ゼーヴィント(撮影:下野雄規) ラジオNIKKEI賞は世代限定戦では唯一のハンデ重賞だ。それだけに波乱傾向が強く、ハンデ戦となった06年以降の19回で1番人気は僅か2勝に留まっている。ここでは直近の1番人気V=ゼーヴィントが重賞初制覇を果たした16年の一戦を振り返りたい。
かつては「残念ダービー」と呼ばれたラジオNIKKEI賞だが、この年の1〜2番人気馬にはとりわけしっくりくるワードだった。なぜなら、1番人気のゼーヴィントは前走のプリンシパルSで3着に敗れ、日本ダービーの優先出走権に手が届かず。そして2番人気のブラックスピネルは京都新聞杯で4着に敗れた後、日本ダービーと同週の白百合Sを制し、ここに駒を進めていたからだ。それだけに「このレースを勝ちたい」という思いは、他の陣営よりも強かったはずだ。
レースは前半1000mが59秒6の平均ペースで流れた。勝負所で後続が追い上げて馬群が凝縮し、ハンデ戦らしい雰囲気で直線へ。3角先頭のジョルジュサンクが押し切りを図るが、福島はゴール前に坂がある。ここで浮上したのが好位追走のダイワドレッサー、大外のアーバンキッド、そして1番人気のゼーヴィントだった。中でも出色の脚を見せたのがゼーヴィントだ。ディープインパクト産駒らしい瞬発力で後続を突き放し、2着のダイワドレッサーに1馬身1/4差をつけて、先頭でゴールを駆け抜けた。
この勝利でGI戦線を視界に入れたゼーヴィントだが、秋以降はセントライト記念、福島記念、AJCCと3戦連続で2着に終わる。4歳時の七夕賞で2つ目のタイトルを獲得したものの、結果的にこれが最後の勝利に終わったが、2つの重賞で見せた走りは多くの福島のファンの記憶に残っているだろう。