“悪魔の治療法”と呼ばれた「ロボトミー」を解説! まぶたからアイスピックを挿入、ハンマーを使用して頭蓋骨に穴を開ける恐しすぎる施術とは

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2025年06月26日 22:10  ニコニコニュース

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 今回紹介する動画は、ニコニコ動画に投稿された『“史上最悪のノーベル賞”「これで狂人も正気に戻った」患者の脳に3500回もアイスピックを突き刺した悪魔の治療法と呼ばれた術式…『ウォルター・フリーマン』【ゆっくり解説】』というゆっくりするところさんの動画。

 アメリカの精神科医ウォルター・フリーマンが開発した「ロボトミー手術」について、音声読み上げソフトを使用して解説しています。

■恐ろしい副作用を持つ悪魔の治療法

魔理沙:
 ところで霊夢、ロボトミーという言葉を聞いたことがあるか?

霊夢:
 ロボトミー?ロボット?

魔理沙:
 いや、これはかつて存在した脳外科手術の一種で、主に精神疾患の治療に使われていた治療法で、一定の効果が見られたんだが、その反面で恐ろしい副作用があることから、後に「悪魔の治療法」として恐れられ、語り継がれることになった手術だ。

 今回は、この悪魔の治療法に固執し、多くの批判を受けながらも、生涯で3500回も患者に手術を施したとある精神科医の紹介をしたいんだが、例によって今回も紹介の一部で、ショッキングな表現があるので、そういったものが苦手な人はあらかじめ注意して視聴して欲しいんだぜ。

霊夢:
 う……、なんか怖そうだけど、悪魔の治療法ってのがめちゃくちゃ気になるわね。おっけーおっけーしてみるわ。

魔理沙:
 よし、それじゃ早速本題に入るんだぜ。アメリカ合衆国最大の精神科病院、セントエリザベス病院の研究所長、ウォルター・ジャクソン・フリーマン。彼は1895年、ペンシルバニア州出身の上流階級の両親の元、フィラデルフィアに生まれ、南北戦争の従軍医師として高名だった祖父、医師として成功していた父の影響で医療の道へと進んでいた。

 彼は1912年にエールカレッジに入学し、卒業後は精神医学を学ぶため、ペンシルベニア大学・医学大学院へと進んだ。彼は特に解剖学や神経学に傾倒しており、また精神医学についても精力的に学び、その後ワシントンに移住し、セントエリザベス病院の精神病院に研究室を構えるようになる。

霊夢:
 めちゃくちゃエリートコースを登ってきた人って感じね。

魔理沙:
 そこで研究所長として働く中、多くの精神疾患患者を目の当たりにし、さらに研究意欲を高め、31歳で精神医学の博士号を取得し、研究に没頭した。彼は、「ヒトは何故、精神病にかかってしまうのか。その原因は何なのか。患者たちを根本的に救うにはどうすればいいのか?」を考え続けていたという。

 1920年代当時の精神医学というのは、フロイトが行った精神分析学が隆盛を極めており、精神患者に対しての治療は、催眠や夢の分析によって行われていたんだが、フリーマンはもっと根本的な解決方法があるのではないかと考えていたんだな。

 そんな研究を続けるフリーマンだったが、あるとき彼の運命を左右する発表が、ロンドンの国際神経学会で行われた。1935年、エールカレッジの研究チームが「チンパンジーの前頭葉の一部を切断したところ、凶暴性がなくなった」と発表したんだ。

 この発表を聞いていたポルトガルの精神科医アントニオ・エガス・モニスは、「その実験をヒトに応用すれば、精神病患者を救えるのではないか?」と発言した。このモニスという精神科医は、ポルトガルで外務大臣を務め、脳の血管をエックス線で撮影する「脳血管造影法」の研究でノーベル賞候補になった神経科医の男性で、業界内ではかなりの有名人だった。

 モニスは早速、自分も精神疾患を抱える患者20名ほどを集め、実験でチンパンジーに行ったのと同じように、患者の脳の前頭葉と、大脳辺縁系の連絡回路、神経線維の集合「白質」という部分を切除する手術を行った。見方によっては人体実験ともとれるこの手術は、意外な成果を収めた。この手術は「ロイコトミー」と名付けられ、約7割の患者の症状が改善したと学会で論文を発表した。

 モニスのこの論文は、フリーマンの知るところとなり、彼は凄まじい衝撃を受けたそうだ。フリーマンは、どうしてもロイコトミーを自分の手で試したかった。しかし、彼は精神科医で、一人では脳外科手術を行うことができない。

 そこで彼は知人の神経外科医・ワッツの協力を得て、死体を使って手術の練習をした。この時、フリーマンはロイコトミーを開発したモニス博士を師と仰ぎ、研究によりこの手術を別の術式へと発展させた。それが「ロボトミー手術」だった。

 ロイコトミーが前頭葉の一部を切除する術式である一方、フリーマンの発展させたロボトミーは、前頭葉の切除ではなく、前頭葉と師匠の間の神経線維を切断するという方法だった。名前はラテン語の「頭葉(ロボ)」と「切る(トミー)」から「ロボトミー」と命名した。

 そして1936年9月、ジョージ・ワシントン大学病院で、最初の前頭葉白質切截術をワッツと共に実施した。患者は63歳のアリス・ハマットという女性で、今でいう重度のうつ病を患っていた。彼女には家具を破壊したり、他人に危害を加えようと暴れる暴力的な症状があり、配偶者にこのロボトミー手術を提案したところ、「是非その手術をけさせてほしい」という強い希望を伝えられ、ロボトミー手術を実施することになった。

霊夢:
 ところでそれってどんな感じで手術するわけ?

魔理沙:
 患者に麻酔を施すと、頭蓋骨の側頭部にドリルで穴が開けられ、そこから長いメスが差し込まれた。そして前頭葉の白質の神経線維の一部を切断し、手術が終了。

霊夢:
 あ、あ、あ、あ、頭にドリル……。

魔理沙:
 これはアメリカ国内で初めてのロボトミー手術だったが無事に成功し、アリスの凶暴性は失われ、うつ病の症状はすっかりなくなり、すぐに退院することができたという。この手術が成功したことで、フリーマンは長年の夢である精神疾患患者に根本的な治療を施すことに成功した。

 この成果は医学界に広まり、彼の名はたちまち話題になった。フリーマンの元には精神疾患に苦しむ多くの患者やその家族が押し寄せたという。第一次世界対戦後になると、その影響でうつ病やPTSDによる精神疾患患者が爆発的に増え、その数は50万人を超えた。

 フリーマンはこの大量の精神患者たちを救うために、より効率的な手術の方法はないかと試案した。そうして開発されたのが、新たなロボトミー手術「経眼窩ロボトミー」だった。

これは短時間でロボトミー手術とほぼ同じ効果が得られるという、言ってみれば簡易的なロボトミー手術のことで、方法としては麻酔の代わりに電気ショックを使い、患者を昏睡状態にし、アイスピックを上まぶたの上に突き刺し、軽くハンマーで叩いて眼窩の薄い骨を砕き、脳へと到達させるというものだった。

霊夢:
 イヤアアアアアアアアアア!!!

魔理沙:
 両目の周りにあざができるものの、成功すれば暴れて手のつけようがなかったような患者がすぐに大人しくなるなど、その効果は激的なものだったという。これは別名「アイスピックロボトミー」とも呼ばれ、手術時間がたったの20分ほどで済むことから、爆発的に普及することになる。

 相棒としてロボトミー手術を研究していたワッツだったが、このアイスピックロボトミーに関しては「あまりにリスクが高い。危険性をもっと考慮すべきだ」と手術に反対し、フリーマンの元から去っていった。フリーマンはワッツの静止を押し切り、「私はロボトミーをやめるつもりはない」と、この簡易的ロボトミーをさらに普及させるために、全米中を飛び回った。

 そして、1949年。フリーマンが師と仰いでやまないモニス博士がノーベル生理学・医学賞を受賞。このノーベル賞受賞をきっかけに、医学会でもロボトミー手術が認められ、それはアメリカにとどまらず世界中で爆発的に普及することになった。

 しかしその一方で、手術を受けた患者たちに徐々に異変が出始めていた。治療を受けた患者たちのいずれも、重篤な精神疾患によって凶暴化していたが、ロボトミーによってまるで人格が入れ替わったかのように大人しくなっていた。うつろな目で何に対しても興味を示さない、廃人同然になってしまった者が多く出ていた。

霊夢:
 それって、脳みその中をいじったから、感情を司る部分まで壊れちゃったとか……?

魔理沙:
 ああ。フリーマンは「狂人が正気に戻った」と治療の成功を強調して回っていたが、「脳を切ったことで取り返しのつかないことになった」と後悔する患者やその家族たちが現れ始めたんだ。

 さらなる打撃となったのは、画期的な新薬が登場してしまったことだった。1954年になると、アメリカで新しく認可された高精神病薬「クロルプロマジン」が広まったんだ。この薬は統合失調症などに対し、ロボトミー以上の効果があるとうたわれていた新薬で、当時ロボトミー手術の副作用を問題視していた多くの医師たちは、この新薬を採用し、精神疾患の治療に急速に外科的手術から薬物治療へと移行していくことになる。

 しかし、フリーマンはこの流れに断固として反発し、ロボトミー以外は根本的な解決にならないとして、新たなニーズの掘り起こしを図った。それはロボトミー手術の効果に対する拡大解釈で、これまでロボトミーは症状が重い、暴れ出しているような患者にのみ、最後の手段として実施していたんだが、フリーマンはこの逆境に立ったことで「ロボトミーは初期段階の精神病にも効果がある」と喧伝し始めたんだ。

霊夢:
 初期段階って……。それこそ別の治療法でなんとかなるんじゃないのそれ……。

魔理沙:
 その結果、彼は世間の反対を押し切り、小さな子供や暴力的な振る舞いをするという12歳ほどの少年にロボトミー手術を施すようになった。しかし、やはりロボトミーの副作用である人格破壊は再び起こってしまい、この子供たちは何をするにも意欲がなくなってしまった。

 フリーマンがロボトミーの効果を拡大解釈したことで、まだ正式に精神病だと診断されていない、ただの思春期・反抗機を迎えた子供が手術を受け、廃人のようになってしまうようなケースがいくつもあったんだ。またこの手術は精神疾患の治療だけではなく、一部の州では、犯罪者や同性愛者に施されたこともあったという。

霊夢:
 今の倫理感じゃ絶対にありえないことね、それ。

魔理沙:
 ああ。しかしこれはフリーマンでさえ把握していなかったことだったそうだけどな。だが当時でさえも人権問題やその副作用から、ロボトミー手術は危険視され、多くの病院で禁止されることになっていく。

 最後まで手術を許可していたカリフォルニア州のヘリック記念病院でも、1967年ロボトミー手術を受けた患者が死亡した事故を受け、許可を取り消し、全米からロボトミー手術は消えてなくなった。

 そして1968年、フリーマンは再び全米を巡り、自分がロボトミーを行った患者たちの元を訪れる旅に出た。

霊夢:
 それって患者たちに謝りに行ったのかしら?

魔理沙:
 いや、むしろその逆かもしれない。彼はこれまで合計3500回以上に渡るロボトミー手術を行い、この旅でその患者たちに会い、その成果を改めて世間に訴えようとしていたんだ。

 彼はこの旅で合計600名の患者の消息を確認した。そのうちの1/3以上にあたる230名はすでに退院しており、142名は入院中、そして残りの235名はすでに亡くなっていることを知った。

 彼はそれでもこの調査結果を論文にまとめ、ロボトミー手術によって助かった患者がいること、その有効性を訴えようとしたが、それは叶うことなく、この4年後、76歳でこの世を去った。

霊夢:
 最後までロボトミーを信じてたんだ。

魔理沙:
 彼が研究を始めた当初は「精神病患者を救いたい」という気持ちから熱心に研究を続けていたのかもしれないが、患者の脳にアイスピックを突き刺すという危険な治療法に固執しすぎたせいで、多くの廃人を作り出してしまい、その危険性を認めることができなかったんだな。

 ちなみにこのロボトミー手術は日本を含め、世界中の様々な国で実施されていたが、非人道性やその高いリスクから強く批判され、現在では禁止されており、実施されていない。またフリーマンが師と仰いでいたモニスが受けたノーベル賞は後に、「史上最悪のノーベル賞」と称され、ロボトミー手術の被害者団体は、彼の受賞を抹消するように、繰り返し働きかけを行っているという。

 施術内容がなんとも恐ろしい上に、副作用により廃人になってしまうという、危険すぎる手術であるロボトミー。「悪魔の治療法」と呼ばれるのも納得ですね。フル解説をご覧になりたい方は、ぜひ動画をご視聴ください!

▼動画はこちらから視聴できます▼

『“史上最悪のノーベル賞”「これで狂人も正気に戻った」患者の脳に3500回もアイスピックを突き刺した悪魔の治療法と呼ばれた術式…『ウォルター・フリーマン』【ゆっくり解説】』
https://www.nicovideo.jp/watch/sm44137563

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  • エガス・モニスだが、自分の患者に襲撃されて半身不随になっているんだよな。あと日本でも施術された患者が医者の家族を殺したという事件がある…
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