ヤクザにギャル、それぞれを取り扱った漫画は数あれど、ヤクザのお嬢様とギャルの組み合わせは意外とレア。そんなふたりを描いた読切漫画が「GANMA!」で2021年に発表された『お嬢とギャル』だ。本作が4年後の今年、Xで拡散され2万を超えるいいねを獲得している。
作者は現在『大神さんのこじらせ愛が甘すぎる』を連載中の麦原さん(@mugi__14)。自身の記念すべき商業デビュー作となった『お嬢とギャル』の制作について改めて振り返ってもらった。(小池直也)
――2.2万のいいねが集まっていますが、これについてご自身としてはいかがですか?
麦原:こちらは4年ほど前に描いた、私のデビュー作でした。今になって、こんなに読んでもらえるとは……と驚きました。
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好意的な反応をいただけて嬉しかったです。運とタイミングがよかったのかなと思います。
――本作の着想は何でしたか?
麦原:もともとは「女子高生同士の百合が描きたい!」という、私の欲望から始まった作品で恋愛漫画にするつもりでした。
でも「みんなに避けられてしまうヤクザの娘が、ギャルに優しくされて恋に落ちちゃう話」みたいなお気楽なラブコメ系のネームを連載会議で出したら落ちてしまいまして……。
「その登場人物を活かして読切を描いてみては?」というお声掛けをいただき、修正したのが本作です。
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――具体的にどう修正したのか教えてください。
麦原:読切として主人公に共感しやすく、かつドラマ性のある内容にしようと考えた結果、恋愛よりも友情をメインにした物語になりました。もともとあった恋愛要素は、ギャルの今井さんの心中に少しだけ残しています。
――ヤクザのお嬢様やギャルを描くにあたり、どのようにイメージを膨らませましたか。
麦原:主人公の美馬さんは、いわゆるヤクザものの作品を参考にしたりもしましたが、あくまで「ヤクザの娘だとバレたくない」とか「自立して真っ当に生きたい」と思っている女の子です。なので、真面目で一生懸命な普通の女の子を意識して描きました。ただ、怒った時にちょっとだけ家柄が出てしまうと面白いかなと思ったのでそこは取り入れています。
ギャルの今井さんについては、いわゆる「オタクに優しいギャル」というか……日陰者にも明るく分け隔てなく接してくれる、クラスの中心人物というイメージで描きました。
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――物語を考える上で意識することは?
麦原:読切を描く上で、当時の担当さんに「最初と最後で、主人公の感情が大きく変化しているほうがいい」とアドバイスしてもらいました。それを大事にしながら物語を考えた記憶があります。
1ページ目はヤクザに囲まれて固い表情の美馬さんが、ラストになると友達と一緒にリラックスして心から笑えていたら、すごく幸せな変化でいいなと。そんなラストに持っていけるように構成を考えました。
――この漫画は今振り返ると麦原さまにとってどんな作品ですか?
麦原:これが初めて担当さんと一緒に作った私の商業デビュー1作目なんです。それまでは同人活動で好き勝手に描いてましたが、本作で初めて「読者にどう共感してもらうか」や「物語のセオリー」などを意識できました。
これまでの同人作品の読者の方にも「麦原さんらしさが詰まっている」と喜んでいただけたのが嬉しかったです。自分らしさを出しつつ、商業的にも面白い漫画を描きたい、描けるかもしれない……と思えた、私の商業漫画家としての原点だと感じる作品です。
――現在連載中の『大神さんのこじらせ愛が甘すぎる』の作者的な見どころは?
麦原:見た目は怖いけど心優しい大神さんと、推しに夢中なオタク女子大生の美羽が、ひょんなことから同居生活を送ることになる男女ラブコメ漫画です。
個人的には陰キャで奥手な大神の「こじらせ」っぷりをぜひ見ていただきたいのと、人への優しさだったり思いやりを大事にしているので、読んでほっこりしていただけたら嬉しいなと思っています。
――今後の展望があれば最後にお願いします。
麦原:まずは現在連載中の『大神さんのこじらせ愛が甘すぎる』をたくさんの方に読んでいただけるよう、日々の原稿を精一杯頑張ります。
ゆくゆくは、描いた作品が単行本化やメディア化されるような漫画家を目指して精進していきたいです。
(文・取材=小池直也)
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