常にダルそうにしていて、何を考えているのかイマイチつかみどころのない“ダウナー”系のキャラは魅力的だ。Xに5月上旬に投稿された『ダウナー系男女』は、タイトルが示す通り、ダウナー系の2人の男女のゆるい日常を切り取った内容となっており、思わずニヤニヤしてしまうような会話劇が繰り広げられている。
ダウナー系フェチにはたまらず、興味のない人ですらその沼に引きずり込んでしまう本作の作者・ウエマツ七司さん(@uemt_74)に、2人の会話を描くうえで意識したことなどを聞いた。(望月悠木)
■「君はバカだな」と言われたい
――なぜ『ダウナー系男女』を制作したのですか?
|
|
ウエマツ:商業のネームが手詰まりになったときに、「巷で流行りのダウナー系お姉さんというジャンル、描いたことがないな?」と思い、試しに描き始めたのがきっかけです。「ダウナー系お姉さんに『君はバカだな』と言われたい」という動機で始め、「じゃあ『バカだな』と言われるキャラが必要だな」と、土岐というキャラを詰めていった感じです。
――だから2人の会話劇がメインの内容だったのですね。
ウエマツ:ラブコメというよりはラブストーリーっぽいイメージで描いていますが、漫画を描く前に映画『ラブ・アクチュアリー』を観たので、その空気が滲み出たのかもしれません。普段は恋愛要素がおまけ程度の作品ばかり観ているので、現代の男女の恋愛模様だけで物語が進むラブストーリーには「すごいな」と思いました。
――「バカだな」と言われるために生まれた男・土岐を作るうえで意識したことは?
ウエマツ:土岐は、ネットによくいる「全部わかった気でいる冷笑系」を意識しています。僕は冷笑文化が大嫌いなので、そういう嫌な部分を詰め込んだキャラにしました。ビジュアルや基本設定は映画『ヴェノム』のエディ・ブロックを丸パクリしています。すみません。
|
|
――水瀬については?
ウエマツ:自分が思う“ダウナー系お姉さん”を描いたつもりです。当初、髪もボサボサで社会不適合者っぽい雰囲気にしようと思っていましたが、「見た目が完璧なほうが逆に怪しく見えるだろう」「短髪でもあり長髪でもある、どっちつかず感が欲しい」と考え、今のデザインと髪型になりました。あとであの髪型が「クラゲヘア」という名前だと知って「へぇ〜!」となりました。
――2人のダウナー感を出すために、キャラデザや表情など作画で意識したことは?
ウエマツ:「なんとなく目が大事なのかな」と思い、「瞼を厚めに取ると独特の色気が出て良いな」と考えています。キャラ別で言えば、土岐の目は「笑っていないけど口元だけ笑っている」感じで、水瀬は口を大きく開けすぎないようにしています。
■セリフ選びの難しさ
|
|
――水瀬はセリフを発するたびにミステリアスさが増していきました。水瀬の言動を描くうえで意識したことは?
ウエマツ:水瀬を描き始めた瞬間、「ミステリアスで謎めいていることこそがダウナー系お姉さんの真髄なので、あまり明確に描きすぎるとダウナー系ではなくなるのでは?」と気づき、一旦深掘りは諦めて、早々に土岐のキャラを詰めていきました。
――一度、水瀬から離れてみたのですね。
ウエマツ:はい。ただ、「水瀬に嘘はつかせない」とは決めていました。セリフはすべて本心で言っていて、だからこそ裏をかく仕事をしている土岐には、よりミステリアスで不思議ちゃんのように映るように意識しています。
――セリフ選びもかなり大変そうな印象ですが…。
ウエマツ:そうですね。水瀬のセリフは本当に苦労しました。本音なのに、顔のせいで裏がありそうにも見える。一言で刺さる必要があり、土岐が気になるようなセリフにしなければならないので…。
――水瀬が土岐のことを「君」と呼ぶのが個人的に好きでした。
ウエマツ:「君」呼び、良いですよね。なんとなく二人称の中でも気品があって中性的な感じがするので大好きです。現実ではあまり使わないからこそ、ミステリアスさが際立つし、少し“お姉さん味”が感じられると思います。
■メタ的なツッコミは炎上対策
――「職業柄」「クソ持論」など作者目線のナレーションも面白かったです。メタ的な視点を入れるうえで注意したことは?
ウエマツ:土岐は自分の嫌いな性格を詰め込んだキャラなので、読者を怒らせるような発言をしてしまうリスクがあります。痛い目を見るところまで描きたいのですがなかなか難しい。なので炎上対策としてメタ的ツッコミを入れています。
――2人の日常を切り取ったシーンやツーショットなど、「ストーリーが展開される」というよりは、日常をいろいろな形で表現されていました。
ウエマツ:構成は特に決めていません。続くかどうかも自分でもわからないので…。とにかくキャラを読者に理解してもらいやすいように、X漫画っぽさを意識して描きました。なにより「描きたいシーンだけ描く漫画を描きたかったんだな」と思います。
――今後はどのように漫画制作を展開していく予定ですか?
ウエマツ:先のことはまったく決まっていません。ただ、連載を続ける中で「少年漫画よりも、もう少し大人向けの方向性が好きかも」と感じています。青年向け、できれば女性向けジャンルのラブコメを描いてみたいですね。筋肉のある男性を描いても許してくれる場所を探しています。とりあえず、連載中の『魔託のヴァルムト』(小学館)も終幕を迎えますので、お求めやすい全5巻をぜひ一気読みしてみてください。
(文・取材=望月悠木)
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 realsound.jp 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。
「ときメモ」告白の不具合を修正(写真:ITmedia NEWS)153
「ときメモ」告白の不具合を修正(写真:ITmedia NEWS)153