幼い子ども3人を失った飲酒運転事故について、事故後初めて講演する大上かおりさん=11日午後、福岡市東区 福岡市で2006年に起きた飲酒運転事故で幼い子ども3人を失った母、大上かおりさん(48)=福岡県=が11日、私立博多高校(同市東区)の生徒らに講演し、「自分の意志で飲酒運転をしないことを選べる大人になってほしい」と訴えた。大上さんが事故後に講演するのは初めて。
事故は06年8月25日夜に発生。飲酒運転の車に追突された大上さん一家5人が乗る乗用車が海に転落し、長男紘彬ちゃん=当時(4)、次男倫彬ちゃん=同(3)、長女紗彬ちゃん=同(1)=が犠牲となった。元同市職員は危険運転致死傷罪などで懲役20年が確定。事故がきっかけとなり、飲酒運転に関する罰則が強化された。
約30分にわたる講演で大上さんは、事故当時を振り返り、海に潜って沈みゆく車から倫彬ちゃんと紗彬ちゃんを助け出したものの、姿の見えない紘彬ちゃんの救出を諦めざるを得なかった状況を説明。「ものすごく恐ろしい決断をしなければなりませんでした」と振り返った。きょうだい2人もその後、亡くなった。
大上さんは「飲酒運転は自分で選んでいる犯罪」と非難。飲酒運転で失われている命がいまだにあるとし、「こんなことで尊い命が絶対に奪われてはいけない」と訴えた。
講演を聞いた3年生の早川凛さん(17)は、「話を聞いて悲しくなり、心がギュッと締め付けられる思いがした。家族や友達に飲酒運転の危険性を話していきたい」と力を込めた。
大上さんは講演後、生徒らと共に近くのJR千早駅前で、飲酒運転撲滅のチラシを配布した。

講演後、飲酒運転事故撲滅のビラを配る大上かおりさん(左)=11日午後、福岡市東区