年次総会に合わせて記者会見するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁(右)=26日、北京 【北京時事】中国が主導する「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」は26日までの3日間、本部がある北京で年次総会を開いた。発足10年となる来年1月に金立群初代総裁が退任し、後任に金氏同様に中国財政省次官だった鄒加怡氏が就く人事を発表。中国主導を改めて印象付けた。
「中国政府の支援に感謝申し上げる」。金氏は26日の演説でこう述べた。AIIBが中国の習近平国家主席の提唱で設立された経緯もあり、習氏の功績に言及する場面もあった。
AIIBの公表資料によると、中国の議決権は最大の26.5%で、増資などの重要案件を単独で否決できる権限を持つ。1カ国当たりの議決権が最大12.7%にとどまるアジア開発銀行(ADB)とは対照的だ。
金氏は演説で、加盟国・地域数が110と、発足時のほぼ2倍に増えたと「国際化」をアピール。意思決定では「コンセンサスを重視している」と、中国の影響力の矮小(わいしょう)化を図った。融資件数が最も多いのは、中国と領土問題を抱えるインドで、AIIB関係者は「融資先は経済性に基づき専門家が判断している。AIIBが中国の『道具』という主張は誤りだ」と訴える。
しかし、2023年にはAIIBのカナダ人幹部が「(組織は)中国共産党員に支配されている」と批判し、北京を離れる騒動が起きた。別のAIIB関係者によると、中国政府が自国主導とのイメージを打ち消す意図から、「中国色が強い事業については、むしろあまり融資されない」という。
ADBに加盟する台湾は、親中派の国民党・馬英九政権時代にAIIBへの加盟を模索したが、事実上認められなかった。台湾と外交関係を結んでいる国がAIIBに加盟したケースもない。
日本政府関係者はAIIBについて、「着実に国際開発金融機関として成長している。ただ、中国政府の強い統制に変化はない」と語った。