【漫画】少女はタクシー運転手、乗り物は竜? オリエンタルな雰囲気漂う異種族友情譚『竜のタクシー』

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2025年06月29日 07:00  リアルサウンド

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『竜のタクシー』(黒丸恭介)

 人間と人ならざるものの友情を描いた作品は、人間同士ではないからこそ、その友情の深さを感じられることがある。Xに5月下旬に投稿された『竜のタクシー』は、人間と竜がすれ違いながらも仲を深めていく様子に胸を温かくさせてくれる作品だ。


参考:【漫画】『竜のタクシー』を読む


 山岳地帯で暮らす女の子・リュシー。竜馬(うま)に人を乗せる“竜馬乗り”で生計を立てていた両親の影響もあり、自身も“竜馬乗り”として相棒の竜馬・オリヴィエール、通称“オリヴ”とともに働きに出るようになった。しかし、自動車やマイクロバスなど、交通手段が発展した影響で、わざわざ竜馬を利用する人は少なく頭を抱えていると――。


 オリヴの可愛さや、リュシーたちが暮らす集落の穏やかさなど、ストーリーだけではなく作画でも魅せる本作を手がけた黒丸恭介さん(@BlackKyou)に、誕生秘話などいろいろ話を聞いた。(望月悠木)


■ベースは中学時代に作った世界観


――今回『竜のタクシー』を制作した背景は?


黒丸:私はもともと、4コマ漫画誌への持ち込みから始めて、そのまま4コマ漫画で商業漫画家デビューしたのですが、途中からストーリー漫画の持ち込みをするようになっていきました。本作はストーリー漫画の持ち込み用の読み切りとして描いた作品です。


――持ち込みの結果はどうだったのですか?


黒丸:本作とは設定は同じものの少し異なる内容の原稿で、漫画賞に2回応募したのですが、箸にも棒にもかからずでした。1社目は「雑誌の読者層が合わない」という理由で、2社目は「物語構成がなっていない」という理由で、はねられています。


――やはり賞を取るのは簡単ではないのですね。


黒丸:ただ、捨てる神あれば拾う神ありと言いますが、最終的に3社目でついた担当編集さんが読切漫画として通してくれました。ちなみに、掲載から数年経過したため、その出版社に問い合わせて同人誌などでの使用許諾を得ています。気に入っている作品だったので、快く許諾してくれてありがたかったです。


――“竜馬という生き物がタクシーをしている”という本作の根幹はどのように思い付いたのですか?


黒丸:実は中学生の時に描いていた漫画やキャラクターの中の1人をリメイクしたものです。小さい時は恐竜やドラゴンが好きで、“キャラクター1人1人にドラゴンのパートナーがいる”みたいな設定の世界観を遊びで作っていました。


――そういう世界観はワクワクしますよね。


黒丸:はい。また、大人になって、持ち込み用にいくつかネタをぼんやり考え始めた時、たまたまプレイしていたゲームが大きい生物と少年がパートナーになって冒険していく内容 だったんです。他にも、優れた馬を実際に日本語で“竜馬”と呼ぶので、そういった言葉遊びもあったりと、いろいろな要素が絡み合って本作の世界ができあがりました。


——「リュシーとオリヴのすれ違い」「交通インフラの崩壊」など、ストーリー構成はどう決めましたか?


黒丸:相棒ものではお約束ですが、「最初は反発しあうキャラクターが良いのではないかな」と思い、「オリヴィエールはリュシーのいうことを聞かない!」という導入から、「仕事の危機を通じて少し仲が深まる終わりにしよう」と決めました。あとは「勢いで描き始めて最後まで描き切った」という形です。


■舞台はアジア成分多め?


――リュシーというキャラはどのように作り上げましたか?


黒丸:私が中学生の時に描いていた女の子キャラをベースに、リメイクしたものです。髪型や顔、年齢などのビジュアルは、実はその時からほぼ変わっていません。ただ、世界観を詰める過程で、それに合わせて生い立ちや名前などが変わり、服に関しても民族衣装を取り入れたかったのでそこも大きく変わりました。


——一方、オリヴィエールは?


黒丸:竜と馬と言いつつ“猫”がモデルになっています。我が家では猫を飼っているので、その影響が大きいです。


——和やかな空気が流れる集落や、露店などでにぎわっているアパスの街など、舞台の雰囲気も素敵でした。


黒丸:都会の人がちょうど長期休みに癒されに来るような、そんな街並みを目指しました。舞台のベースはアジアの成分が多めなのですが、アパスに関しては観光地的な側面もある街なので、少し洋風の文化が混ざっているような見え方になるよう意識しました。


――今後はどういった創作活動をしていく予定ですか?


黒丸:現在コミカライズの仕事の割合が高いのですが、もともとはオリジナル漫画を描きたくて漫画業界に足を踏み入れました。「もっとオリジナルの作品も増やしていきたい」という思いで、いろいろと水面下でチャレンジしています。また、中性的な漫画表現、ハイファンタジー、女性主人公がいる作品が好きなので、「そういった作品も商業漫画での発表を増やしていけないか」と画策中です。


 ただ、最近は「商業漫画として上手くいかなくても趣味で発表すればいいや」という気持ちで、いろいろ描いています。作風でも、作家のスタンスとしてでも、何か気になってくれたのなら作品やSNSなどを覗いてみてもらえると嬉しいです。


(文・取材=望月悠木)



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