元セクシー女優で現在はフリーライターの「たかなし亜妖」 元セクシー女優でフリーライターの「たかなし亜妖」が、自身の経験や周囲の業界人から聞いた話をもとにお届けする連載コラム。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。女優生活2年半で引退を決意し、ライターへ転向。現在はメディア出演も積極的に行っている。
◆セクシー女優が陥りやすい“職業病”とは
承認欲求とは「認められたい」「注目を浴びたい」という欲のこと。他人から称賛され、存在を認められることで新たな生きがいを見出す人も多い。承認欲求とは、おそらく誰にでも備わる心理なのだろう。
人気商売では自分自身が商品となるので、承認欲求を原動力にすると良い結果を得やすい。しかし暴走すると取り返しがつかなくなる可能性もある。セクシー女優の中にも「もっとちやほやしてよ!」なんて感情が抑えきれず1人で突っ走ってしまい、結果的に仕事がなくなってしまう例も実際にあるほど。
承認欲求の強まりは、一種の職業病。セクシー女優に限った話ではないが、人前に出る仕事を続けると、多くの人がこの職業病に陥ってしまう。
◆「承認欲求」はなぜ育ってしまうのか
なぜ、人気商売と承認欲求は密接な関係にあるのか?
それは人前に出ることで、ちやほやされる機会が増え、その結果として欲求が育ちやすくなるということだ。元から承認欲求や自己啓示欲が強い人ほど、人気商売を選ぶ傾向がある点は否定できない。
ただ毎日のように称賛を浴びれば、次第に自信がついてくる。他者からの言葉をストレートに受け取り続けると徐々に謙虚さを忘れ、「自分はすごいのだ」と勘違いし始めると見事に“承認欲求モンスター”が誕生してしまう。
そもそも人気商売は褒められるハードルが低い。例えばセクシー業界だと性格の良い人、礼儀正しい人などは、常に「良い子だね、すごいね」と褒められ続ける。すると、まるで全てを認められたかのような気分になってしまうのだ。おまけに結果も残せているならば、他者から否定されることが極めて少なくなり、初々しい気持ちを忘れていく。
一概に全員がモンスター化するとは言えないが、行き過ぎた欲が育ちやすい環境なのは事実。加えて目立ちたがり屋な性格だったり、自分が一番でないと気が済まないタイプだと「扱いづらいキャラ街道まっしぐら」なので、暴走待ったなしのオチが待ち受けるだろう。
◆「私を見て!」がもたらす悩ましい状況
ほめ言葉をもらうために自撮りをアップしまくるなんて、かなり可愛い方だと筆者は思ってしまう。「かわいいね」や「いいね」と言われるだけで満足するくらいなら、正直“序の口レベル”だ。
本気の承認欲求モンスターは、あの手この手をつかって周りの視線を集め、おまけにマウントまで取る回りくどい手法を取るため、傍から見ているとあまり笑えない。
よくいるのは、有名芸能人やインフルエンサーなどと繋がったセクシー女優が“匂わせ”を始めること。蓋を開けてみたら恋人ではなく、体だけの関係だった……など、自慢できるような状態ではないのにも関わらず、彼女たちは注目を浴びるため事実を盛りに盛りまくる。
嘘をついてでも「すごい」と大多数に言わせたい気持ちが隠し切れないと、自然と投稿から「ふふん」という表情さえも漏れ出るので本当に恐ろしい。
◆裏アカウントを教えまくる女優も…
また、“裏アカ”と言いつつあっちこっちにアカウントを教えまくる女優も、ある意味承認欲求が強いといえる。裏アカを仕事仲間に明かすのは自滅行為でしかないのに、自ら大ヒントを与えるなんて「秘密を覗いてほしい」という感情がなければ絶対にやらないからだ。
また、裏アカをバラまきまくると高確率で身内に暴露されてしまうため、人気商売の仕事をする人なら「秘密はなるべく言わない」など基本中の基本。どうやら承認欲求が強まると己を優先しすぎて、冷静さを欠くらしい。
結局痛手を負っては自分が不利なだけなので、当初の謙虚さと、常に一歩踏み止まるくらいの慎重さは、どの業界で働くにしろ必要な力なのだろう。
◆演者は「どう見られるか」をよく考えるべき
承認欲求が全くないのも困るが、ありすぎても支障をきたす。内側のコントロールは非常に難しく、職業病といっても過言ではないレベルの“クセ”になるため、引退まで欲が抑えきれない危険な状態を招きやすい。
「演者なのだから承認欲求が強くて当たり前」ではあるものの、業界人以外の人が見て不快感を抱くレベルに到達する人は、大抵不祥事を起こしがち。
度が過ぎる前に「どう見られるか」を深く考えなければ、仕事を失ってしまう可能性が上がってしまうため、演者は常に危険な橋を歩く現実を頭に入れておくべきなのである。
文/たかなし亜妖
―[元セクシー女優のよもやま話]―
【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。