今回はより眼鏡に近いデザインの「ViXion01S」をレビュー 猛暑で不要の外出を控えなければならない日もある昨今の夏。そんな状況でも余暇を有意義に過ごすために、おうち趣味を充実させている方も多いようです。ただ、自宅で嗜む趣味は手元で細かい作業が求められるため、今度は目の悩みに直面するという声も聞かれます。こうした悩みをテクノロジーの力で解決するデバイスが、ViXion(ヴィクシオン)が開発・販売しているオートフォーカスアイウェア「ViXion01」シリーズです。工作・裁縫・イラスト制作・読書などを趣味にしている人の間でじわじわと支持を広げています。
その他の画像はこちら●海外の展示会でも高評価だったViXionのオートフォーカスアイウェア
本記事ではオートフォーカスアイウェア「ViXion01」シリーズがどのような仕組みで、どのような恩恵をもたらしてくれるのか、実際のレビューを交えながら紹介していきます。
ViXionは2021年設立のスタートアップ企業で、HOYAの暗視支援眼鏡の事業がスピンオフする形で誕生しました。
当初主力製品として展開していたのは、夜盲症や視野狭窄の症状を持っている人に明るく広い視界を提供する「MW10 HiKARI」でしたが、老眼・近視に悩む人に向けたアイテムにも高い需要があると感じ取り、ViXion01の開発がスタートしました。
ViXion01はリリース前から凄まじい反響があり、クラウドファンディングで4億2500万円の支援額を集め、同年の民間クラウドファンディング支援金額においてNo.1を獲得しました。その後、米国・ラスベガスで開催されたCES 2024ではThe Omdia Innovation Awardsを受賞するなど、世界的な評価を得ています。
●カギは瞬時にピント調整するオートフォーカス機能
ViXion01の最大の特徴は、オートフォーカス機能を搭載していることです。これはデバイスをかけたユーザーが見ている対象との距離を即座に判断して瞬時にピントを調整してくれるというもの。近くと遠くを交互に見る場合でも有効で、様々な作業で生じる目の負荷を軽減します。
長時間かけても疲れない約55gという軽量設計もポイントです。しかも最大10時間使用できるバッテリーを搭載しており、使い勝手もすぐれています。nendoの佐藤オオキ氏が手掛けた近未来感のあるデザインも魅力といえます。
●幅広いユーザーが使いやすい「ViXion01S」
ViXion01を受けて新たに開発されたのが、今回メインで紹介する「ViXion01S」です。6月5日に一般販売をスタートしたモデルで、最大の特徴は幅広いユーザーが使いやすい通常の眼鏡に近いデザインを採用していることです。
変更されているのは、デザインだけではありません。約55gだった本体はさらに軽くなり、アウターフレームを外した状態で約33gを実現。またレンズは乱視用や遮光レンズなどの選択肢を用意し、ユーザーごとの目の状態に合わせてカスタマイズできるようになりました。
●実際に使って分かった!ViXion01Sの要チェックポイント
ここからは筆者が実際に使って感じたViXion01Sの印象を使い方と合わせてレポートしていきます。
ViXion01Sには電源ボタンのようなものはありません。顔に装着すると内側のセンサーが反応し、自動で起動する仕様になっています。顔から外して5秒間動かさずにいると、勝手にOFFになるので、通常の眼鏡のように手間なく使用できました。
眼鏡が顔にフィットするか心配という方も多いかと思いますが、ViXion01Sは鼻パッドやつるが柔らかい素材で設計されており、老若男女問わず、ぴったりとした最適なポジションを見つけることができます。重要なフォーカスレンズも幅をスライドして動かせるため、個人差を気にする必要はなさそうです。
ハードウェアの調整が完了したら、続いて行うのはソフトウェアの調整です。本体と専用アプリをペアリングし、キャリブレーションで左右の視力に合わせてレンズのピントを調整します。ピントは本体に備わったインターフェースからも調整できますが、初期状態ではアプリ経由の方が合わせやすく感じました。本体のインターフェースは、使用中に微調整したいときに使うのがよさそうです。
準備はこれで完了です。あとは実際に使うのみ。筆者はライターという仕事柄、手元の資料と少し離れたディスプレーを交互に見ることが多いので、その基本動作でどのような見え方になるのか、試してみました。
「おー!」と思わず声が出るほど驚いたのは、ディスプレーから手元の資料に目を落としたときです。通常はピントを合わせるために多少の時間がかかり、目をこらす必要がありましたが、ViXion01Sをかけていると、目を移した瞬間にピタッとピントが合います。
徐々にピントが合ってくるようなイメージを持っていたのですが、実際は非常にシームレスで、長く使っているとピントを合わせてくれていることすら忘れて、より自然な使い心地になってきます。
アプリではオートフォーカスレンズのステータスをリアルタイムで確認できます。その項目の中にはフォーカス距離が含まれているのですが、目で追う対象物を切り替えるたびに距離が瞬時に変わり、いかにスピーディーにレンズのフォーカスが調整されているのかを実感できます。
●アプリによって広がる使い方に注目
ViXion01Sはアプリを使いこなすことで、さらに利便性を高められるのもポイントです。例えば、オートフォーカスの設定は三つまでプリセットできるので、家族共用で使用することも可能です。この点は、アナログの眼鏡では実現が難しいデジタルならではの魅力といえるでしょう。
また、ViXion01Sはキャリブレーションによって調整した視力を定期的に記録する機能を備えています。視力測定は年1回の定期健診の時だけという方も多いと思いますが、ViXion01Sを使っていれば週間で視力の変化をログに残せるわけです。
オートフォーカスの副次的な機能ともいえますが、視力を定期的に記録するデバイスはあまりないため、こちらの機能も要注目なのではないかと個人的には思います。ログは週間・月間・年間と長期的に残すことも可能です。
最後にViXion01Sは購入後も、伸びしろがあるデバイスである点もお伝えしておきたいです。ファームウェアのアップデートにより、様々な拡張機能を頻度高く配信しており、ユーザーがさらに便利に使えるように進化していきます。
本記事を執筆している現在(2025年6月25日時点)でも、モニター上部の縁に近い部分に視線を向けたときに、背景ではなくモニターにピントを合わせる「EdgeFocus」や、精密作業時の視覚をより安定させる「On-Head Focus Lock」などの拡張機能が配信されています。
ViXion01SはECサイトだけでなく、全国のビックカメラとヨドバシカメラでも販売しています。体験可能な店舗もあるようなので、まずはどのようなデバイスなのか試してみたいという方は、対象店舗をチェックしてみてください。(フリーライター・小倉 笑助)
小倉 笑助
家電・IT専門メディアで10年以上の編集・記者経験を経て、現在はフリーライターとして家電レビューや経営者へのインタビューなどをメインに活動している。最近は金融やサブカルにも執筆領域を拡大中