
6月22日まで行われたレスリングの明治杯は、9月に行われる世界選手権の代表選考会を兼ねた重要な大会。だが、その舞台にパリオリンピック™53キロ級金メダリスト・藤波朱理(21)の姿はなかった。
【写真を見る】レスリング パリ五輪金・藤波朱理を唐橋ユミキャスターが単独取材「必ず優勝できるように」“史上初”に挑む21歳に迫る
藤波はパリ五輪後に57キロ級への階級変更を表明し、その適用を優先するために明治杯を欠場した。目指すのは過去に日本のレスリング界では誰も達成していない「階級を上げての五輪連覇」。練習場所を訪れたサンデーモーニングの唐橋ユミキャスター(50)に、階級変更の理由や21歳らしい素顔まで様々な一面を見せてくれた。
23日、練習拠点の日本体育大学を訪問した唐橋キャスター。体育館の隅に座っている藤波を見つけ挨拶に向かうと、早速その人柄を覗かせるやりとりが。
唐橋ユミ:初めまして、唐橋です。今日はよろしくお願いします。
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藤波朱理:藤波です。すみません!気づかなくって!よろしくお願いします。
唐橋:練習も見させて頂きます。
スタッフ:我々が邪魔だったら投げて頂いても大丈夫です。
藤波:じゃあタックルで(笑)
この日の練習は午後4時半から7時過ぎまで約2時間半、休憩を挟まず、ずっと“動きっぱなし”。決して楽ではないメニューの後でも、苦しそうな様子も全く見せずに取材に応じてくれた。まずはインタビュー前のこんな会話から。
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唐橋:今日、藤波さんの好きな芋けんぴを持ってきたんです。
藤波:え!ホントですか!大好きなんです、嬉しい。元気出ました、今ので(笑)
唐橋:パリ五輪からもうすぐ1年ですね。
藤波:自分ではもっと前のことのように感じていて。終わってからいろいろとあったので、本当にまだ1年しか経っていないのかという感じですね。
唐橋:その、いろいろの中では53キロ級から57キロ級へ変更ということで。それはどうしてですか?
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藤波:パリ五輪の前から「53キロ級はパリ五輪まで」と決めていて。次は57キロ級で勝負して、さらに高いレベルで、自分に合った階級で勝負したいという思いがあったので。“新たな挑戦”という意味で57キロ級に挑戦します。
唐橋:やっぱり減量は辛いですか?
藤波:自分自身は苦ではないんですけど、身体には減量幅が過度だったので。そういった部分でも57キロ級に上げようと。
唐橋:練習内容も変わりますか?
藤波:4キロはコンタクトスポーツではかなり大きくて、もろにフィジカルが影響してくるので。かなり変わったと思います。
唐橋:藤波選手の得意な足を取るタックルにも影響が?
藤波:タックルに入るまでは、ほぼ変わらないというか自分のタイミングで入るんですけど、そこからタックルに触れても4キロの差で潰されてしまったりだとか、53キロ級の時は自分のパワーで行けたのが相手の圧も変わってくるので、そこの難しさは大きくあります。
唐橋:練習でも男子選手含めていろいろな相手と対戦していましたが、それも57キロ級に向けて?
藤波:男子選手はすごく力が強いので、その相手にもしっかり自分のレスリングが通用するように頑張っています。
唐橋:何か新しい得意技みたいなものも、もしかしてこれからできるのかな。
藤波:これから出る10月(U23世界選手権)と12月(天皇杯)に向けて練習している技もあるので、そこは楽しみにしてもらいたい。
唐橋:57キロ級の自分のスタイルは、どこまでできていますか?
藤波:自分自身もどこまでできるのか楽しみですし、限界というのはないと思うので。理想とするレスリング、圧倒できるレスリングというのを今は練習しています。
そして藤波と言えば中学2年から続く連勝記録。その数字は現在「141」まで伸びている。
唐橋:連勝記録は、ご自身の中ではどう捉えていますか?
藤波:もう本当に過去のことというか、あんまり自分自身考えたくないところではあって。本当にそこじゃなくて、自分は強くなるためにレスリングをしていて、レスリングが好きだからやっているので。(でも)そこをきっかけに知ってもらえたりするのは、すごく嬉しいなとは思います。
21歳の素顔「好きな時間」は?インタビューが進む中、唐橋キャスターには、どうしても言わずにいられなかったことがあった。
唐橋:なんかごめんなさい、私初めてお会いしたんですけど、可愛らしい。
藤波:(笑顔)いやいや、ありがとうございます。
唐橋:そんなになんか、「強いです!」っていう身体の感じでもない。
藤波:そうですね、よく言われます(笑)
唐橋:日々の練習も大変だと思うんですけど、ちょっとほっとする時間って何されてるんですか?
藤波:食べるのが好きなので美味しいもの食べたりとか、夏になると結構バーベキューが好きです。川とか屋上で仲間とバーベキューするのがすごく好きな時間ですね。
唐橋:ご両親に関しての感謝の気持ちもよく表されていますよね。
藤波:そうですね。両親だけじゃなくて周りの人がいないと、自分はこうやって好きなレスリングっていうのはできてないので。絶対自分の力だけではできないですし、その気持ちを忘れたら1人の人として駄目だと思うので強くもなれないと思いますし、その気持ちはあります。
唐橋:今後の目標なども伺っていいですか。
藤波:もう本当に57キロ級で新しい挑戦になるんですけど、自分のレスリング、圧倒的な強いレスリングっていうのを皆さんに見せられるように、この10月(U23世界選手権)と12月(天皇杯)で、自信を持って戦えるように準備していきたいと思っています。
唐橋:オリンピックもこの先ありますよね。
藤波:自分が強くなったときに、アジア大会やロスオリンピックがあると思うので、そこで必ず優勝できるように頑張りたいです
唐橋:オリンピックではどんなスタイルで戦っている自分を想像しますか?
藤波:攻めるレスリング、自分は攻めて勝つレスリングなので、見ていて面白い展開のあるレスリングで勝っていきたいと思います。
唐橋:藤波選手は、何かを守るというよりも次々と挑戦していきたいっていうタイプですかね。
藤波:そうですね、レスリングスタイルもそうですし新しいことに挑戦して、どんどん強くなっていきたいなと思います。
唐橋:もっともっと進化しちゃうんですね。
藤波:はい、頑張ります。
インタビュー後には唐橋キャスターから約束の芋けんぴを受け取って笑顔を見せてくれた藤波。日本レスリング界初の「階級を上げての五輪連覇」へ、まずは10月のU23世界選手権が、その試金石となる。