エンジニアの安野貴博氏夏の参院選への出馬と、新党「チームみらい」の結成を発表したエンジニアの安野貴博氏。昨年の都知事選で無所属ながらAIを駆使した選挙戦で15万票獲得と大健闘したことは記憶に新しいが、政治にAIはどう関わっていくのか、本人を直撃した。
◆政治分野の本質的なDXこそ急務
都知事選ではマニフェスト作成や都内1万4000か所の掲示板へのポスター掲示率100%達成など、画期的なAI活用で存在感を放った安野氏。都のデジタル化推進アドバイザーにも就任し社会システムの変革を目指している安野氏が、このたび新党「チームみらい」を立ち上げ、党首として夏の参院選への出馬を表明した。
「自治体などのデジタル化支援で実感したのが、この国では政治分野の本質的なDXこそ急務だということ。いかに現場が優秀でも、システムが古くて進まない例がとても多いのです。私が永田町で優秀なエンジニアチームを立ち上げ、リテラシーの底上げをすることが最短経路だと思い、出馬を決意しました」
第4次産業革命ともいわれるAIの猛烈な進化は夢がある半面、デスクワーカーほど仕事を奪われる恐怖というネガティブな側面も無視できない。
「激動の時代なのは間違いありません。だからこそ、社会の変化に素早く対応できる政府でなければ、未来は明るくならない。例えば、ソフトウェアではリリース後に細かくアップデートするアジャイル開発が主流ですが、国や行政では開発計画に変更があれば承認されないなど、あまりにも市場のダイナミズムと乖離しています」
◆具体的な政策への落とし込みは?
AIに精通する安野氏は、具体的な政策への落とし込みとしてはどんなものを考えているのか。
「例えば母子手帳のデジタル化は、技術的にすぐできるはずです。利用者世代はデジタルへの親和性も高いですし、紙に思い入れがある人が選択できるようにすればいいだけ。また確定申告の完全自動化も、デジタル先進国であるエストニアでは実現しています。これによって無駄の多い一律給付ではなく、より公平に本当に必要としている人に効率よく給付金を届けられている。
なぜ日本でできないのか?といえば、いわゆる縦割り行政や複雑なルールに縛られているから。これを解消するには、やはり政治的なアプローチが必要なのです」
目下、国民は“令和の米騒動”ともいえる米不足、価格高騰に翻弄されているが……。
「コロナ禍に台湾のデジタル発展相オードリー・タン氏がサージカルマスク販売店の在庫がリアルタイムでわかるアプリを開発し、混乱を防いだことは記憶に新しいですよね。もちろん不確定要素が大きい農作物である米とマスクを同列には語れませんが、テクノロジーを用いて末端の買い占めを抑制する施策など、できることはたくさんあるはずです」
AIは脅威にあらず。民主主義のアップデートも待ったなしだ。
【チームみらい党首 安野貴博氏】
1990年生まれ。東京大学工学部卒。ボストン・コンサルティングを経てAIチャットボットの開発やテック企業を創業。SF作家でもある
取材・文/週刊SPA!編集部
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