「肉ごぼ天うどん」 北九州のソウルフードに、博多うどん(福岡うどんと呼ばれることも)がある。柔らかめの麺とだしの利いた優しいスープ、それから「ごぼ天」と呼ばれるごぼうの天ぷらや、さつまあげ風の「丸天」などのトッピングが有名。
その三大チェーンと呼ばれるのが、「ウエスト」「牧のうどん」「資(すけ)さんうどん」。それぞれに、地元の人々に愛されるお店なのだとか。
うどんは大好物なのでずっと行ってみたいと思いつつ、まだ機会に恵まれないでいたが、そのなかのひとつ、資さんうどんが、昨年12月に千葉県八千代市に関東1号店をオープン。そして今年の2月、なんと75店舗目にして東京初出店となる「資さんうどん 両国店」をオープンさせた。なんでも今後は、関東地方を中心に店舗を拡大していく予定なのだとか。
資さんうどんの特徴は、こだわりのうどんはもちろん、ぼた餅やおでんなどの名物があること。また、地元民に気軽に親しんでもらいたいという想いから、うどん以外にもバラエティ豊富なメニューがあることだそう。
ご当地グルメはご当地で食べてこそありがたみがあるという気持ちもありつつ、自分の住む東京にできてくれたことは、やっぱり嬉しい。そこで今回は、人生初の資さんうどんへ、飲みにいってみよう!
◆うどん以外の選択肢も多数
資さんうどん 両国店は、JR両国駅から徒歩約10分、都営大江戸線の両国駅からならば徒歩5分ほどの場所に、どーんとあった。
なるほど、確かに聞いていたとおりで、看板を見るとオーソドックスなうどんの他に、どんぶり、焼うどん、カレーなども同じくらいプッシュされている。
店内に入るとすぐにメニューサンプルがあり、やはり一押しは「ごぼ天うどん」や「肉ごぼ天うどん」のようだ。
また、エントランス付近には豊富な持ち帰り商品も並んでいる。うどんやつゆ、さらにはオリジナルのどんぶりや器類などを買えば、自宅で資さんうどんごっこをすることもできそう。
店内は広々として開放感があり、ボックス席とカウンター席に分かれていて、雰囲気はファミレスに近い。注文もタッチパネル式で、勝手がわからないぶん、あわてずに注文ができるのはありがたい。
◆まずは“名物メニュー”とおでんで
さて注文。まずはやっぱり、いちばんの名物である「肉ごぼ天うどん」を食べてみないわけにはいかないだろう。ごぼ天3本入りが税込760円で、5本入りが820円。見た目が派手なのは5本だけど、他にもつまみを頼んだりしたいので、今日は3本で。
ちなみにすべての麺類メニューにおて、うどんはもちろん、そばも選べるようになっている。初めてなので当然うどんを選んだけれど、そばも気になるな……。
そしてこれまた資さんうどんの名物のひとつである、おでん。これも何品か食べてみたい。だしの味がよくわかりそうな「だいこん」(130円)、おでんだねのなかでも好物の「じゃがいも」(130円)、それから、博多うどんの定番具材でもある「丸天」(130円)の3品を選んでみよう。
さっそく料理が到着したところで、まずは「生ビール(小)」(380円)からスタート!
◆食べれば食べるほどに進化するうどん
まずはつゆをひとすすりしてみて、いきなり感動してしまった。サバ、昆布、しいたけなどからていねいにとったというだしがふくよかに香り、日本の西側地方のだし文化へのこだわりを感じる、ものすごく深い味わいだ。それでいて味つけはシンプルで、甘みが強いわけでもなく、基本は素直な塩味。
続いてうどん。もちろん柔らかめではあるんだけど、もちもちとした弾力もきちんとあって、だしと絡み、ものすごく美味しい! あまりにもなので、僕の博多うどんへのあこがれ補正もあるのか? と自問自答してみたけれど、いや、これは単純に、資さんのうどんがうますぎるだけだ。こんなにリーズナブルな値段で食べられていいのだろうかとありがたくなるほどに。
で、さらにここからがすごかった。というのも、ぶっとくて甘くて香り良く、つゆを吸った衣がジューシーなごぼ天。その食べごたえに感動し(自分的には3本でも大満足すぎた)、さらに甘辛味に煮込まれたたっぷりの牛肉がこれまたうっとりの味わいで、ビールがぐいぐいすすむ。しかしこのうどんの底力はそれだけにとどまらず、ごぼ天の衣の油や、ごぼうの香り、そして肉の旨味や甘さが、食べすすめるごとにつゆに染み出していき、時間を追うごとにさらに完成度が高まってゆくのだ。つまり、食べれば食べるほどに進化するうどん。こんなの、人気が出ないほうがおかしい。
ビールはあっという間に飲み干してしまい、ハイボール、サワー、日本酒などひととおりが揃ったアルコールメニューのなかから「芋焼酎水割り」(380円)をおかわり。
おでんをつまみに、引き続き飲む。
◆薬味コーナーを活用すれば、無限に…
これまたしっかりとしただしの風味に、ほんのりとした甘さも加わった、専門店と言われてもおかしくないおでんだ。よく味のしみた大根やじゃがいもはもちろんのこと、丸天の、むちっとして旨みたっぷりな美味しさには驚いてしまった。丸天、つまみにもいいけど、次はうどんのトッピングとしても食べてみたいな。
ちなみに資さんうどんでは、薬味コーナーにある、天かす、とろろ昆布、つぼ漬けが食べ放題なのも嬉しい。プレーンなうどんを頼むだけでも、とろろ昆布たぬきうどんにできてしまうというわけだ。
説明書きによると、とろろ昆布は入れすぎると味が濃くなるので注意、とのことで序盤は入れずに食べていたけれど、途中でいいことを思いついた。麺をおおかた食べきってしまったどんぶりにそれらを追加することにより、あのうまいつゆがメインの、具だくさん汁とでもいうべき、新たなるおつまみとして再生するのだ。
さくさく、もぐもぐ、ずずず。うん、まだまだすげーうまい。むしろ主食であるうどんだったころよりも、酒のつまみとしてはいいかもしれない。
というわけで、つゆも焼酎も一滴残らず堪能し、ごちそうさまでした。あ〜、ちょっと想像を超えて良すぎたな。資さんうどん。機会があればまた絶対に飲みにこよう。
◆初回から3日後に再訪…今度は何を頼むか
「機会があればまた」などと言っていた初回の訪問からわずか3日後。僕はまたしても資さんうどん両国店にやってきてしまった。だって、前回はうどんとおでんという王道2品を味わったのみ。それだけであんなにも満足できてしまったからには、豊富にあるその他のメニューも食べてみたいじゃないか。
というわけで今回は、前回気になったそばを食べてみることにしよう。注文は「かけそば」(490円)で。
さらにもうひとつ。僕はカレーも大好きなんだけど、そばとカレーの両方はさすがに食べきれないなぁ。と思っていたら、カレーのソース部分だけが小鉢に盛られた「ちょいカレールー」(250円)なんていう絶妙なメニューを発見。そうだ、そこにとんかつ単品を追加して“カツカレーのアタマ”(アタマとはごはん抜きのこと)をつまみにしてやろう。「とんかつ」が370円、お、それのミニサイズの「ミニカツ」が250円。これくらいでちょうどよさそうだ。よし注文!
◆「ミニカツ」が思ったより大きい。いや、カレーもそばも…
いやぁ、今日もいい! 資さんうどん! カレーに合いそうな「ハイボール」(520円)もお願いし、いざ乾杯!
ミニカツが出てきた瞬間に驚いてしまっていたのは、ミニといいつつしっかりとしたカツのサイズ。普通の店のカツカレーにのってるやつくらいの大きさがある。
合わせて出てきたさらりとしたソースをかけて食べてみると、ウスターよりは甘い、どこか九州を思わせるソースと、ザックザクの衣、重すぎない味わい、素晴らしく美味しいとんかつだ。
その味をひとまず堪能したら、続いてはカツをカレーにどぼん。福神漬けがわりのつぼ漬けも良い塩梅で、最高という以外の感想が出てこない。ハイボールをひたすらぐいぐい。
というか、あれ? そもそもこのカレーが、ものすごく美味しくないか? スパイシーなんだけど和風カレー的なコク深さや甘みもあり、ものすごく好みのカレーだ。こんなにうまいの? 資さんのカレー。次回はもう、普通にカツカレーを食べにきたくてしょうがなくなっている。
おっと、のびてしまわないうちにそばも味わっておかないと。これがまた、香りの良い二八そばでありながら、どこかボソッとした庶民派感もあって好みの麺だ。今回は早めに天かすととろろ昆布を入れてしまったが、なんていうかもう、大好き。
この日もお気に入りの芋焼酎水割りを追加し、ぞんぶんに堪能。ごちそうさまでした。
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以上、ずっとあこがれはあったけど、実際に足を運んでみたら、その美味しさ、そして、どんな層にも幅広く支持される理由がものすごくよく理解できた、資さんうどん。
あえて欲を言うならば、東京にできてくれたのは嬉しい。けれども、東京という単位で見ると、僕の家から両国はまぁまぁ遠い。資さんうどんさん、次は「練馬区石神井公園店」を、なんとかお願いできないですかね?
<TEXT/パリッコ>
―[チェーン店ひとり酒]―
【パリッコ】
1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。X(旧ツイッター):@paricco