【work23】「上司が理由で会社を辞めたい」8割に・・・“総選挙”で上司を決める現場に密着 “選べる上司”で離職率が低下した会社も【news23】

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2025年06月25日 14:10  TBS NEWS DIG

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TBS NEWS DIG

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“働き方のイマ”に注目する「work23」。“自分の上司は、自分で選ぶ”。そんな働き方がいま静かに広がり始めています。都内のある会社では、上司を選ぶ“総選挙”まで開かれているそうです。皆さんは、自分の上司、選びたいですか?

【写真を見る】嫌いな上司トップ3は?上司に求めるものは?

上司は“選ぶ”?熱気!上司を決める「総選挙」

約1000人が集まった都内のイベント会場には、熱気と期待、そしてスティックバルーンの音が響き渡ります。

現れたのはスーツ姿の男性4人。これはアイドルグループのコンサート…ではありません。実は彼ら、ストレッチの専門店「ドクターストレッチ」の店長たち。

店舗を統括するエリアマネジャーを総選挙で決めるというのです。

壇上では、候補者たちの熱のこもった演説が繰り広げられました。

新百合ヶ丘店 野田亮 店長
「のびのびと、自分らしく働ける現場を私は本気で作ります」

横浜ポルタ店 高木塁 店長
「皆さんからいただいたアイデアを必ずカタチにします」

渋谷マークシティ店 結城哲志 店長
「あなたのその一票で僕をマネジャーにしてください」

その後、社員たちはスマホで投票。そして、1位となったのは高木塁さん(29)。新たな“上司”の誕生です。

この総選挙、社員たちはどう受け止めているのでしょうか。

社員 20代
「自分の上司は自分で決めるというのは、斬新でいい制度だと思う」

社員 20代
「経歴や立場が関係なく、誰でも挑戦できるチャンスがあることは、すごくある意味平等でいい」

この制度を仕掛けた黒川社長は…

「ドクターストレッチ」を展開するノビテル 黒川将大 社長
「一番健全なのは上司が出世を決定しないこと、給料を上司が査定しないこと。給料は実力で決まって、出世はみんなに選ばれてなることが大事。より生産性を上げる行為でも、この選挙制度は役立っている」

いま、部下が納得できる「上司選び」が注目されています。

ある調査では「上司が理由で会社を辞めたいと思ったことがある」と答えた人が、約8割にのぼっているのです。

「上司選択制度」導入で離職率が低下 「社員から選ばれている気持ちで」

そんな“上司と部下のミスマッチ”を防ごうと、“新たな取り組み”を始めた企業が耐震設計などを手掛ける「さくら構造」。

社員の渡辺梨沙さんは、上司である山田班長から任される仕事の多さに悩んでいました。

渡辺梨沙さん(31)
「(仕事量を)調整をしてほしいと言ってもしてくれなかったので、ついていけないなと。相談しても解決しないなら無理だと思って、(会社を)辞めるしかないかなと」

そこで、年に一度の異動の機会に活用したのが「上司選択制度」。8人いる上司の長所や短所などが書かれた、いわば上司のマニュアル本。実際に働いたことがない社員も、上司の特徴を知ることができます。

例えば、山田班長の場合…
▼長所「現場の知識が豊富」「エクセルに詳しい」
▼短所「部下に興味がない」「女性の扱いに慣れていない」

…なかなか赤裸々です。

また、菅野班長は…
▼長所「まじめ」「社員の働きやすさを最優先」
▼短所「普段からグチや文句を言っている」

「社員の働きやすさを最優先」にしている菅野班長のもとへ、渡辺さんは異動しました。一方で、部下を失った元上司・山田班長は…

山田班長
「うまくいかなかったなとか、やっぱり配慮が足りなかったかなとか。いろんなことは思いましたけど、それはそれで気をつけていかなければいけないことなので、それは自分の学びになった」

この「上司選択制度」を導入すると、11%あった離職率は0.9%にまで低下しました。

ちなみに、渡辺さんは異動したことで山田班長の弱点や良さを改めて実感。翌年、再び山田班長を「上司」として選び、元のチームに戻っています。

さくら構造 田中真一社長
「常に経営者も上司も、働いている社員から選ばれているという気持ちをもって経営していかないといけないのに、昔の感じが残って横柄な企業もある。それは時代が違うので、直していかなければならない」

「上司が理由で辞めたい」79% 上司にはネガティブな印象ばかり

藤森祥平キャスター:
人事コンサルティング会社「ベクトル」が会社勤めをしている500人に行ったアンケートを行ったところ、「上司が理由で会社を辞めたいと思ったことがある」が79%。

さらに、「今の上司が好きですか?」と聞くと40%は「嫌い」と回答。
「どちらとも言えない」は44%ですが、「どちらかというと好きじゃない」という回答がかなり入っているそうで、ネガティブな印象ばかりです。

小川彩佳キャスター:
いつの時代も上司への不満はあったと思いますけれども、上司を選ぶという取り組みについて、どうご覧になりますか。

小説家 真山仁さん:
新聞社を辞めたのは30年以上前ですが、やっぱり上司と合わなかったというのが(辞めた)一番の理由です。ただ、辞めてしばらく経ってから間違いだったなと思いました。所詮、自分が仕事をできない言い訳です。結局、できない上司を説得できずに、「どうやって読者に自分の言いたいことを伝えるんだ」ということに気づいたんです。

はっきり言うと、上司を選べないのは社会の常識です。嫌な上司の下で経験値を積んでいくことの方が本当は良い。一番かわいそうなのは、一番最初の新入社員のときにいい上司の下にいると、あとが大変です。

小川キャスター:
どうしようもない環境もあるとは思いますが、確かに、つらい上司だと同僚同士で一致団結し、新しく対処方法を考えることもあります。

小説家 真山仁さん:
バランスですけど、圧はある程度あった方がいいと思います。上司もバランスが大事なことだとわかっていると思いますけどね。

藤森キャスター:
理想の上司もどこかにはいると思うので、今の若い世代の皆さんにどんなことを求めているか聞いてきました。

“理想の上司”に求めることは?「否定しない」「調整力」

古田 敬郷キャスター
「上司に求めるものはありますか」

鉄道関係・新卒 23歳
「否定しないっていうのが一番求めるところではあります」
「新卒の人って、お客さま目線のアイデアがたくさんあると思うので、そういった新しいアイデアっていうのを、どんどん引きのばしてもらいたいなというのは思います」

歯科助手3か月目 29歳
「優しくしてほしい」

――どういうときに優しさを求める?
「プライベートは結構一緒にゲームやったりするので、上司の人と」

――夜はどちらかというと友達?
「そんな感じです」

金融業・5年目 27歳
「調整力というか、はっきりとこうだって強い勢いで上に押し上げてくれる技量を求めます。自信を持って他部門と調整してくれたり、外部と調整してくれたり、そういうかっこいい上司を求めてます」

藤森キャスター:
ちなみに、人事コンサルティング会社が行ったアンケートの続きがあります。

【嫌いな上司トップ3】
1位 高圧的
2位 自分がすべて正しいと思っている
3位 相手によって態度を変える

具体的なエピソードとしては、「朝から機嫌が悪く、当たり散らかす」「やることなすこと細かく指示を出してダメ出しをする」などがありました。

小川キャスター:
これは上司以前に、人としてよろしくないんじゃないかと感じます。

ただ、上司のあり方に望むものも人それぞれであって、どういう人に上司になってほしいか、何を求めるか、組織として何が必要かによっても変わってきます。

「上司・部下で横並び的な考え方を持っていた方が働きやすい環境に」

株式会社 QuizKnock CEO 伊沢 拓司さん:
先ほどのエリアマネジャーの総選挙は社長がおっしゃっていましたが、「上司が出世を決めない」という前提があると、映像を見る限り従業員の間の代表というか、学級員的な要素が強かったのかなと推察できるので、確かに選挙で選ぶというのは結構納得感がありました。

一般的な出世に関わるような上司だと、部下が見ていない仕事、部下に言えない仕事などが出てくるので、部下しか経験していない人からだけで評価していくのは難しいと思います。

最近、上司からだけで評価するのではなく、取引先や同僚などいろいろな人が評価する「360度評価」という人事制度が出てきています。しかし、社の体制全体を変えていかないと、評価にも統一性がないと形骸化してしまいます。評価のための振る舞いになってしまうこともあり、人事制度が変われば企業風土が変わるということは起こりづらく、企業風土にマッチした人事制度を用意してあげることが、どちらかというと正しい順序なのかなと思います。

小説家 真山仁さん:
注目はされるかもしれませんが、結果的には元に戻りがちかなと思います。
上司は大体、中間管理職ですよね。例えば先ほども上司に求めるものは「調整力」と言っていましたが、あなたが15年後に課長になって「調整力できる?」という質問をするとしましょう。課長も10年前は「駄目だよ、あいつ」と思っていたと思います。

一つだけ大事なのは、鍛えられたことが対外的な仕事をする中では大きかったこと。

ただ、みんな相当ストレスが溜まっているので、ミスはしてもいいし、挑戦もすればいいし、何でもかんでも下に媚びなくていいという環境を逆に作ってあげないと。部下がやりたい放題やって結果が出ず、売り上げが下がると人事制度以前の話になります。だからバランスはすごく大事だと思います。

小川キャスター:
ちなみに伊沢さんは会社の上司、束ねる立場ですが、どんなことを意識されていますか。

株式会社 QuizKnock CEO 伊沢 拓司さん:
人によって正しいやり方や、マッチするやり方が違う中で、終身雇用の時代ではなく、終身雇用という前提が崩れていることを考えると、上司・部下というのは、階級ではなくて役割の違いなんだなと。

それぞれ担当してる担務が違う立場だという前提で接していき、上司は部下を活かし、部下も上司を活かすという、横並び的な考え方を持っていた方が現代の社会においては働きやすい環境になっていき、成果も上がってくるのかなという感覚はあります。

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<プロフィール>

真山 仁さん
小説家「ハゲタカ」「ロッキード」など
最新著書に「ロスト7」

伊沢 拓司さん
株式会社 QuizKnock CEO
クイズプレーヤーとして活躍中

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