『ガンダム』ファンに刺さるかもしれない美術作品5選。重厚&壮大な世界観と共鳴

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2025年06月30日 18:10  CINRA.NET

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Text by 沢山千

先日最終回を迎えた最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』も大きな話題を呼んだ『ガンダム』シリーズ。ただのロボットアニメではなく、人間の営みと世界の構造そのものを映し出す作品として進化し続けています。

それにしても、ララァの最期、コロニー落とし、ア・バオア・クーの重厚な構造体……『ガンダム』の名シーンは、なぜあんなに心に焼き付くんでしょうか? もしかしたらそれは、生と死、創造と破壊、理想と現実──そんな人間の根源的なテーマがストーリーに込められているからかもしれません。

この記事で紹介するのは、そんな『ガンダム』的な世界観に通ずる5つの名画。死者を運ぶ神秘的な小舟、崩壊する巨大都市、迷宮のような要塞建築、宇宙を設計する神の姿、そして戦争の果てに見える理想郷──18世紀から19世紀の画家たちが描いた「人類の壮大なストーリー」は、多くのクリエイターたちが紡いできた『ガンダム』の世界と、意外なほど共鳴しています。それらの作品を鑑賞することは、きっとあなたの「ガンダム愛」をさらに深めてくれるでしょう。

アルノルト・ベックリン『死の島』(1883)

スイスの画家アルノルト・ベックリンが描いた『死の島』は、岩に囲まれた小島へ、白装束の人物と棺を載せた小舟が向かう静謐な風景を描いた作品です。生と死、永遠と瞬間が交差するような構図で、見る者の内面を深く揺さぶります。謎めいた沈黙に満ちたこの作品は、長年にわたって人々の想像力を刺激し、多くの解釈を生んできました。

この絵は、戦場で命を落としたパイロットたちがたどり着く場所のようにも見えます。ララァ・スンやマリーダ・クルスといった人物たちの魂が還っていく場所として想像すると、作品の静けさにより深い意味が重なります。『ガンダム』が描く「死」に共鳴する一枚です。

ジョン・マーティン『バビロンの崩壊』(1831)

イギリスの画家ジョン・マーティンは、神話や聖書をもとに黙示録的な風景を多く描きました。なかでもこの『バビロンの崩壊』は、巨大都市が炎とともに崩れ落ち、人々が混乱のなかを逃げ惑う壮大な構図が特徴です。光と闇、秩序と混沌が同居するこの作品は、圧倒的なスケールで人類の終末を描いています。

この画面を見て、コロニー落としやアクシズの落下といった、『ガンダム』シリーズの終末的なイメージを連想する人も多いのではないでしょうか。崩れゆく理想、文明の限界、人々の無力さ。それでも、どこかに救いや再生の兆しを探してしまう視線。そうした感覚が、この作品の迫力とよく響き合います。

ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ『拷問の輪(The Pier with Chains)』(1750年代)

建築家であり版画家でもあったピラネージによる『拷問の輪』は、彼の『空想の牢獄』シリーズのなかでもとくに有名な一枚です。巨大なアーチ、無数の梁や鎖、複雑に入り組んだ階段が迷宮のように連なり、空間全体が重く沈んだ空気をまとっています。架空の牢獄でありながら、異様なリアリティを感じさせる傑作です。

この絵に描かれた空間は、ジャブローの地下基地やア・バオア・クーの内部空間、または月面の工場群など、ガンダムの世界に登場する巨大建築を思い出させます。構造物の美しさと恐ろしさ、無機質な空間に立ち尽くす人間の小ささ。それらが静かに、しかし確実に心を打つ作品です。

ウィリアム・ブレイク『日の老いたる者(The Ancient of Days)』(1794)

詩人であり画家でもあるウィリアム・ブレイクの代表作『日の老いたる者』は、黄金に輝く神がコンパスで宇宙を設計するような構図です。神話的でありながら、どこか科学的な精密さも感じさせるこのビジュアルは、創造行為の神秘と危うさを同時に語っています。

この作品を、モビルスーツ開発者の「神の視点」として見ることもできるでしょう。ジオン公国の科学者や連邦の技術者たちが、人間の肉体を超える兵器を生み出そうとするときの狂気と理性。その両方を象徴するような存在感があります。機械と神性が交錯する瞬間を描いた、ガンダム世界の深層と共鳴する一枚です。

トマス・コール『神の庭園(The Garden of Eden)』(1828)

アメリカの画家トマス・コールが描いた『神の庭園』は、旧約聖書に登場する「エデンの園」をモチーフとした作品です。光に満ちた自然のなかに人間の姿は小さく、鳥や動物たちが穏やかに共存する理想郷が広がります。神話的な静けさと調和のイメージに満ちた一枚です。

この作品には、『ガンダム』における「地球への回帰」や「人類の理想」のイメージが重なります。荒廃した戦場のなかで、誰かがなおも追い求める楽園。ニュータイプという概念もまた、人類がもう一度「このような世界」にたどり着くための進化であるのかもしれません。破壊の果てに浮かび上がる祈りのような作品です。

『ガンダム』シリーズが描いてきたのは、戦争や機械の物語であると同時に、人間の精神や文明の行方を問う深いテーマでもあります。今回ご紹介した美術作品は、そうした『ガンダム』の世界観と静かに響き合うものばかり。こうして並べて見てみると、改めて『ガンダム』の思想的射程の長さと懐の深さに驚かされます。

今回は18世紀や19世紀の作品をピックアップしましたが、近現代のアート作品にも『ガンダム』と共鳴するものはたくさんあるはず。それらもいずれ、別の機会にご紹介したいです。

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