地方創生はどこへ 急激な人口減が進む能登 肌で感じる国政の矛盾

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2025年07月04日 07:31  毎日新聞

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毎日新聞

能登半島地震の被災者が生活する仮設住宅=石川県輪島市で2025年7月1日正午、岩本一希撮影

 「福島の復興なくして、日本の再生なし」


 石破茂首相はそう訴え、東日本大震災からの復興に力を入れてきた。さらに、内閣の重点課題に「地方創生」も据えている。


 だが、石川県・能登半島の復興はどこへ行ったのだろうか。地方の人口減少に歯止めがきかない中で、能登半島は際立っている。


 被災者は国政の矛盾に疑問を感じており、この参院選で解消されることを望んでいる。


奥能登の人口減少率11%


 「やむを得ず能登から出て行った人がいる。ふるさとに戻ってきたいと思えるような復興をしないと」


 石川県輪島市の米農家、山下祐介さん(39)がそう話すのは、能登半島地震の被害が特に大きかった奥能登地方(輪島市、珠洲(すず)市、穴水町、能登町)に厳しい現実があるからだ。


 奥能登の人口は、地震が起きた2024年1月1日時点で5万5213人だった。


 それが、今年6月1日時点の推計では、6161人減って4万9052人になっていた。


 減少率は約11%。地震前までの1年5カ月(約5%減)と比べても、拍車がかかっている。24年10月1日時点の国内全体の人口推計(前年との比較で0・44%減)と照らしても、奥能登がいかに速いスピードで減っているかがうかがえる。


手弁当で復興のまちづくり活動


 山下さんはそんな中で、住民ができることに力を注いできた。


 今年4月には、輪島市町野地区でまちづくりのための協議会を設立した。11年の東日本大震災で甚大な被害に見舞われた宮城県女川町を訪れ、どのように復興したらいいのか手本を学んだ。


 町野地区では、住民を集めてワークショップを定期的に開き、魅力的なまちづくりに向けて議論を続けている。


 これまで、道路の復旧などで膨大な国費が能登半島に投入されてきた。


 その半面、政府が地方創生を進めているのに「まちづくりのために活動する住民が支援されている」という実感は持てない。


 ワークショップなどは全て手弁当で、経費は復興を支援する社団法人からの助成金を充てている。


見えない「令和の米騒動」の突破力


 山下さんは「令和の米騒動」で、政府が米価を下げるために備蓄米の一部を随意契約で放出する異例の対応を見せたことに矛盾を感じていた。


 「その突破力を能登の復興では、なぜ発揮できないのか」と首をかしげる。


 人と物が東京に一極集中し、少子化が著しく進む。被災地で人口を増やすのは至難だが、山下さんは能登半島以外に住みながら能登との関わりを持つ「関係人口」が復興のカギだと見ている。


 能登のファンを増やすことで、人口減少による担い手不足の解消が期待できるからだ。


 応急復旧工事が一段落し、本格的な復旧や復興に向けた段階に移っている。これからは、道路などハードだけではなく、まちづくりのようなソフト対策への支援も重要だ。


 参院選は3日に公示された。山下さんは選挙戦に何を望むのか。


 「地域の将来を決めるのは、能登に住む住民自身。そのために、国会も政府も後押ししてほしいんです。期待するのは決断力。住民の声に耳を傾け、復興の障壁を取り払ってくれる候補者が出てきてほしい」【島袋太輔】



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