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大阪・関西万博で大阪に訪れるなら、ぜひ体験したいのが地下鉄の「ウォークスルー型顔認証改札」を使った来場だ。これは、大阪メトロ(Osaka Metro、大阪市高速電気軌道)が3月25日よりほぼ全駅での商用利用を始めたものだ。スマホのアプリで顔の登録と乗り放題のデジタル乗車券を購入すると、顔パスで大阪メトロへの乗車を体験できる。
驚ろかされるのは、ほぼ全駅となる130駅で商用サービスを開始した点だ。顔認証ウォークスルー改札はJR東日本など各社がこれから実証実験を予定している技術だが、大阪メトロはこれを数足飛びに商用サービスとして提供したこととなる。
これから大阪へ訪れる人は、新大阪駅から万博会場の夢洲(ゆめしま)駅への移動や、大阪の観光地の各駅への顔パスでの移動をすぐに利用できる。今の大阪で、一番気軽に未来を感じられる体験といっていいだろう。
顔認証対応改札のない駅と改札については、アプリのQRコードでスムーズに入出場できる。デジタル乗車券では、ID登録をした利用者がアプリのQRコードを使って全駅に設置されているQRコード対応改札を通過できる。このシステムに顔認証改札を加えた形なので、入出場する改札は顔認証改札でもQRコード対応改札でも問題ないというわけだ。
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将来的に、タッチ決済&QRコード改札に顔認証も一体化されれば、残りの駅や改札にも整備される可能性はある。
●顔認証ウォークスルー改札を利用 体感ではSuicaを超える快適さ
では、実際に顔認証ウォークスルー改札を利用してみよう。
事前準備として、iPhoneまたはAndroidに「e METRO」アプリをインストールし、アカウントを作成する。次に、アカウント設定で顔画像登録と、支払いに使うクレジットカードの登録を行おう。
実際に利用する際は、ホーム画面の「チケット購入」から対応するデジタル乗車券を購入する。現在は、大阪メトロ全線が乗り放題で観光スポットの割引も受けられる「Osaka Metro 26時間券(大人1100円、小児550円)」と「Osaka Metro 48時間券(大人1800円、小児900円)」を2025年10月13日まで購入できる。
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デジタル乗車券を購入したら、画面下の「MYチケ」から購入済みチケットの詳細ページを開き、「顔認証改札の利用」を有効にする。その上で、デジタル乗車券の利用を始める場合は同じ画面の「チケットを使う」を選ぶ。以後は、利用時間のあいだ顔認証改札を利用でき、アプリのMYチケからタッチ決済&QRコード対応改札用のQRコードを表示できる。
実際に利用すると、顔パスでの入出場があまりにスムーズで驚かされた。認証速度は“前に歩きながら実測で約0.3秒”だった。SuicaやICOCAなどの交通系ICが“カードリーダーに触れておよそ0.2秒”なので、改札を通る速度や体の動きを考えると顔認証の方が快適に感じられた。
最初は交通系ICをタッチするクセや、顔認証の速度が不安で歩く速度を落としてしまうのだが、慣れて素早く通過するようになると顔パスの快適さから戻れなくなる。改札に近づくたびにスマホやカードを手にしてタッチに備える作業とは無縁で、両手で荷物を持っているときはあまりの快適さに感動するほどだ。
そして何より、地下鉄の“顔パス”だけで大阪のさまざま駅を移動できる体験に、未来を感じられた。これは、駅や場所限定の実証実験では体験できない内容だ。一度体験すると、未来の交通機関は「ウォークスルー改札が当たり前になりそうだ」というポジティブな認識を得られるだろう。将来の技術に興味がある人はぜひ体験してほしい。
もちろん、大阪メトロの顔認証ウォークスルー改札も実現すべき課題ある。現在実用化できているのはデジタル乗車券を購入する観光客向けで、通常の運賃や定期での利用には解放されていない。
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ラッシュ時間帯での利用が増えると、ウォークスルー改札ならではの通過やエラー時の問題も出てくるだろう。顔認証の顔情報の管理・運用も、業界の動向によって変化があるかもしれない。また、顔を認識しづらいメガネやマスクを装着している利用者に対しては、QRコードを対応改札へ誘導する必要もある。とはいえ、いち早く実用化したからこそこれらの課題解決が早める可能性は高い。今後の大阪メトロの動きに注目したい。
●JR東日本も実験予定 ウォークスルー改札の今後は?
今後のウォークスルー改札はどうなっていくのだろうか。まず、大阪メトロを含む関西圏は、ウォークスルー改札の前に、QRコード乗車券の普及が訪れそうだ。関西の都市圏(京都〜大阪〜神戸)では主要私鉄に加えて、JR西日本もQRコード対応改札を整備した。これにより、私鉄各社とJR西日本をまたいで相互利用できるQRコードの周遊デジタル乗車券の発売がはじまるなど、これまでにない動きが生まれている。
通常の磁気乗車券についても、JR西日本は2028年以降QR乗車券への移行を進める。京阪電鉄は2029年までに磁気乗車券を廃止し、QRコード乗車券への移行を目標としている。関西の改札事情は今後大きく変わりそうだ。
他の地域では、JR東日本が今後10年でSuicaプラットフォームを強化し、ウォークスルー改札や位置情報などを用いた改札の実現を目指していると発表している。2025年秋に上越新幹線で顔認証のウォークスルー改札、2026年に在来線で顔認識以外の方式での実証実験を予定している。
●鉄道各社のおもなウォークスルー改札への取り組み
・JR東日本:2025年秋ごろ、上越新幹線の新潟駅と長岡駅でウォークスルー改札に向けた顔認証改札機の実証実験を予定。2027年、在来線にて顔認識以外の方式での実証実験を予定。10年以内にウォークスルー改札の実現を目指す
・JR西日本:2023年3月より大阪駅と新大阪駅で、大阪〜新大阪間を含むICOCA定期券の利用者を対象に顔認証改札の実証実験を開始
・山万ユーカリが丘線:2024年11月より全6駅で、バスでタブレット付き改札による顔認証乗車システムを開始
・京成電鉄:2025年1月より京成スカイライナーの4駅で、改札前タブレットによる顔認証でのチケット発券を開始
また、JR東日本を含む鉄道8社が2026年度以降、磁気乗車券をQRコード乗車券への置き換えを進めていくと共同で発表している。この取り組みが進めば、関東でも関西都市圏のように各社で相互利用できるQRコード企画乗車券などの販売や、ウォークスルー改札などの導入が進む可能性もある。今後の動向に注目したい。
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