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建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込んで肺がんを発症したのに、被害者を迅速に救済する「建設石綿給付金」が支給されなかったのは不当だとして、石綿建材の元搬送業者の男性が国に1150万円の賠償を求める訴訟を近く大阪地裁に起こすことが判明した。弁護団によると、建設石綿給付金の不支給を不服とする国賠訴訟は初めて。
建設石綿被害を巡っては最高裁が2021年5月、規制を怠った国の対応を違法とする判決を言い渡した。これを受けて21年6月、石綿被害者が訴訟によらず迅速に賠償金を受け取れるようにする建設石綿給付金法が成立。22年から、建設業務で石綿を原因とする疾病を発症した元建設作業員や遺族らが被害を申請し、厚生労働省の認定審査会が認めれば、最大1300万円の給付金を受け取れることになった。
弁護団によると、男性は1970年から01年までトラック運転手として石綿建材の搬送業務に従事し、20年に肺がんを発症した。
男性は労災保険に入っていなかった。このため労災対象とならない石綿被害者に、医療費や療養手当を支給する国の別制度を利用。国が委託した独立行政法人に医師の診断書や胸部のコンピューター断層撮影(CT)画像を提出した結果、こちらの制度では、22年9月に石綿被害と肺がんの因果関係が認められた。
こうした経緯を踏まえ、男性は審査会に給付金の支給を申請。石綿建材の搬送先リストを詳細に記した男性の陳述書のほか、同僚や、同じ現場で働いていた作業員、業務委託元の石綿建材卸業者の証言を証拠として出した。しかし、審査会は25年1月、不支給とする決定を出した。
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審査会は被害者側に過度な立証責任を負わせないよう「明らかに不合理でないなら柔軟に事実を認定する」との審査方針を定めているが、代理人の伊藤明子弁護士は「十分な立証をしたにもかかわらず、必要以上に厳格な証明を求められた。迅速な賠償という制度趣旨が無視されている」としている。【岩崎歩】
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