女子ツアー2025シーズン
前半戦で脚光を浴びた選手たち(1)
2025シーズンも熾烈な戦いが繰り広げられる日本女子プロゴルフツアー。数多くのトッププレーヤーがアメリカへ戦いの場を移しても、多彩なタレントが控えているうえ、才能を秘めた新星が次々に登場し、変わらぬ盛り上がりを見せている。その前半戦、とりわけ際立った活躍を見せた選手たちをピックアップ。JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)の永久シード保持者である森口祐子プロに、それぞれの選手のよさについて話を聞いた――。
神谷そら(かみや・そら)
2003年4月18日生まれ。岐阜県出身。身長167cm。血液型AB。
今季ツアー1勝。メルセデス・ランキング2位(6月26日時点。以下同)。
今季、神谷そらさんが優勝したSky RKBレディスクラシックは、2日目を終えてトップに並んだ金澤志奈さん、小祝さくらさんとの、3人の争いでした。
神谷さんは最終日、まずまずのスタートを切りながら、9番でダブルボギー、11番でボギー。単独首位に立った金澤さんに、一時4打差をつけられていましたが、15番からの3連続バーディーで追い上げて、小祝さんに並んで、金澤さんにも1打差まで迫ります。
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迎えた最終18番ホール(パー5)。神谷さんはティーショットを少し曲げてしまいます。2打目は残り207ヤード。つま先下がりの難しいライでした。
厳しい状況でしたが、神谷さんはそこから4番ユーティリティで打って、2オンに成功。カップまでおよそ6mにつけて、そのイーグルパットを見事に決めました。金澤さんと小祝さんを抜き去り、圧巻の大逆転劇で2年ぶりの優勝を果たしました。
勝負を決めた最終ホールの、あの2打目は、難しいライにあっても神谷さんはしっかり振り切っていました。彼女の気持ちが乗ったすごいスイングだったと思います。
神谷さんは今年、スイングがよくなりましたよね。未勝利に終わった昨年は、トップで頭がちょっと左に下がって、左肩のポジションも少しグラグラしているときがありました。
それが今年は、持ち球をフェードに変えたそうですが、その影響もあるのか、体の余分な動きが少なくなりました。スイングの軌道が安定して、とてもよくなっていると思います。
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あと、優勝した試合ではパッティングの好調さが際立っていました。金澤さんと小祝さんもいいゴルフをしていましたけど、先に打つ神谷さんが5m前後の距離のパットをガンガン入れてくるので、それに圧されてか、小祝さんは2〜3mくらいのパットを何度か外していましたよね。
神谷さんは、その週に2、3回試し打ちして、即決で換えたパターがハマったのだとか。その後も、パッティングは好調な状態が続いています。
彼女の直感みたいなものが当たったんですね。今後も楽しみです。
菅 楓華(すが・ふうか)
2005年5月17日生まれ。宮崎県出身。身長168cm。血液型O。
今季ツアー0勝。メルセデス・ランキング8位。
菅楓華さんは、2023年のプロテストに合格。翌2024年のルーキーシーズンでは、レギュラーツアー22試合に出場して4回のトップ10入りを果たしました。
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特に9月の住友生命Vitalityレディス 東海クラシックでは、初日に単独首位発進。2日目を終えても、首位と2打差の単独2位で最終日を迎えました。最終的に勝つことはできませんでしたが(8位タイ)、「新人ながら勝つんじゃないかな」というムードは持っていたと思います。
そして今季は、QTランキング20位の資格でレギュラーツアーに参戦。開幕戦のダイキンオーキッドレディスでは単独首位で最終日を迎えました。結果は2位タイでフィニッシュ。翌週のVポイント×SMBC レディスでも単独2位という成績でした。
ダイキンオーキッドレディスで優勝したのは岩井千怜さん、Vポイント×SMBC レディスを勝ったのは吉田優利さん。ふたりとも、現在はアメリカの女子ツアーで戦っている選手ですからね。菅さん自身、すでに優勝する力を持っていることを証明した開幕2戦の結果だったと思います。
実は、この菅さんの春先の調子のよさを言い当てていた人がいました。小田美岐さんです。JLPGAの理事を務める小田さんは、練習日や試合の1番ホールで選手のスタートを見ることが多いのですが、シーズン開幕直後に話をする機会があった時、彼女が「私は今年、菅楓華が来る気がする」と言っていたんですよ。さすが、その予測は見事に当たっていました。
菅さんを見ていると、今の日本の女子ツアーの人気を象徴している選手のように思います。体格的に恵まれていて、スイングがシンプル。ドライバーからパターまで、すべてにおいてそつがないオールラウンドプレーヤーですからね。プレーぶりも好感が持てますし、秘めているポテンシャルも相当なものだと思います。
ここに来て春先の勢いはなくなってきていますが、それは、好ダッシュを切ったものの、結果的に優勝には届かなかった影響もあるでしょうし、ちょうど疲れが出始めるところ、というのもあるでしょう。
そんななか、他のプレーヤーの初優勝などを見て、自分を見失わないこと。そのあたりは、気をつけてほしいなと思っています。
(つづく)◆前半戦で話題となった安田祐香、藤田さいきの「すごさ」とは>>