大阪地裁=大阪市北区 家事審判で息子(4)の引き渡しが決定したのに応じなかった夫が、人身保護請求の審問に息子を出頭させなかったとして、人身保護法に基づいて身柄を拘束され、3週間にわたって拘置所に勾留されたことが、関係者への取材で分かった。夫は10日、息子の引き渡しを命じられ、釈放された。
同法では、審問への出頭命令に従わない場合、従うまで拘束している者を勾留できると定めているが、期限の規定はない。夫側代理人の松本亜土弁護士は「憲法上問題で、法律の見直しが必要だ」と訴えている。
関係者によると、勾留されていたのは大阪府内の20代の夫。妻が昨夏、息子を連れて無断で自宅を出た後、面会交流した息子を帰さなかった。
妻が大阪家裁に申し立てた家事審判で昨年12月に引き渡しを命令されたものの、これに応じなかったため、人身保護請求訴訟を起こされた。
大阪地裁(大野祐輔裁判長)は4月、息子を審問に出頭させるよう夫に命令。しかし、息子が体調を崩して病院に搬送されるなどしたため、3回の審問期日とも出頭させられなかった。
すると、3回目が設定されていた6月20日、息子を連れて行った病院で裁判所側が夫の身柄を拘束。2度の取り消し請求も却下した。
釈放後、時事通信の取材に応じた夫は、「いつになったら出られるのか、息子のことも心配で夜も眠れなかった」と振り返った。妻側の代理人弁護士にも取材を申し込んだが、回答は得られなかった。
子どもを巡る父母間の紛争に詳しい京都府立大の佐藤千恵教授(家族法)によると、人身保護法に基づき身柄を拘束されるケースはまれだという。同法には勾留期限が定められていないが、佐藤教授は「長期にわたり勾留する必要があるのか疑問だ」と話している。