ペットショップから迎えた猫が2週間で急逝…“代替え”を勧められた現実に葛藤 “自分なりの命の助け方”を考え、迎えたのは「お店で売れ残っていた子」

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2025年06月25日 14:30  まいどなニュース

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迎えて2週間後に急逝した桃ちゃん 愛くるしい姿をたくさん見せてくれた

近年は、猫を迎える時は「保護猫」を検討する風潮が浸透してきている。それは意味があり、大切なことだが、一方、ペットショップのショーケースで過ごす犬猫たちと、どんな気持ちで向き合えばいいのか悩むこともあるものだ。

【写真】桃ちゃんの“代替え”として提示された、マンチカンのそらちゃん

飼い主さん(@kawa_ta_ro)は愛猫の桃ちゃんを亡くしてから、複雑な気持ちを抱え続けている。

亡き愛猫と同じ模様を持つブリティッシュショートヘアーを迎えて

飼い主さんの実家には、17歳のニャン生を謳歌したベルちゃんがいた。ベルちゃん亡き後、飼い主さんは悲しみに暮れる日々を送っていたが、1年後、とあるペットショップで、ベルちゃんと背中の模様がそっくりな桃ちゃん(ブリティッシュショートヘアー)と出会う。

ベルの生まれ変わり。そう思え、弟さんと相談し、桃ちゃんを迎えた。

「当時の私は無知で、ペットショップの裏側など知りませんでした」

お迎えから2週間ほど経った頃、桃ちゃんに異変が。元気がなく、横たわっていることが増えたのだ。やがて、体調不良のサインである「瞬膜が出る」という症状が。

動物病院へ行くも、「治らないかも」と告げられ、真摯に対応してもらえなかった。

「おそらく、獣医師は当時では治療が困難だった猫伝染性腹膜炎(FIP)を疑い、できることがないと判断したのかもしれません」

お迎えから2週間で愛猫が逝去

それでもなんとか助けたくて、大きな病院を受診。すると、肺炎を起こしていることが判明し、桃ちゃんは入院することに。

入院前は元気があり、獣医師からも「しっかり治療すれば大丈夫」と言ってもらえ、飼い主さんは安堵した。だが、翌朝、桃ちゃんは逝去。5カ月のニャン生だった。

「私たちは最初の病院で詳しい検査をしてもらえなかった後、すぐに別の手段をとれるほどの知識がなかった。私のせいで桃は亡くなってしまったんだと思いました」

桃ちゃんのお迎え時、ペットショップからは保障期間内に怪我や病気によって死亡した場合には返金や代わりの子を提供する「生命保証制度」や「代替え保証」があることを説明されていた。

代わりなどいない命に対して「返金」や「代替え」という保証制度があることへの疑問や、金銭的な解決法で死を受け入れることへの申し訳なさは募ったが、家族は話し合った末、購入先のペットショップへ。

桃ちゃんが亡くなったことを知ってほしいという強い気持ちもあっての行動だったが、話し合いでは返金より代替えを勧められた。

「その時も、私たちは無知でした。決して命を軽んじていたわけではありませんが、今ほどペットショップにいる子たちの命と真摯に向き合えておらず、結局、代わりの子を迎えました」

保護猫の譲渡を断られて考えた「自分なりの猫助け」

悲痛な体験を機に、飼い主さんは猫に関する知識を積極的に得るようになった。売れ残って処分される子がいる、殺処分というものがある。知らなかった現実は、想像以上に重かった。

動物先進国から学びを得て、悪徳ブリーダーや劣悪なペットショップを生み出さないように法が整備されてほしい。そう願っても、法はなかなか変わらない。

現状のもどかしさを痛感する中で募っていったのは、悲しい思いをしている保護猫を迎えたいという気持ちだった。

2015年、実家を出て同棲生活をスタートさせた飼い主さんは保護猫を迎えようと、複数の動物保護団体に相談する。だが、同棲カップルであることや日中の留守番時間が長いなどの理由から断られてしまった。

それでも猫を救いたくて、飼い主さんは桃ちゃんを迎えたペットショップへ。生後6カ月で売れ残っていたおこわちゃん(スコティッシュフォールド)を迎えた。

自分が「購入」すれば、店は利益を得る。そう分かってはいたが、保護猫を迎えられない自分にできるのは売れ残り、雑な扱いをされている命を1匹でも救うことしかないように思えたのだ。

複数の店舗でたらいまわしにされていた生後6カ月の猫をお迎え

おこわちゃんは、複数の店舗をたらいまわしにされていた。病気や疾患があっても最期まで責任を持って育てようと、強い覚悟を持って迎えた。

おこわちゃんは人見知りせず、抱っこも平気。ただ、年齢のわりに体が小さく、お迎え当日のご飯時には、袋を開けようとしている段階から鳴き喚いて催促。あまりご飯が貰えていなかったのかもしれないと感じた。

「ご飯を食べ、家中を探検した後は隣でくつろいでくれました。たらいまわしにされたから、人やコロコロ変わる環境への順応が早かったのかもしれません」

おこわちゃんは、高いところに飛び乗る時や降りる時など勢いをつけるかのように「ふんっ」と声を出す癖があった。飼い主さんは帰宅時、玄関へ駆けてくる姿に癒されていたそうだ。

その後、飼い主さんは諸事情からおこわちゃんを連れ、実家へ戻った。実家には、「代替え保証」で引き取った先住猫そらちゃんがいたが、おこわちゃんは自分ファーストな生活を貫く。

「そらは自分のテリトリーや、後でゆっくりしたい場所にクイックルワイパーのモフモフ部分を置いて居場所を主張しますが、おこわはお構いなし。その上に座っていました(笑)」

おこわちゃんのお気に入りスポットは、ストーブの前。

初めて知る温かさにとろけ、白目を向き、ひっくり返ったこともあった。

7歳で「閉塞性肥大型心筋症」が発症

スコティッシュフォールドは、軟骨や骨に異常が起きる「骨軟骨異形成症」が発症しやすい猫種だ。自宅ではカーペットを敷くなど、関節に負担がかからないように配慮した。

また、おこわちゃんは折れ耳ではないものの形状的に汚れが溜まりやすかったため、表面はこまめに拭き、動物病院で定期的な耳掃除をしてもらっていた。

「初めて自分の娘として育てたおこわは、私がいないと生きていけない我が子同然の存在でした」

おこわちゃんは7歳の頃に偶然、心雑音が見つかり、それを機に、肥大した心筋が心室内の血流を妨げる「閉塞性肥大型心筋症」が発覚した。

猫の心臓病は、早期発見が難しい。おこわちゃんの場合は3歳の頃から時々、くしゃみのような咳が見られたが、動物病院では、くしゃみと判断されたという。

幸い症状は軽度。服薬し、月1回通院して経過観察することになった。

肥大型心筋症との闘病中に発覚した「慢性腎不全」

だが、その後、おこわちゃんに新たな異変が。後ろ足がふらついて動けなくなり、ヨダレを垂らすという発作が起きるようになったのだ。

この発作は後に、末期の腎不全による尿毒症によるものだと判明したが、この時点では原因不明だった。

ただ、検査の過程で慢性腎不全が発覚。おこわちゃんは、数日置きに点滴治療を受けるようになる。

「肥大型心筋症は水分を入れすぎると、胸水が溜まって危険。一方、慢性腎不全は脱水を防ぐことがメインの治療なので、両立が難しかったです」

次第に状態は悪化。貧血の症状が現れ、腎不全の影響で口腔内には潰瘍ができた。飼い主さんはケアをしつつ、生活環境を見直し。尿の量や回数などを記録できるスマートトイレを導入し、食事は獣医師に相談しながら、様々な療法食を日替わりであげるなど、食欲が湧きやすい工夫をしたそう。

そうしたサポートや食欲増進作用がある発作止めのおかげで、おこわちゃんは食欲が戻り、9歳の誕生日を迎えることができた。

だが、2023年12月下旬、発作が増え、倒れるように。貧血も進み、肉球は真っ白になった。

この段階で、ようやく原因不明の発作は末期の腎不全による尿毒症から起きていると診断されたそう。入院治療という選択もあるが、万が一のことがないと言いきれない。そんな獣医師の言葉を聞き、頭に浮かんだのは病院でひとり息を引き取った桃ちゃんの姿。

同じ思いをさせたくない。そう思った飼い主さんは発作止め薬の打ち方を教えてもらい、おこわちゃんを自宅に連れ帰った。

【ペットロスとの向き合い方】愛猫亡き後も“2つの後悔”に苦しんで…

帰宅後、おこわちゃんは一心不乱にご飯を食べ、たくさん水を飲んだ。生きようとする姿を見て、飼い主さんは少し安堵した。

だが、12月28日の明け方、発作が起きる。手が震えて発作止め薬を溢してしまったため、錠剤タイプの発作止め薬を飲ませたが、2時間後、呼吸が不安定に。飼い主さんはおこわちゃんをそっと抱き、「大丈夫。マミーがそばにいるから。すぐに良くなるよ」と撫で、しばらく寄り添った。

その後、極度の緊張から腹痛が起きたため、おこわちゃんを寝かせてトイレへ。戻ると、おこわちゃんは旅立っていた。

2年経った今でも、飼い主さんは2つの後悔に苦しんでいる。「もっと出来る治療があったのではないか」という後悔と、自分が選んだ闘病期間の過ごし方に対する後悔だ。

「治療に必死で、そばでのんびり過ごすとか、たくさん抱き締めるとか、何気ない日々を送ることが後回しになっていました」

だからこそ、飼い主さんは訴える。もし、愛猫に死期が迫ったら治療以外だけでなく、その子の気持ちを考えながら限りある日々の過ごし方を考えてほしい、と。

なお、飼い主さんはお寺で位牌を作り、供養をしてもらったことを機に、笑顔で愛猫と日々を振り返ることができるようになったという。こだわりのグッズで祭壇をかわいく飾ることも悲しみの癒しに繋がった。

「おこわの死を受け入れている自分を感じ、丁寧に供養しながら思い出と共に生き、おこわに恥じない人生を送っていきたいです」

出会った人間次第で、動物は生きも死にもする。飼い主さんの経験は、そんな現実をまざまざと教えてくれる。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)

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