普段気にする人はほとんどいないと思うが、線路の幅は鉄道各社や路線によって異なる。鉄道用語で「軌間」と呼ぶが、日本の場合、もっとも広いのが新幹線や京急、京成、大阪メトロ、阪急、阪神、近鉄（※一部路線を除く）の1435mm。
次いで広いのが都営新宿線や京王などが採用する1372mm。そしてJRの在来線をはじめ、小田急、西武、名鉄、南海など、日本でいちばん多くの路線で採用されている1067mmがある。
以上の3つが日本の鉄道における三大軌間だが、これらとは別にナローゲージと呼ばれる762mmの狭い軌間を採用するところも4路線存在する。なかでも有名なのが、トロッコ列車で知られる黒部峡谷鉄道。でも、こちらは観光列車に特化し、例年春〜秋の季節運行だ。
これに対して三岐鉄道北勢線、四日市あすなろう鉄道の内部線・八王子線は、大勢の沿線住民が通勤・通学に利用し、全国的な知名度はない。しかも、なぜかいずれも三重県にある。
そこで今回は、この3つの路線を乗り比べようと現地を訪れてみた。
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実は、明治末期から大正にかけて敷設された鉄道路線の主流だったナローゲージ。その多くは時代とともに姿を消し、より幅の広い線路へと替わってしまった。
ある意味、絶滅危惧種とも言えるが、最初に訪れたのは北勢線の起点駅である西桑名駅。JRと近鉄、養老鉄道が乗り入れる桑名駅に隣接していながら駅施設は共有していない。県内有数のターミナル駅の桑名駅にはない、ローカル線のようなレトロな佇まいに旅の期待感が膨らむ。
SuicaなどのJR系の交通系ICに対応した改札を通ると、目の前に1面1線のホーム。ただし、発車待ちの黄色い列車は明らかに通常の車両よりもひと回り小さい。
まるで遊園地のアトラクションのようなミニサイズだ。せっかくの機会なので先頭車両の前から線路を観察すると、確かに幅は狭く、車内も同様で中吊り広告は1枚分のスペースしかない。
また、冷房も他の車両のように天井ではなく、車両の端にタテ型のものを設置。これも天井の低さゆえの工夫なのだろうか。でも、目の錯覚なのか車内に居ると心なしか背が高くなった気分になり、これはこれで悪くない。
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ちなみに北勢線は総延長20.4�劼覗�13駅。このうち楚原―麻生田間には1916年竣工で現在も使用されている『めがね橋』と『ねじり橋』というコンクリート製の橋梁があり、建造物としての歴史的価値が高いことから、土木学会選奨土木遺産に認定。
沿線随一の撮影スポットである楚原駅で途中下車し、立ち寄ってみることに。
田園地帯を走る黄色い小さな列車はかわいらしく、草木の緑や青空とのコントラストが抜群だ。
再び楚原駅に戻り、今度は終点の阿下喜駅へ。駅の近くには北勢線にまつわる資料を展示する軽便鉄道博物館があるが、営業は毎月第1・第3日曜のみで、この日は休館。それでも、北勢線が同駅まで延伸開業した1931年から1983年まで使用された『モニ226』という古い車両が外に展示されており、こちらは見ることができた。
沿線は途中までは市街地が続くが、そこから郊外の田園地帯、木々に囲まれた小高い山と景色が次々と変わり、車窓からの眺めもバラエティに富んでいる。平均時速は約20�劼箸里鵑咾蠅靴討�り、名古屋から桑名までは20〜30分と近い。それで、ちょっとしたローカル線気分を味わえるのはいいかもしれない。
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そして、同じ三重県でも県下最大の都市・四日市市にあるのが、四日市あすなろう鉄道の内部線と八王子線。もともと近鉄の路線だったが、15年4月から同社と四日市市が出資する第三セクター鉄道に移行している。
起点は近鉄四日市駅に隣接する「あすなろう四日市駅」で、ホームがあるのは近鉄線の高架下。車体はアイボリーに緑の『なろうグリーン』、アイボリーに青の『なろうブルー』の2種類があり、どちらもミニサイズの車両に似合ったカラーリングだ。
車内は横向きのロングシートだった北勢線と違い、通路を挟んで左右1席ずつのクロスシート。
でも、こちらはほぼ同じサイズの車両なのに冷房は天井に付いている。同じナローゲージの車両とはいえ、鉄道会社によってその辺はやはり異なるのだろう。
◆鉄道好きならテンションが上がる「内部駅」へ
全8駅ある内部線は総延長5.7�劼如∋坡甲呂鯔イΔ茲Δ冒�る。所要時間は約17分で、アッという間に終点・内部駅に着いてしまった。
ここは車両基地に隣接しており、ホームから基地内の車両、さらに駅の横には車庫もあって整備中の車両も見えるため、鉄道好きならテンションが上がりそうだ。
◆ナローゲージの台車を間近に見られる日永駅
続いて同じあすなろう鉄道の八王子線に乗るため、分岐駅の日永駅まで戻る。東京の八王子と同名の路線名だが、これは1912年の開業当初、八王子村駅（※後の伊勢八王子駅。76年に廃止）まで結んでいたことが由来だ。
乗り換えのために下車した日永駅はホームがV字になっており、その中央には実際に使用されていた台車が展示。
ナローゲージの台車を間近に見られるのは、全国でもここだけの大変貴重なものらしい。
◆地元密着のミニ鉄道が持つ魅力
そんな日永駅を後にすると、わずか3分で八王子線の終点・西日野駅に到着。
総延長1.3 �辧△△垢覆蹐�四日市駅からでも3.1�劼料換駘�数の短距離路線だが、県が発行する『三重県統計書』によると22年度の西日野駅の乗車人数は1121人。減少傾向にあるようだが、今も地元住民にとっては貴重な足となっているようだ。
沿線住民にとっては当たり前かもしれないが、地元以外の人間にとってナローゲージのミニ列車は、ここでしかお目にかかることができない特別な存在。最近は全国的に観光列車がブームになっているが、それに負けないくらい魅力的かつ希少性の高い列車だってあるのだ。
＜TEXT／高島昌俊＞
―［シリーズ・駅］―
【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。
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このニュースに関するつぶやき
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四日市あすなろう鉄道だけじゃなく、三岐鉄道北勢線も元近鉄だろ。近鉄は一時期、1435、1067、762mmの三種類の軌間を抱えた日本で唯一の鉄道だった。
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