「子ども人質に取られた」＝日大重量挙げ部員の保護者

　日大重量挙げ部の元監督難波謙二容疑者（６４）から学費などの不正徴収について口止めをされた部員の保護者が３０日までに、時事通信の取材に応じた。「子どもを人質に取られた思いだった」と不信感をあらわにするとともに、大学側に再発防止を求めた。

　部員は高校時代、複数の大学の重量挙げ部から勧誘を受けていたが、名門の日大への進学を決めた。保護者は「コーチがいろいろな大会に熱心に来ていて、安心して子どもを預けられると思った」と振り返った。

　保護者によると、部からは入学前、奨学生として受け入れるため、「１年目は学費の支払いが必要だが、２年目からは必要ない」と言われた。だが、送られてきた学費などの請求書を見ると、入学は数カ月先なのに、合格通知から約１週間という短期間に約１５０万円を部の口座に振り込むように求められていた。驚くとともに「払えないと子どもの行き先がなくなる」と焦り、必死で現金を集めて全額納付した。

　だが後日、大学からも学費の振込口座に関する連絡があった。不審に思って大学や部に事情説明を求める中で、「だまされているかもしれない」と感じたという。

　難波容疑者らが面会を求めてきたため、会うことに。同容疑者らは「いかに部員を大事にしているか」を訴えた上で、不正徴収について口止めをしてきた。不信感や怒りが沸いたが、「子どもを人質に取られている。理不尽な目に遭わされるのではないか」との心配が上回り、その場では「分かりました」と応じるしかなかった。

　難波容疑者らに不信の目を向けたことで、「（学内で）息子が嫌な目に遭ったりしないか」との不安は今でも残る。「自分が（不正徴収問題の）渦中にいるとは思わなかった。お金のことは今後きちんとしてほしい」と求めた。