旅行客で混雑する東京・羽田空港(資料写真、AFP時事) 「7月に日本で大きな災害が起こる」との漫画内の予言が香港を中心に広がっている。香港からの5月の訪日客は前年同月比で1割減るなどしており、専門家は「地震への潜在的な不安が影響しているのでは」と指摘している。
予言が載るのは、たつき諒さんの「私が見た未来 完全版」(飛鳥新社)。自身が見た予知夢が記され、本には「2025年7月5日に、南海トラフ地震の想定をはるかに超える津波が押し寄せる」といった内容が書かれている。
1999年発行の旧版では表紙に「大災害は2011年3月」と記され、東日本大震災を予言した漫画として話題になった。「完全版」は22年に中国語版が発行され、香港のインフルエンサーが取り上げたため内容がSNSで広まった。
香港のグレーターベイエアラインズは5〜10月、仙台・徳島と香港を結ぶ2路線で週1往復分を減便した。香港航空も5、6月中の福岡便を減らした上で、仙台と結ぶ週3便を10月まで運休する。
日本政府観光局(JNTO)によると、5月の香港からの訪日外国人数(推計値)は前年同月比11.2%減の19万3100人にとどまった。観光庁はJNTO香港事務所を通じ、旅行を判断する際は公的機関の科学的な情報を参照するよう訴えている。
香港からの訪日客の意見はさまざまだ。友人と来た30代女性は「滞在中も小さな地震があり、怖かった」と不安を口にした。夫と一緒に来た40代女性は「日本に行くことを友人に心配された。うわさだから問題ないのに」と笑い飛ばした。
影響の広がりに関し、たつきさんは「皆さまが高い関心をお寄せいただいていることは、防災意識が高まっている証拠であり、前向きに捉えております」とコメントしている。
日本大の中森広道教授(災害社会学)は、地震への潜在的な不安が流言の広まりに影響していると指摘。「誰かに話して不安を軽減したいとの思いや、良かれと思い他者と共有することから情報が広まる。SNSが普及した今、誤った情報による混乱がある程度起こり得るという心構えも必要では」と話している。