浦和レッズのクラブワールドカップを総括 収穫もあったが福田正博はJリーグの今後の課題を指摘

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2025年07月03日 18:10  webスポルティーバ

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福田正博 フットボール原論

■クラブワールドカップ3戦全敗に終わった浦和レッズだが、福田正博氏はクラブの資金力の差を指摘。また戦い方としても様々な課題があったという。

【硬さの要因は大舞台への慣れ】

 浦和レッズのクラブワールドカップへのチャレンジは、世界の強豪相手に3連敗という結果に終わった。グループリーグの初戦でアルゼンチンのリーベルプレートに1対3、2戦目はインテル(イタリア)に終了間際の失点で1対2、最終戦はメキシコのモンテレイに0対4で敗れた。

 内容に目を移せば、この大舞台で「格上を相手に自分たちができること」を徹底して戦った。日本のクラブチームが世界の強豪クラブと戦う時、選手の質で上回るのは難しい。だからこそ、個ではなく、チーム全体が有機的になるよう規律を守り、ハードワークをすることを浦和も徹底していた。そのなかでしっかりできたこともあるし、もっとレベルを高めるべきこともあったが、こうした戦いを経験しなければ見えてこないものがたくさんあっただけに、今後の浦和にとっての収穫になったはずだ。

 クラブワールドカップは、クラブの資金力がモノをいうところが大きい。国別代表のワールドカップとは異なり、クラブに資金力があれば才能のある選手を集められる。実際、クラブワールドカップに出場したクラブのほとんどが、資金面で言えば浦和よりも多くの予算を持ち、各国代表を揃える布陣だった。

 他クラブに各国代表の主力選手がゴロゴロ揃うのに対し、浦和に日本代表はいないし、各国代表の外国籍選手もいない。マテウス・サヴィオはいい選手なのは間違いないものの、代表歴はU−20のブラジル代表だけ。世界規格で比べると、見劣りしてしまうのも仕方ない。

 そんな浦和にとって、グループリーグの対戦相手は10回対戦して1回勝てるかどうかのレベル差。それでも勝利のために自分たちにできることをチーム一丸となって実践したが、リーベルプレート戦は硬さが抜けない時間帯に、相手にガツンと来られて慌てて失点と、序盤からゲームを難しくしてしまった。

 硬さの要因は、大舞台への慣れという部分だ。大きな試合になるほど海外勢は試合の入りでアグレッシブに来る。たとえば日本代表など海外でのプレー経験が豊富な選手たちであればこれに対応できるだろう。しかし、JリーグやACLの経験だけではなかなか対応できないものだ。それでもリーベル戦は、相手に慣れてからは1タッチパスを回しながらリズムも出せていただけに、これを今後につなげてもらいたい。

【試合のラスト20分はあらためて課題】

 インテル戦は、チームが前線から連動してハードワークし、ボールを奪いに行ったのが先制点につながった。右サイドの金子拓郎からのパスを渡邊凌磨が押し込んでゴール。ただ、その後は一方的に押し込まれる展開となった。浦和は体を張ってゴールを守ったが、後半の78分に同点に追いつかれると、試合終了目前で決勝点を許した。

 渡邊や松尾佑介、CBのダニーロ・ボサ、マリウス・ホイブラーテンといった選手たちが、存在感を発揮していただけに、インテルから勝ち点を奪ってもらいたかった。

 やはり日本サッカーにとっては、最後の20分のところは課題だろう。コロナ禍以降は5人交代が定着したため以前ほど目立たないものの、後半70分あたりで力尽きるきらいがある。試合開始からハードワークをしているからなのだが、あと20分を乗りきれる体力や集中力をどう獲得していくか。これは今後も日本サッカーが向き合うべき課題なのだとあらためて感じた。

 3戦目はグループリーグ敗退の決まった浦和と、グループ通過のかかったモンテレイではモチベーションの違いが大きな差になった。もう一度フラットな状態で戦ったらどれくらい浦和がやれるのか見たいところだ。

 浦和はクラブワールドカップやACLで格上と対戦する時は堅守速攻で挑むが、Jリーグでの戦いぶりは、どちらかと言えば主導権を握るかたちになる。普段から堅守速攻を磨いているわけではないなかで、両方の戦い方を追わなければならない難しさはあっただろう。

【Jリーグへの切り替えはメンタルが大事】

 今シーズンの大きな目標のひとつだったクラブワールドカップが終わったが、浦和にはしっかりと切り替えてJリーグに向き合ってもらいたい。肉体的なコンディションを戻すことは当然だが、心配なのはメンタルの部分だ。目標が大きければ大きいほど、選手たちには戦い終えた後に「燃え尽きた」感が生まれることが少なくない。

 インテル戦に臨んだ時のような集中力でJリーグを戦えればいいのだが、なかなかあの熱量で臨むのは難しい。そこをマチェイ・スコルジャ監督がどうマネジメントするのか。経験豊富な監督だけに、しっかりと選手たちを肉体的にも精神的にも休ませながら、切り替えの作業に取り組んでいくことになる。

 浦和は4月から5月頭に5連勝があり上位につけているが、優勝を考えると厳しい位置にいる。優勝ラインは例年勝ち点76前後になることが多いが、現在勝ち点34の浦和がシーズン勝ち点76に到達するには、残り17試合で勝ち点42を積み上げる必要がある。17試合で3敗しかできない状況は、相当に厳しい。もちろん、上位・下位の力の差が小さい近年のJリーグでは、優勝ラインが勝ち点72前後まで下がる可能性はあるものの、それでも浦和は13勝が必要になる。

 4月に見せた5連勝を、ここから2回やっても優勝には足りないのが現状だ。ただ、5連勝できる自力があるだけに、選手たちが優勝へのモチベーションを高め、クラブワールドカップで見せた高い集中力で、Jリーグの残り試合を駆け抜けることができれば......。2006年以来の優勝に向けて、快進撃を期待したい。

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