2028年にデビュー100周年、時代を超えて愛される「ミッキーマウス」の魅力とは? その“愛され力”に迫る

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2025年07月11日 09:10  クランクイン!

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『蒸気船ウィリー』より (C)2025 Disney
 ディズニーを象徴するキャラクター、ミッキーマウスが、 1928 年の『蒸気船ウィリー』でスクリーンデビューを果たし、2028 年に 100周年を迎える。約 1 世紀に渡り世界中から愛され続けるミッキーマウスの魅力、そして、ウォルト・ディズニー・カンパニーとミッキーマウスが歩んできた歴史とは? カリフォルニア州・バーバンクにあるウォルト・ディズニー・カンパニー本社、ウォルト・ディズニー・アーカイブスのキュレーターと現役で活躍するアニメーターが語る、現代にも通ずる「ミッキーマウス」の“愛され力”に迫る。

【写真】貴重な資料も! ウォルト・ディズニー・アーカイブス


 本社の一角にある、ディズニーの歴史的資料や貴重なアイテムを収集・保存している「ウォルト・ディズニー・アーカイブス」。そこで誰よりもミッキーの歴史を知り、現在展示デザインキュレーターを務めるのがケルシー・ウィリアムズ氏だ。学生時代にウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートでキャストをしていたという根っからのディズニーファンであるウィリアムズ氏は、今ではアーカイブスのクリエイティブ・リーダーとして、没入型の展示やディスプレイを通して、ディズニーの豊かな歴史に命を吹き込んでいる。

■逆境から生まれた「ミッキーマウス」

 アーカイブ室で、ミッキーマウスについての貴重な資料を披露しながら、ウィリアムズ氏は、ミッキーマウスの誕生について「実はミッキーマウスより少し前まで遡ります」と語り始める。

 「ウォルト・ディズニー・カンパニーは1923年に設立され、その年に『アリス・コメディー』と呼ばれるアニメ作品の契約が締結され、カートゥーンの世界で実写の少女が冒険する作品として大人気になりました。ですが、ウォルトはアニメーションだけで構成される作品を作りたいという強い思いがあり『オズワルド・ザ・ラッキー・ラビット』と呼ばれるキャラクターを生み出しました。オズワルドは驚くほどの人気を博しましたが、残念なことに、契約上の問題でウォルトはキャラクターの権利を失ってしまいます。しかし、この出来事を経て、アニメーションが自分たちに向いていることを知ったウォルトと彼の兄ロイは、そのことにかえって励まされることになります。オズワルドの権利に関する残念な知らせを聞いた後、ニューヨークからロサンゼルスへ戻る列車の中で、彼らは心の底から<世界中の人々の心を掴むような人気キャラクターを創りたい>と思い、そのときにウォルトによって描かれたのがミッキーマウスなのです」と誕生の瞬間にまつわる貴重なエピソードを明かした。

■時代に合わせて変化するビジュアル

 ミッキーマウスは、1928年に公開された初のトーキー作品『蒸気船ウィリー』で一躍人気者に。続けて「ミッキーとミニーが初めて登場した『蒸気船ウィリー』の初演はニューヨークのコロニー劇場で行われた長編映画の前に公開された短編映画だった。初めて公開されるとすぐに大ヒットとなり、ミッキーはあっという間に世界中に広まる。コミック本やさまざまな出版物となり、世界中で話題となったのです」と、初めて登場した当時を振り返る。そこからこの100年間でのミッキーマウスの変化について「ミッキーの素晴らしいところは、時代の変化とともに常に進化し、ポップカルチャーの中でその存在感を保ち続けてきたことです」とコメント。

 「例えば当時販売されていたグッズに描かれた彼の姿をみると、時代ごとの流行や美意識が読み取れます。時の流れと、ミッキーのデザインやファッション、さらには職業が変化しているのです」と付け加えた。ディズニーのグッズやアイテムによる数々の展示会を実施してきたウィリアムズ氏に、ミッキーマウスというキャラクターの魅力を尋ねてみると、「それぞれのキャラクターに独自の個性と強みがありますが、その中でもミッキーは本当に誰もが好きになってしまうほど愛すべきキャラクターです。彼はクラブのリーダーのような存在で、私たちが大好きなディズニーキャラクター全員集めることができるのはミッキーというキャラクターこその力です。ミッキーを思い浮かべると、いつも一緒に思い出されるのがミニー、ドナルド、デイジー、グーフィーたちです。ミッキーは、仲間たちそれぞれの魅力を引き出すことができるリーダー的存在なんです」とミッキー&フレンズの関係性やその中での役割を語った。

■常に若々しく活気に満ち溢れたキャラクター

 もう1人話を聞いたのは、シカゴ出身でアニメーターのオースティン・トレイラー氏。数千人の応募者から選ばれ、ウォルト・ディズニー・アニメーションの手描きアニメーション見習いプログラムに参加した彼は、エリック・ゴールドバーグやディズニー・レジェンドのマーク・ヘンといったディズニー・アニメーションの巨匠たちのもとで手描きアニメーションのレガシーと技術を学んだ。そして、見習いとして参加した短編アニメーション『オズワルド・ザ・ラッキー・ラビット』(2023 年)を経て、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ100周年記念短編映画『ワンス・アポン・ア・スタジオ ‐100年の思い出‐』(2023年)に手描きアニメーターとして参加。ミッキーマウスやミニーマウスを含む複数のキャラクターのアニメーションを手がけた。

 トレイラー氏にもミッキーについて尋ねると「ミッキーの進化はアニメーションの進化でもあります。ディズニーのアニメーションは過去100年でストーリーはより洗練され、それに伴ってミッキーのデザインも進化を遂げてきました」とアニメーターとして感じるミッキーの変化について触れ、デザインにおける最も大きなターニングポイントは、1939年の短編作品『Mickey’s Surprise Party(原題)』であることを教えてくれた。

 「その作品でミッキーのデザインに変化が加えられ、より魅力的かつ生命力を感じるミッキーになりました。例えば、ミッキーの感情をより臨場感を持って表現する工夫として、白目の部分に瞳孔を付け加えたんです。私にとっては最も共感できるデザインなんです」と語った。一方で、アニメーターとしてミッキーマウスを描く上で最も難しいのは、デザインではなく彼らしさを伝える動きや演技だと、テイラー氏は目を輝かせる。

 「ミッキーのオリジナルのパフォーマンスを研究できるものはたくさんあります。そして、そこから得られるものやインスピレーションも非常に多くあります。ですが、新しい観客が動きや演技をよりリアルに感じるため、自分自身がそのキャラクターを深く理解する必要があると思います。ミッキーを常に新鮮に、ただし時代にあったキャラクターとして進化させることがアニメーターとしては最も難しい部分だと思います。『過去にこのアニメーターはこう描いたから、それをただ真似すればいい』と簡単に考えがちですが、私たちアニメーターは常に『新しい観客に新鮮で新しいパフォーマンスを届けるにはどうすればいいか』を考えるべきなのです」とミッキーを描くうえで大切にしていることを明かした。

 そして、レジェンドアニメーターのエリック・ゴールドバーグから「ミッキーのようなキャラクターと仕事をするときは自分自身に誠実であることが大切だ」と教えられたというトレイラー氏。続けて「ミッキー&フレンズの動きはいつも若々しさにあふれています。それは常にアニメーションで大切に描かれるべきところです。ミッキーはもうすぐ100歳になりますが、いつでも若々しく活気にあふれる表情をみせてくれます。そしてミッキーは、常にそういったキャラクターであるべきなのです」と打ち明けた。

■挑戦を諦めない姿に、思わず応援したくなる

 最後に、キャラクターに命を吹き込むアニメーターとして、ミッキーマウスのことを深く知るトレイラー氏にも、彼がこれほど長い間世界中で愛され続けていることをどう見ているか聞いてみると、「ミッキーがこれほどまでに愛されているのは、挑戦することを諦めない存在だからだと思います。それがまさに、彼の原点です。たとえば『蒸気船ウィリー』では、彼の望みはただ船を操縦することでした。でも、実はその操縦すらもどこか気が引けていて、なかなか踏み出せなかった。そんな彼だからこそ、観客は自然とミッキーを応援していたのです。その後のミッキーも、彼は常に『より良い人生を夢見るキャラクター』として描かれてきました。自分以上の何かを目指す姿、それは誰もが共感できるものではないでしょうか。特に僕はそうでした。小さいころからアーティストに、アニメーターになりたかったんです。そこがミッキーに最も共感した点だと思います。そしてミッキーが夢を叶え、目標を達成していく姿を見ていると”自分にもできるかもしれない”と思わせてくれるのです」と自身を重ねながら、長きにわたり愛される理由を語った。

 そんなミッキーマウスがスクリーンデビューから100周年を迎える記念すべき2028年に向けて、よりミッキーマウスの存在を身近に感じられるよう、「ミッキーたち私たちが日常を共に過ごす」というテーマを表現するグローバルキャンペーン「ミッキー&フレンズ・イン・リアル・ライフ」がスタート。日本では、ミッキーの新オフィシャルテーマソング「What We Got 〜奇跡はきみと〜」を、ミッキーのベストフレンド・King & Prince が歌うなど、ミッキー&フレンズと King & Prince による特別なコラボレーションが展開されている。
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