ワコムの新型液タブ「Ciniq 16/24」が「Cintiq Pro」キラーな気がしてならない プロ絵師がつぶやいた理由

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2025年06月26日 12:11  ITmedia PC USER

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ワコムの新型液晶ペンタブレット「Cintiq 16」。名称通り16型(2560×1600ピクセル)となっています

 こんにちは! refeiaです。


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 今日はワコムから6月26日に発売された「Cintiq 16」と「Cintiq 24」を見ていきましょう。「Cintiq」といえば、ワコムの液タブの中では「Pro」が付かないスタンダードラインで、実際に利用者も多いポピュラーなシリーズです。


 まずCintiq 16(TDTK168K4C )は、扱いやすい中型サイズと手が届きやすい価格のモデルとなります。


 Cintiq 24(TDTK246K4C)は価格が上がるものの、良い品質の大型液タブを利用したい人のためのモデルです。


 従来モデルの「Cintiq 16」と「Cintiq 22」は2019年に発売され、リーズナブルで実力が確かな液タブが必要な業務の現場だけでなく、入門者や趣味のユーザーにプロ機と同じペンを提供できる液タブとしても大きな役割を果たしてきました。


 しかし低価格志向の製品だったため、“普通っぽい”液晶、空気層ありの画面、樹脂のアンチグレアフィルムと、今となっては進んで手に入れたいと感じづらい仕様が多く、2023年には値上げもされたため、商品力の面でかなり厳しくなっていました。


 今回のCintiq 16と24は、全体的にモダンな仕様やデザインに生まれ変わっただけでなく、Pro Pen 3対応としてもCintiq Pro、Intuos Proに続く最後のピースを埋めるモデルになっています。


 同社の直販価格はCintiq 16が11万6800円、Cintiq 24が20万6800円(タッチ対応モデルは25万800円)です。旧モデルより高くなっていますが、その実力はいかほどか……。早速チェックしていきましょう。(ネタバレですが、16はたぶん当面の鉄板モデルと言えそうです)


●新型Cintiqのスペックをチェック


 まずは両機の主なスペックから見ていきます。


 解像度が2.5K(16が2560×1600ピクセル/24が2560×1440ピクセル)になり、画面は空気層のないアンチグレアガラスになりました。色域は後ほどチェックしますが、仕様上でも改善しています。また、Cintiq 16はアスペクト比が16:10になっており、画面の縦幅が「Cintiq Pro 17」とほぼ同じになりました。縦幅に不足を感じやすい中型機では、とてもうれしいポイントです。


 また、Pro Pen 2や初代Pro Penにも対応します。手元にある中ではPro Pen 2とPro Pen Slimが動作し、下位モデルWacom OneシリーズやGalaxy Tabのペンは動作しませんでした。


 全体的に「これはちょっと……」というような点がなく、現代のディスプレイの仕様として恥ずかしくないものになっています。あえて気になると点を挙げれば、Cintiq 16にタッチ対応の選択肢がないことと、依然としてドット感が目立ちそうなCintiq 24の解像度でしょうか。このあたりは後のパートで使用感をチェックします。


●“イケメン”になったボディーデザイン


 それでは、外観や接続などをチェックしていきましょう。


 外観からのイメージは2モデル共ほぼ同じで、新Cintiq Proから背面ボタンを取り除いたような、ソリッドで格好良いスタイルです。2モデルで大きく異なるのは背面とスタンドで、まずCintiq 16は内蔵スタンドがあり、75mmのVESAマウントもあります。


 一方のCintiq 24は内蔵スタンドがなく、角度可変式のスタンドが装着されています。


 Cintiq 16にも、24と同等のスタンドが別売(Wacom Adjustable Stand)で用意されています。この形式のスタンドは従来機にもありましたが、今作では操作感がしっとりしてガタつきが少なく、調節時に耳障りだったガチャガチャ音も、かなり穏やかになりました。


 Cintiq 24のスタンドは、Cintiq 16の内蔵スタンドよりやや低いぐらいの角度から、かなり高い角度まで調節できます。


 本体の下側はゴム足のような突起と一体になった柔らかめの樹脂パーツが被さっていますが、ゴムよりよく滑ります。机の素材によってはスタンドのゴム足頼みグリップになるので、机の端に設置するときには落下防止などに気を付けるのがよさそうです。


●モダンになった接続仕様と操作性


 背面にはUSB Type-C端子(PCに接続)、miniHDMI出力端子、USB Type-C端子(ACアダプターに接続)が並んでいます。Cintiq 16では、電源供給力のあるデバイスに接続する場合にはケーブル1本で利用可能です。


 本体右側には、USB Type-C端子、ペンホルダーのスロット、OSDボタン、電源ボタンがあります。このUSB Type-C端子はUSBハブとして機能していて、一般的なUSBアクセサリーを利用できます。ペンホルダーのスロットは左側にもあります。


 OSDはイマドキのモバイルディスプレイのように画面をペンで操作でき、タッチ対応モデルでは指でも操作できます。Cintiq Proはボタン操作が必要で使いやすいとは言い難かったので、Proより好ましい仕様です。


 HDMI接続にminiHDMIというモバイルディスプレイで採用例が多いマイナーなケーブルが必要(付属品はUSB Type-Cケーブルのみ)なのは残念ですが、簡易ながらホルダーがあるため安心感が高く、さまざまな設置角度で邪魔になりにくくて好ましいです。


 特に従来の中型機でがっかりしがちだった、立てて設置したときに本体より上にケーブルが飛び出てしまうのが直っています。このあたりも上位機のCintiq Pro 17より進化したポイントです。


●改善したディスプレイ性能


 ディスプレイの性能も簡単にチェックしておきましょう。まず色域についてですが、Cintiq 16はsRGBとDCI-P3に両対応するタイプでした。OSDから呼び出すプリセットも、DCI-P3/Display P3/sRGBから選べます。


 Cintiq 24はsRGBこそ余裕をもってカバーするものの、それ以上はAdobe RGBとDCI-P3の最大公約数的な両取りの仕方で、Cintiq 16よりは狭いです。プリセットもsRGBのみが選べます。


 Cintiq 16は言わずもがなで、24も公式スペックは地味ながら「けっこう広色域」と言えるディスプレイです。ただし、Cintiq 16でAdobe RGBを目標にした製作を行ったり、Cintiq 24でAdobe RGBやP3系を目標に製作したりしたい場合には、プリセットで対応できないのでカラーキャリブレーターを運用するための追加の費用と知識が必要になります。


 旧モデルは暗い部屋で測ればsRGBに概ね対応できているように見えたものの、実際には色が薄いという声が多かったです。本機はパネル自体の改善もさることながら、空気層を取り除いたりガラスの画面処理が最適化された分、色が抜けて見えたりする現象は減っていて、十分に美しい表示です。


 2.5Kの解像度については、Cintiq 16は細かすぎもなく、荒くもない、ちょうどいい具合だと思います。Cintiq 24は正直、特に注意しなくても文字などでドット感は目につきます。顔の近くで使う画面としては「12型で720pのタブレット」と同等なので、そりゃ荒いわけです。


 とはいえ、ペンを使っている間はそれほど気にならず、マンガなどよりもカラーイラストではもっと気にならなくなります。どちらも4K(3840×2160ピクセル)ディスプレイほどの気持ちよさはないですが、作業に支障があるわけでもないと思います。


●Pro Pen 3をチェック


 さて、本機の目玉の1つはPro Pen 3対応です。Pro Pen 3の主な特徴をざっと書くと、


・太軸や細軸、重心位置などの高いカスタマイズ性


・超軽い筆圧から、かなり強い筆圧までの自然な反応と追従のよさ


・芯のアソビの少なさによる精密な描き心地


・先細の軸と、芯の長さによる良好な視界


 などです。必要に応じて過去のレビューを参照してもらうとして、Pro Pen 2を使っていて「これ以上いるんか?」みたいな気持ちだったとしても、使ってみれば確かに向上が感じられるデキだと思います。


 ややトリッキーなのは、モデルによってPro Pen 3の付属品などの提供形式がばらばらなことです。本機の場合は、太軸と重心カスタマイズパーツは付属せず、専用ペンホルダーが付属します。太いペンの方が好みの人は、購入時に入手しておくのがよいでしょう。


 そして、ワコム名物「最初に見落としたら一生気が付かない」かもしれない交換芯の、今回の隠し場所はこちらです。


 標準芯とフェルト芯が1本ずつ入っています。添付する本数はともかく、穴ぐらいは余分に収納できるように開けておいてほしいところです。また、色の割り当てがPro Pen 2と逆なのも注意してください。


●Pro Pen 3の「耐久性問題」


 ところで、不覚にも気づくのが遅くなったのですが、Pro Pen 3はボタンの耐久性に不満を持っているユーザーが少なからずいるようです。使っていると数カ月でボタンの1つがポロっと取れるとかなんとか。


 実際に2023年に入手したPro Pen 3のパーツを見ると、ボタンとフレームの接合(弾力可動部品)が非常にきゃしゃになっており、確かにこれはちぎれるかもなあ……という印象です。


 幸いにというか、不幸にもというか……、自分は今ほど情報が豊かじゃなかった大昔にサイドボタンに消しゴムを割り当ててヘビーに押しまくる習慣があり、何か筆圧が死んでくるけどそういうものだろうと思ってどんどん買い足しながら使っていました。


 そして手元のペンが10本前後になろう頃に、どうやらサイドボタンを使わないことで延命できると気付き、それ以後はあまり頻繁に押す割り当てをしないようになっていました(今から思うと、なぜ保証対応を試さなかったのかが謎です)。


 ともあれ、消しゴムのような超頻繁に使う割り当てができる以上、それで壊れるならば設計か製造上の不備です。そこで本機に付属しているペンのボタンパーツを確認してみると、設計変更があったらしく接合部分が太くなっています。これでどれくらい耐久性が向上するのかは分からないですが、解決を願いたいところです。


 ところで、手元のCintiq Pro 17では余らせておくのがもったいなくてPro Pen Slimも頻繁に使いますが、サイドボタンの押しやすさはPro Pen 3より快適です。ボタンの数が増えたとか、1本で太ペンにも細ペンにもなれるのは良いですが、ちょっともどかしいところですね。


●ペン性能も一応チェック


 さて、話を戻しまして。もう同じペンで何回目、という話なので書くのはザッとにしますが、ペン性能も一通りチェックしてあります。


 ジッターなども問題なし、超軽い筆圧から自然に反応し、かなり強い筆圧まで頭打ちにならず描くことができます。特に画面を薄くなでるようなフェザータッチに自然に反応する様は素晴らしく、快適さや作業効率、制作スタイルの幅が広がる人もいるでしょう。


 筆圧が高めで手が疲れやすい人は、より軽い筆圧で描く練習を初めてみるのもよいかもしれません。


 遅延も速い部類(最近の機種での速い遅いは微々たるものです)で、細かい追従も良いため、素早いストロークから小さな震えのようなニュアンスまで、安心して筆を振るうことができます。


 また、ホバーの検知範囲が比較的高く、タッチ対応モデルでは誤タッチの除外を稼働させながら利用しやすいです。ペンが傾く向きに応じて除外の範囲が決まるようで、右手にペンを持ってホバー範囲から出さないまま画面左側をタッチ操作したり、その逆もできたりします。


●実際にイラストを描いてチェック!


 それでは、いつもの絵で実作業のチェックもしていきましょう。


 まずはCintiq 16から……といっても、今までの様子で自分が常用しているCintiq Pro 17と同じような描き味なのはまあまあ想像できるので、いまひとつ新鮮味がありません。そこで、Cintiq Pro 17と比べて「値段が3分の1の液タブ、値段が3分の1の液タブ……」と念じながら試用することにします。


 まずはラフや線画から。やはりPro Pen 3の描き味はよく、Cintiq Proと遜色ありません。また、先に述べた通り、縦幅が同じなため、数字上は1インチ小さいはずなのに狭く感じないのも好ましいです。解像度に差があるのも「きわめて滑らかでシャープ」vs「必要充分で軽快」 と、同じぐらいうれしいメリットがあり、どちらでもいいと感じます。


 彩色もやはり順調でした。自分はイラスト製作はsRGBの色域がほとんどなので、発色についても問題ありません。


 Cintiq Proは120Hzに対応しており、測ると遅延に差は出るものの、ペン先から線先までの時間に対してすごくインパクトが大きいわけではないです。作業中の実感としてはどちらでもよく感じ、使用感に差が出るのは、Webブラウズやスクロールなどの方が大きく感じます。


 結局、「これに3倍払ったのか……ボクは……?」みたいな思いを振り払うのが大変で、みたいな感想になりました。とはいえCintiq Pro 17も実際に使っての満足感は高く、やめておけばよかったとか手放したいと思っているわけではないです。


 Cintiq 24については、大きくてのびのびと描きやすいのと、同じ画面に資料などを配置する余地があるのが利点に感じました(自分は資料やメモを貼り込んだ別ファイルを読み込んでおいてCtrl+Tabキーで見るか、常時見たいときは別の大きなディスプレイに開きっぱなしにしています)。


 ドット感については、イラスト作業中には注意を向ければざらつきはあるものの、それほど気にならず、先に書いた通り、むしろ一般用途の文字表示などで気になりやすかったです。


 発熱も問題ありませんでした。両機ともファンレスですが、デフォルトの輝度では素手でも暖かく感じることがなかったです。


 気温28度の部屋で最大輝度にして放置すると、全体的には生暖かく、画面の上の方はそれよりも暖かくなりました。ペン利用では上の方を触る時間はそれほど長くないでしょうし、その状態でもタブレット手袋をしていれば苦痛に感じることなく利用できると思います。


●まとめ


 では16型からまとめていきましょう。


 Cintiq 16は、Cintiq Proのような上質なボディーとディスプレイを備え、上位機と同様のPro Pen 3を利用できる液タブです。Cintiq Proシリーズからの主なダウングレードは、タッチ非対応、Adobe RGB非対応、120Hz非対応です。解像度が4Kから2.5Kに下がる点については、画面サイズに対しては十分あり、PCの負担も軽くなり、より現実的になったとも言えます。


 総じて、「現実的なスペックと低価格になったCintiq Pro 17」、または「不満点が減った上に安くなった旧Cintiq Pro 16」といったバランスの良さです。しっかりしたモデルで入門したい人や旧Cintiq 16などからのアップグレードはもちろん、くたびれてきた旧Cintiq Pro 16のリプレースとしても、タッチ対応を重視しないユーザーならばダウングレード感がほとんどなく導入できます。


 また、スタンド内蔵/薄型/狭額縁でコンパクトにまとまっており、ACアダプターなしで運用できるため、家でガッツリ使えるスペックながら運搬も容易です。さらにモビリティーを求める人は、近い価格で13型/超薄型/超軽量になった「Movink 13」を検討してもよいでしょう。


 Cintiq 24は、大型機の魅力と、角度調整できるスタンドが付属している点、タッチ対応モデルの選択肢があるのが利点です。旧Cintiq 22ユーザーなら全面的なアップグレードになりますが、Cintiq Proの代用としてはCintiq 16ほど容易ではありません。大画面のせいで文字などのドットが目立ちやすいので、これを許容できるかが検討のカギになるでしょう。


 Cintiq 24のタッチ対応モデルは液タブうんぬんを抜きにしても、高い表示品質を備えた大型のタッチディスプレイ、という面でなかなか貴重なモデルです。価格が価格なので気軽にとはいかないですが、もしかしたら何らかの要求にぴったり合う人がいるかもしれませんね。


 といったところで。いやー……10万円未満でがっつり行けるCintiqが途絶えたのは残念ではありますが、低コスト志向だった先のCintiqから高品質側に振れる様子を触りながら楽しめました。特にCintiq 16は、相談された時にイージーに勧められるモデルになったと思います。Cintiq Pro 17の予算で3台買えますしね!



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