約26万円で買える“ちょうどいい”ゲーミングノートPC「TUF Gaming A16」を試す

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2025年07月16日 16:11  ITmedia PC USER

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ITmedia PC USER

ゲーミングノートPCだが天板にはイルミネーション機能などはない

 ASUS JAPANが6月25日に発売した「TUF Gaming A16 FA608PM」は、NVIDIAの最新世代となる「GeForce RTX 5060 Laptop GPU」を搭載したゲーミングノートPCの新モデルだ。


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 PCに高い負荷がかかり続ける状態でも、安定してパフォーマンスを発揮できるよう設計されている、まさに「TUF」(タフ)さが売りの同シリーズだが、最新世代のグラフィックスカード(GPU)を搭載したモデルでも、そのタフさ、パフォーマンスの高さを発揮できるのか。ベンチマークテストを通じてチェックしてみよう。


●まずは製品仕様をチェック


 今回のレビューで使用したTUF Gaming A16 FA608PMは、CPUにAMDの「Ryzen 7 260」(8コア16スレッド)を搭載している。動作クロックは3.8GHz、ブースト時の動作クロックは最大5.1GHzだ。


 製造アーキテクチャは1世代前の「Zen 4アーキテクチャ」を採用し、内蔵GPUとして「Radeon 780M」も利用できる。NPUも搭載しているが、「Copilot+ PC」の要件を満たすほどの性能はない。実際、AI関連の処理を行う場合はディスクリートGPUを使った方が高速に処理できるだろう。


 GPUはGeForce RTX 5060 Laptop GPUを搭載している。同シリーズのGPUの中ではエントリーに位置付けられ、主にフルHD解像度で多くのゲームを楽しめる。ゲームタイトルによってはWQHD解像度でも快適に動作するだろう。


 本体に搭載されているディスプレイの仕様については後ほど紹介するが、GPUの性能に合わせて解像度は1920×1200ピクセルに抑えられている。


 エントリーに位置付けられているとはいえ、GeForce RTX 50シリーズで対応した超解像度技術の最新バージョン「DLSS 4」にもしっかり対応しており、マルチフレーム生成も利用できる。対応ゲームではフレームレートの向上に期待できる。


 メモリは32GB、ストレージは高速なM.2 NVMe SSDの1TBを搭載している。ディスプレイサイズは製品名の通り約16型で、アスペクト比は16:10、解像度は1920×1200ピクセルだ。リフレッシュレートは最大165Hzで、FPSなど高いフレームレートが求められるゲームにも向いている。


 外部接続端子も充実している。本体左側面には1ギガビットイーサネットの有線LAN、HDMI出力ポート、USB Type-C端子×2基、そしてUSB Standard-A端子と3.5mmのヘッドフォンジャックがある。


 右側面はUSB Standard-A端子×2基のみを備える。左右合計で、USBポートが5つもあるので、さまざまなゲーミングデバイスをつないで使ってもポートが不足する心配はない。


 有線LANも使えるため、オンラインでのPvP(対人プレイ)など、通信環境も勝敗に左右するゲームを遊ぶプレイヤーにとってはうれしい仕様だ。


 ボディーカラーは本体の頑丈さを感じさせるダークグレーのみを用意する。天板はゲーミングノートPCにありがちな華美なイルミネーションなどはなく、フラットかつ本体カラーと同系統のカラーでTUFのロゴが印字されたシンプルなデザインだ。


 それでいて背面、ヒンジ部分は大型の排気口が設けられているなど、タフの名に恥じない質実剛健な作りと見た目だ。


 キーボードはアイソレーションタイプで、フルカラーRGBのイルミネーション機能もある。キーピッチも広く、キータッチも良好だ。また、ゲーム中によく使う「WASD」はキーの仕上げが異なり、バックライトがより明るく透過するようになっている。


 使用中にキーボード、そしてパームレストなど、手や指先で触れる部分が熱を帯びることもなく、使用感は総じて良好だ。ただ、一点気になったのは右のShiftキーだ。キーの幅が通常のキーボードに比べて短く、Shiftキーを押したつもりが上矢印キーを押してしまうことがあった。


 付属するACアダプターは最大出力240Wのタイプで、接続端子は独自形状になっている。USB Type-CポートがUSB PD(Power Delivery)にも対応しているので、サードパーティー製のACアダプターでも本機を充電/給電することは可能だが、ゲームプレイの高負荷を安定して動かすのであれば、付属のACアダプターを利用した方がいいだろう。


●ベンチマークテストで性能をチェック


 ここからはベンチマークテストなどを実行し、ASUS TUF Gaming A16 FA608UMの実際のパフォーマンスをチェックしていく。


 本体の電源設定は「バランス」で、それ以外にもパフォーマンス設定を変更は行っていない。いわば“買ったままの状態”で、どのくらいの性能か検証する。


 また参考値として画面サイズは異なるが、2024年モデルの「TUF Gaming A14 FA401WV」のスコアを掲載する。


 TUF Gaming A14 FA401Wの構成だが、CPUはAMDの「Ryzen AI 9 HX 370」、GPUはNVIDIAの「GeForce RTX 4060 Laptop GPU」だ。CPUはTUF Gaming A16 FA608UMよりも上位であり、GPUは同クラスの1世代前を搭載と、比較対象としてはちょうどいいだろう。


CINEBENCH R23


 3Dレンダリングを通してCPUの性能を確認する「CINEBENCH R23」を実行してみた。スコアは以下の通りだ。


・シングルコア


・TUF Gaming A16 2025:1767


・TUF Gaming A14 2024:2026


マルチコア


・TUF Gaming A16 2025:1万6686


・TUF Gaming A14 2024:2万2532


 純粋なCPUのみのテストでは、2024年モデルといえど同世代/上位モデルのTUF Gaming A14に搭載されたRyzen AI 9 HX 370が良好な結果を残した。動作クロックも高く、CPUコア数やスレッド数も多いため、それがそのままスコアに反映されたと見ていいだろう。


 この差がこの後の各種テストに影響してくるか、そこを特に注意して見てもらいたい。


PCMark10


 続けて、PCの総合ベンチマークテストアプリを試していく。まずは定番の「PCMark 10」の総合スコアだ。


・TUF Gaming A16 2025:7585


・TUF Gaming A14 2024:7946


 PCMark10のテスト内容はブラウジングやオフィスソフトでのドキュメント作成、ビデオ会議や画像編集など「一般的なPC操作」でのパフォーマンスを計測している。


 ゲーミングPCの強みであるGPUを生きるシーンも少なく、またCPUのコア数/スレッド数の多さの優位性も出づらい内容なので、両モデルのテスト結果の差は少ないものになった。


3DMark


 3Dグラフィックスベンチマークにおける定番アプリ「3DMark」で主要なテストを実行してみよう。


 今回はDirectX 12をテストする「Time Spy」シリーズと、DirectX 11をテストする「Fire Strike」、レイトレーシング性能をテストする「Port Royal」を実行し、パフォーマンスのチェックを行った。結果は以下の通りだ。


・Time Spy


・TUF Gaming A16 2025:1万1087


・TUF Gaming A14 2024:9171


Time Spy Extreme


・TUF Gaming A16 2025:5346


・TUF Gaming A14 2024:4611


Fire Strike


・TUF Gaming A16 2025:2万7593


・TUF Gaming A14 2024:2万1846


Fire Strike Extreme


・TUF Gaming A16 2025:1万3290


・TUF Gaming A14 2024:1万934


Fire Strike Ultra


・TUF Gaming A16 2025:6988


・TUF Gaming A14 2024:5591


Port Royal


・TUF Gaming A16 2025:7000


・TUF Gaming A14 2024:5306


 これまでのベンチマーク結果と違い、TUF Gaming A16がTUF Gaming A14のスコアを全てのテストで上回った。


 さすがに3D単体のテストともなると最新世代のGPUの強みが出てくる。また、3DテストといえどCPUの性能差も影響するため、下位のCPUを積んだTUF Gaming A16でこのスコアであれば、TUF Gaming A14と同じCPUを積んでいる場合はさらにスコアの差は大きくなるだろう。


FF14/FF15ベンチマーク


 実際のゲームではどうか。次に試したのは「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー」「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」のベンチマークだ。


 前者は今でこそ軽いゲームだが、MMORPGの定番ソフトでもあり、ゲーミングPCで何かしらのMMORPGを遊びたいとなれば、テスト結果としては分かりやすい指標になる。


 後者は同じファイナルファンタジーでも、スタンドアロンでプレイする従来のRPGゲームだ。発売から年数は経過しているが、今でも国産タイトルとしては重たいゲームに分類されるため、ゲームコンソールとPCの双方で発売されるゲームタイトルを遊ぶ際の指標になる。


 どちらも解像度はフルHD、グラフィックス設定はもっとも高い設定にしてテストを行った。結果は以下の通りだ。


・ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー


・TUF Gaming A16 2025:1万5198


・TUF Gaming A14 2024:1万4018


FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION


・TUF Gaming A16 2025:1万1050


・TUF Gaming A14 2024:8240


 こちらの結果も3DMark同様に、TUF Gaming A16の方が良好なスコアを記録した。ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシーのスコア差が今までのテストに比べわずかなことが気になるが、GPUだけでなくCPUの影響が大きいゲームタイトルなので、ここはTUF Gaming A14のRyzen AI 9 HX 370が、GPU性能の差を埋めた結果といえるだろう。


 それでいても、やはり下位のCPUを搭載していても、最新世代のGPUの組み合わせでスコアが伸長することがよく分かる結果だ。


 この結果をふまえると、徐々にゲーミングノートPCの選び方も見えてくる。


 大体の人はCPUとGPUをチェックし、より数字の大きな「上位モデルの組み合わせ」を予算が許す限り選びたいと考えると思うのだが、実は「下位のCPUと最新世代のGPUの組み合わせ」の方が、良好な結果を得られる可能性が高いことは覚えておいて損はないだろう。


 あえてCPUを下位に抑えることで、PC本体の価格も抑え、その分でゲーミングデバイスなど周辺機器を充実させる買い方が、より快適にゲームを遊べる環境を整えやすいだろう。


●重量級ゲームタイトルの動作をチェック


 ここまでは比較的“一般的”なテストを実施してきたが、実際にゲーミングノートPCを選ぶ人は、ゲームコンソールの代わりを考えていることが多いはずだ。


 ゲームコンソール向けの注目度の高いタイトルはPC向けにも用意されていることが多く、そうしたゲームタイトルがちゃんと動くゲーミングノートPCを選びたい。


 そこで今回は重量級と名高い「Cyberpunk 2077」「モンスターハンターワイルズ」のベンチマークを実行し、TUF Gaming A16のパフォーマンスをチェックした。


Cyberpunk 2077


 Cyberpunk 2077のテストはゲーム内に設けられたベンチマーク機能を用いて行った。設定はプリセットの中で最も重たい「レイトレーシング:オーバードライブ」を選択し、DLSS 4によるフレーム生成を有効にしている。


 ゲーム解像度は本機のディスプレイ解像度に最も近い「1920×1080」(フルHD)、ウィンドウ設定はフルスクリーンに設定している。


 テスト結果だが、平均フレームレートは「136.98fps」と、ゲームコンソールが対応する上限フレームレートである120Hz(120fps)を超える結果を記録した。


モンスターハンターワイルズ


 続いてモンスターハンターワイルズのテストを行った。こちらは公式で用意されているベンチマークソフトを利用しテストを行っている。


 比較的新しいタイトルであり、筆者の元にも「モンスターハンターワイルズを、なるべく高画質で遊べるPCはどれか」と質問される機会が多い。


 そこでベンチマークソフトの画質設定は最も高画質の「ウルトラ」、そして一般的な「中」の2パターンで計測を行っている。また、こちらもDLSS 4でのフレーム生成を有効にしてテストを行った。


・画質設定:ウルトラ


・スコア:8649


・平均フレームレート:50.43fps


・画質設定:中


・スコア:2万2843


・平均フレームレート:133.55fps


 テスト結果だが、最高画質となるウルトラでは「設定変更を推奨します」とも表示されてしまった。ベンチマークの設定画面でも「ビデオメモリが不足する可能性がある」と表示され、テスト実行前から良好なテスト結果は得られなさそうな気配はあったのだが、結果は平均フレームレートでも60fpsを切り、シーンによっては30fpsを切るようなかなり動作が厳しい場面もあった。


 そして設定を2段階下げた「中」だが、こちらは「非常に快適にプレイできます」と表示され、平均フレームレートでもゲームコンソール以上を記録した。


 「中」まで下げると少しだけ、グラフィックの精細感は失われてしまうのだが、これがデスクトップPC向けの大型のディスプレイで遊ぶのではなく、16インチのノートPCのディスプレイで遊ぶのであればそこまで気にはならないと感じた。


 筆者自身のこれまでの経験になるが、ビデオメモリが8GBだとモンスターハンターワイルズの高画質設定は動作が厳しくなることが多い。


 もしどうしてもモンスターハンターワイルズを最高設定で遊びたい場合は、現行世代であれば「GeForce RTX 5070 Ti Laptop GPU」搭載のモデルを選ぶといいだろう。


 だが、上に書いたように、ノートPCのディスプレイサイズで見る限りであれば「中」設定であってもそこまで気にはならないため、購入店舗でベンチマークテストを動かしてもらうなどして確認してから選ぶと間違いない。


●TUFでもカスタマイズ機能は「ROG」同等


 ゲーミングノートPCの醍醐味(だいごみ)は基本性能の高さだけでなく、その性能をチューニングする機能や、RGBライティングのカスタマイズにもある。


 TUFシリーズであっても、ROGシリーズ同様に「Armoury Crate」がプリインストールされており、ここからさまざまな設定を確認、変更しながら自分だけのゲーミングノートPCにカスタマイズしていくことが可能だ。


 ホーム画面ではPC全体の仕様を一覧で確認するだけでなく、ワンクリックで動作モードの変更を行うことができる。


 例えばサイレントにすればCPUやGPUのブースト機能を抑制し、空冷ファンの回転数を落とし動かすことができるので、静かなカフェなどでゲーム以外の作業を行うといった使い方にも、TUF Gaming A16を活用できる。


 また、GPUパフォーマンスの再起動は必要になるが、こちらもワンクリックで複数のモードを切り替えることができる。


 もう少しゲームの画質設定を高くして快適に遊びたい、もう少しフレームレートが出てほしいなど、その「少し」を追い求める場合には、こちらで設定を変更してみるといいだろう。


 キーバックライトのRGBライティングの変更もArmoury Crateから変更が可能だ。ASUS製のゲーミングデバイスを始め「Aura Sync」対応をうたうデバイスを接続した場合は、こちらから一括してイルミネーションのカスタマイズを行うことも可能だ。


●PCでのゲームプレイに「ちょうどいい」が詰まった1台


 ノートPC向けの新たなGPUであるGeForce RTX 5060 Laptop GPUだが、いくつかのテストを通して筆者は「ノートPC向けのGPUとして、ちょうどいい性能」だと感じた。


 同じ「5060」でも、デスクトップ向けでは、最近のトレンドとしてWQHDや4Kといった高解像度のディスプレイに組み合わせられることも多く、そうした高解像度でゲームを遊ぶにはいささかパワー不足も否めない。


 しかし、ノートPCの画面サイズで「普段のPC作業も、そしてゲームも遊ぶ」となったとき、万人が見やすく使いやすい解像度はフルHDであり、その解像度いっぱいで満足にゲームを動かせる、GeFoce RTX 5060 Laptop GPUの性能はちょうどいいといえるだろう。


 また、TUF Gaming A16の仕様もちょうどいい。TUFシリーズらしく高負荷状態でも極端にパフォーマンスが落ちるようなこともなく熱への対策もバッチリだ。


 MILスペック準拠の頑丈なボディーも相まって、性能以外の部分でも安心して長く使えるだろう。


 価格もASUSの直販ECショップ「ASUS Store」で25万9800円と、30〜40万円台のゲーミングノートPCも増えてきた中ではお手頃で、この価格で重量級のゲームも十分に遊べる性能があるとなれば、ゲームコンソールからの乗り換え先や、今まで使っていたゲーミングPCからの買い替え先としても、予算を工面しやすい。


 質実剛健を売りにしたボディーと仕様の部分の華は少ないが、万人に向けた“ちょうどいい”ゲーミングノートPCとして、実によくまとまった1台だ。



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