まさかの「スキャナー不要説」が飛び出して会場はヒートアップ! 7年ぶり開催の「ScanSnapユーザーミートアップ2025」潜入レポート

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2025年07月03日 16:11  ITmedia PC USER

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新たに発売された「ScanSnap iX2500」。ホワイトの他にブラックカラーもある

 6月24日に、PFUがドキュメントスキャナーの新製品「ScanSnap iX2500」(以下、iX2500)を発表した。その同日、実に7年ぶりとなる「ScanSnapユーザーミートアップ2025」がベルサール秋葉原(東京都千代田区)で開催された。


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 対象者はScanSnapアンバサダーに登録しているユーザーで、募集を開始した当初は100席を予定していたが、すぐに埋まってしまったため、後日30席を追加募集した。こちらも追加日に埋まるという人気ぶりだった。


 イベントはYouTubeでライブ配信されたり、iX2500の実機展示やタッチアンドトライコーナーがあったり、トークセッションもあったりと盛りだくさんで、途中「それならスキャナーいらないでしょう」という話題まで飛び出して盛り上がった。そんな本イベントの模様をお届けしたい。


●いつどこでもスキャンを可能にする「ScanSnap iX2500」


 ユーザーミートアップは、ポッドキャストやYouTubeチャンネル「ガジェタッチ」の弓月ひろみさんとリンクマンさんが司会進行を担当して進められた。


 まずiX2500を紹介したのは、PFUの今村博貴さん(ドキュメントイメージング事業本部 スキャナー開発統括部)だ。


 iX2500は、2021年1月19日に登場した「ScanSnap iX1600」の後継機となるフラッグシップモデルだが、さまざまな点で進化した「次世代スキャナー」だという。


 詳細は、発表会レポートをご覧いただくとして、独自に開発したSoC「iiGA」によるハードウェア面でのパワーアップと、スキャン設定の保存先を本体からPCやスマートフォンなどへ移行するなどソフトウェアの強化/最適化が前モデルとの大きな違いとなる。


 また、AIのパーソナライズ化が加速している現在、リアルとデジタルの境界を超える、橋渡しをする役割がスキャナーにも求められている。これからのスキャナーには場所を問わず誰でも簡単に、どんなデバイスでもスキャンできるようなニーズが高まっており、iX2500はこのニーズへ応える製品の第一歩となる。


 乾杯の音頭を取ったのは、ScanSnap/HHKBプロモーション部長 平井将也さんだ。「沢山の方に集まっていただいて、本当にうれしく思います」と感情を吐露した後、次のように続けた。


 「7年ぶり、ということで何となく予想されていた方もいらっしゃると思います。逆に、どうして7年もかかったんだよ、というお声もあるかと思います。でも、今回の製品は本当に苦労して生み出した“難産品”ですし自信作でもあります。会場の後方に実機があり、アテンドしているのはほぼ開発部の人間なので、要望などありましたら、ぜひお伝え下さい。ただし、お手柔らかにお願いしますね!」(平井さん)


●ScanSnapとAIの関係がクリアになったスペシャルトークセッション


 本イベントの目玉といえるスペシャルトークセッションのテーマは、「AIとScanSnapがもたらす新時代の情報活用」だ。


 登壇者は、ScanSnapプレミアムアンバサダーでブロガー/ライター/アドバイザーのいしたにまさきさん、同じくScanSnapプレミアムアンバサダーで文芸評論家の三宅香帆さん、そして「LLM無職」として知られるナル先生@GOROmanさんの3名だ。


ScanSnapの使い方は三人三様


 最初のテーマは、「ScanSnapどう使ってる?」というものだ。


 いしたにさんは、ScanSnapの横に箱を置き、帰宅後に財布から取り出したレシートを入れ、月に1度まとめてスキャンしていると話す。三宅さんは、名刺をスキャンしようと思いながらもScanSnapの横に名刺が山積みになっていると述べ、iX2500が名刺を50枚セットできると知り、興味を示した。


 いしたにさんが「僕は800枚ためたことがあります」と返すと、ナル先生@GOROmanさんは「僕は6000枚くらいですかね」と応じ、謎の枚数自慢が始まった。


たまる一方の“ゴミ”を資産化するAI


 次なるテーマは、「単なる情報を“資産”に変えるAI時代に輝くScanSnapの本質」だ。


 いしたにさんが会場にScanSnapの利用歴を尋ねると、初代(2001年)やPDF化対応(2004年)、Wi-Fi対応モデル(2012年)など、さまざまな時代のユーザーが手を挙げた。「年代別にまんべんなくいますね」と、いしたにさんは感想を述べた後、「スキャンしたデータは見返していますか? ただデータがたまるだけでゴミになっていませんか?」と問いかけ、古参ユーザーからも笑いが漏れた。


 「使わなければゴミです。クラウドにゴミがたまり、容量が足りなくなって慌てて整理することもあります」といしたにさんが語ると、三宅さんも「完全にブラックボックスのフォルダーがあります」と共感を示し、「スキャンすると安心してしまうのです」と明かした。


 この“ゴミ”を“資産”に変えるのがAIだ。「ブラックボックスにあったデータが、AIの登場で資産に変わるのです」という弓月さんのまとめに、「自分次第ですけどね」といしたにさんが応じ、実例を紹介した。


 スライドが切り替わると、会場から「あるある〜」と失笑が起きた。いしたにさんは「10月って、いつの? ビジネス文書としてはありえない体裁ですよね。カレンダーに日にちしか入っていないので、スキャンしたものを見ながらGoogle カレンダーに手入力しなければならないわけで」と指摘した。


 「コピペできないなら紙のままの方がいい、スキャンしない方が楽、スキャナーはいらないとなってしまう!」と続けた。


 ここでAIの話題となるが、現時点のChatGPTでは「令和」を理解できず、日付ごとにイベントを書き出すだけだ。


 この場合も、コピペの手間が発生する。


 しかし、完全自立型AIエージェント「Manus」(マナス)なら、スキャン後に「この予定をGoogle カレンダーに登録する方法を教えてください」と指示するだけで元号を理解し、CSVデータに変換してGoogleカレンダーへのインポート方法まで案内してくれる。


 短い指示でスキャンデータを活用できるManusについて、ナル先生@GOROmanさんは「まるで全自動洗濯機」と表現し、三宅さんは「自分の手を煩わせない作り」と補足した。


 「AIがここまで進化したことで、スキャンしてためていただけの情報が資産として活用でき、価値を生み出します。これを狙って(iX2500を)出したのではと思うほどです」といしたにさんは語った。


既にデータを資産化している人たちの実例とは?


 ScanSnapユーザーの活用事例をX(旧Twitter)で募集し、選ばれた案として「申請書類の書き方をScanSnap×AIで教えてもらう」「引き継ぎ書類をスキャンして指示を出すだけで、見た目も使い勝手も良いHTMLファイルに書き出してくれる」という2つが紹介された。


 三宅さんは「専門家のお二人に聞きたかった」と切り出し、「執筆のためにさまざまな紙資料をスキャンしてOCR化し、コピペできるようにしたいけど縦書きではうまくいかず、ChatGPTも誤答が多い。どうしたらよいのでしょうか」と質問した。


 いしたにさんは「全部Manusに投げ込めばいい」と即答。「Claudeもかなり良いが、Manusならファイル分割やPDFの結合も指示でき、Adobe Acrobatのフル版を買わなくても済む」と述べ、ナル先生@GOROmanさんも「僕もManusにぶち込みますね」と同意した。


 三宅さんが「どのAIサービスを使っていますか」と尋ねると、いしたにさんは「ClaudeとManusで、Claudeには毎月6000円ほど支払っていて、Manusはいろいろな人に紹介したので6万クレジットほどたまっています」と回答した。


 ナル先生@GOROmanさんは「僕は36万クレジット」と明かし、さらに「AIサービスに毎月20万円課金しています」と述べて会場を驚かせた。


 三宅さんが「どこにそんなにかけているの?」と問うと、「Devinですね。500ドルからなので」と答え、「ロゴはカワウソでかわいいが、値段はかわいくなかった」とコメントした。


 「でも、こういうのを作りたいとチャットで指示するだけで15分で形にしてくれます。24時間働くエンジニアを月500ドルで雇っていると思えば高くはないかと」と語った。


「税理くん」で学ぶスキャナーとAIのいい関係 そして快適な未来


 最後のテーマは「データが“私”を知る時代 ScanSnapとAIが拓くパーソナライゼーション」だ。これまで、ほぼ沈黙していたナル先生@GOROmanさんが、ここで本領を発揮した。


 いしたにさんが「個人事業主にとって重要な日は3月15日です。2025年は3月17日だったけど、確定申告締め切り間近に、この人(ナル先生@GOROmanさん)は確定申告自動化の仕組みを開発していました」と明かすと、「締め切りが近づくとソリューションを作りたくなる。3回ルーチンワークしたらシステムを作ろうと考えるのがエンジニアなのです」と応じた。


 まず、Gemini 2.0 Flashでイメージキャラクターを作成し、その過程をQiitaの記事で紹介した。キャラクターが表示されると三宅さんが「イメージキャラまで作っているんですか!」と驚き、「キャラ大事でしょ。名前は税理くん」と返した。


 続いてChatGPTのGPTs(カスタムGPT)で「税理くん」に相談しながらSQLを作成。Amazonの購入履歴データを用意し、AWSにPostgreSQLサーバを立てて投入した。


 「過去に買ったものの金額を見てショックを受けました」と語ると、ガジェタッチの2人も笑いをこらえきれなかった。


 PostgreSQLへのデータ投入やSQL作成も全て税理くんに任せ、自然言語でクエリを作成し、最終的に確定申告を期限内に終えたという。


・詳細→ 今話題のMCPを使って確定申告をラクにしてみた


 「この仕組みの中核はMCP(Model Context Protocol)で、外部のさまざまなAIサービス同士をつなげます。MCPの登場は2024年12月ごろだったが、忙しくてキャッチアップできず、学ぶために会社を辞めました」とナル先生@GOROmanさんが経緯を語った。


 「MCPはChatGPTやClaudeなどのチャット系AIサービスと外部拡張サービスを接続し、自然言語で多様な処理ができる。雑な指示でもOKで、MCPサーバが次々立ち上がり、あらゆるものがMCP化している。自然言語で書き放題の時代が近づいています」とナル先生@GOROmanさんは述べた。


 「ScanSnapでレシートを全て読み込んで、Google ドライブなどに保存しておけば活用できるのでしょうか」と三宅さんが尋ねると、「例えば、いつ銀座で食べたあれは何だったかと聞けば答えてくれる世界線」と答え、「あれやっといて」と言えば意図をくんで自動で処理される時代が来るだろうと展望を語った。


●どんどんスキャンしまくってAIを使ってデータを活用して


 スペシャルトークセッションの最後は、登壇者たちが次のような一言を述べ合って締めくくった。


 「これまでゴミのようだったデータを、有効活用するツールが現時点で十分にあります。10年あるいは15年の間、がんばってスキャンしてきたものをAIとかけ合わせれば活用できるんだよ、無駄ではなかったんだよ、というメッセージを受け取ってもらえれば良いと思います」(いしたにさん)


 「AIそれぞれに得手不得手があるということがよく分かったし、やりたいにことに合わせたAIツールにScanSnapを連携させる重要性や、どれを使うかを把握するためにキャッチアップしていくことの大切さも分かりました。会社員時代に、SQLだとかHTMLタグだとかを研修で学んで、放り投げたくなったことがありますが、今はAIを活用することで、それらを『ちょっとAIに作ってもらおう』といえる時代が来ているんだな、と実感しました」(三宅さん)


 「『AIにこんなことできないだろう』と自分で制限をかけるのではなく、やりたいことを素直にAIに聞いた方が良いです。インターネットが出てきたことで生活がすっかり変わったように、AIでいろいろ変わると思うし、AIを扱うのが当たり前になってくるでしょう。エンジニアではない人こそAIに触れて、どんどんスキャンしまくって、活用してもらったらいいんじゃないかと思っています」(ナル先生@GOROmanさん)


●大抽選会などYouTubeライブ以降の会場の様子を紹介


 YouTubeのライブ配信はここで終了したが、会場では恒例のプレゼント抽選会が催された。


 ScanSnapに関連したものや、協賛社が提供したものなどがプレゼントとして用意される。受付時に渡された自分の番号が出れば、そのプレゼントをゲットできる。


 iX1600までで使えるA3キャリアシートに始まり、バッファロー提供の「おもいでばこ PD-2000」やTCL JAPAN ELECTRONICSの「NXTPAPER 11 Plus」、さらにはiX100の現品や、この日の主役であるiX2500がプレゼントに登場した。


 番号が発表されるたびに、落胆の声以上に拍手が沸き起こり、仲間の幸運をたたえあっていた。


 締めのあいさつに登壇したドキュメントイメージング事業本部 販売推進統括部長 山口篤さんは、「7年という長い年月お待たせしてしまったにもかかわらず、こんなにも大勢のみなさんにお集まりいただき、本当にありがとうございました」と話し始め、「7年は長いと感じるかもしれませんが、スタッフは最後までがんばり、そして追い込んでようやく発表にこぎつけました」と続けた。


 その後、会場にいる開発スタッフを壇上に呼び寄せ、彼らの働きをたたえてから次のように締めくくった。


 「iX2500とAIとのつながりをもっと分かりやすく、具体的に伝えていきたいし、年内にはアップデートも控えています。今日いただいた厚い支援や声にこたえられるよう、全力を尽くしていきたいと考えているので、これからもよろしくお願いいたします」(山口さん)


 会場の後方には、iX2500の実機がいくつも並び、イベント開始前や終了後のフリータイムには、参加者たちによるタッチ&トライでごった返していた。どこがどう変わったのか、何ができるようになったのかなどをスタッフから教えてもらう際の、真剣な様子が印象的であった。



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