフレンドにメッセージ送ったりできる「Campfire」も提供している。ポケモンGOの買収にあたり、スコープリーはWayfarerとCampfireも引き取っており、これら2サービスを通じたコミュニティーの強化は今後も継続される。スコープリーはポケモンGOのコミュニティーを高く評価しており、「買収にあたってゲーム事業だけでなく、WayfarerやCampfireをスコープリーが引き継いでくれたのは、コミュニティーの発展のため」(エド氏)でもある。
「世界のどこにいてもポケモンGOは楽しめますし、その発展にWayfarerもCampfireも貢献すると考えています。スコープリーも支援してくれているので、地方都市でも、コミュニティーの発展を通して、不公平感を与えているかもしれない点は改善していけると考えています」(エド氏)
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