
「デザインあ」の世界が進化を遂げ、2023年にスタートした「デザインあneo」。その総合指導を務めるのは、数々のヒット商品や文化的プロジェクトを手がけてきたグラフィックデザイナー・佐藤卓さんです。
今回は、開催から大好評の「デザインあ展neo」に込められた、表向きには発信していないけれど本音では伝えたいメッセージについて語っていただきました。
「もの」も「こと」も、全ては誰かの工夫から生まれている
ー 「デザインあ展neo」では、普段あまり意識しないような動作や暮らしの道具がテーマになっていて、とても興味深いです。こうした日常への視点は、どうやって育まれていったのでしょうか?
佐藤さん:僕たちの身の回りにあるのは、「もの」だけじゃなくて、「こと」も含めて、実はすべて誰かが工夫してデザインしたものなんです。全てに「どうすれば使いやすくなるか」「どう伝えたらわかりやすいか」といった工夫が込められている。だからこそ、それに少しでも気づけると、「ありがたいな」って思えるんじゃないかなと感じるんです。
ー「ありがたい」……もう少し具体的に伺っても良いですか?
佐藤さん:「ありがたい」って、漢字で書くと「有り難い」ですよね。つまり、「あることが難しい」、“ありえないことが起きている”という意味なんです。
たとえば地球って、宇宙の中ではとても特別な環境を持った星です。空気があって、水があって、重力があって。そうした信じられないくらい奇跡的な条件のもとで、私たちは暮らしている。そこにさらに、人類が長い時間をかけて工夫してきた知恵が積み重なって、今の当たり前の暮らしがある。そう考えると、目の前にある何気ないことも、本当は奇跡の連続の中にあるんです。
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これは単なる「もったいない精神」ではなくて、資源問題やエネルギー、環境のことにもつながってくる大切な視点だと感じます。
デザインの楽しさの奥には、隠しメッセージが
ー 「デザインあ展neo」には、そうした「ありがたさ」への気づきを促すメッセージも隠されていたんですね。
佐藤さん:僕もね、そういうメッセージを説教っぽく言いたくはないんですよ(笑)。だから楽しんでもらえることを大切にしていますが、 一番深いところには実はそういったメッセージも隠れているんです。
取材、文、撮影・編集部
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