7月10日、『運命の巻戻士』のTVアニメ化が決定した。アニメーション制作はボンズフィルム、監督は松本理恵が務めることが発表されており、スーパーティザーPVも公開されている。同作は創刊40年以上の歴史をもつ『月刊コロコロコミック』(小学館)で、史上初の快挙を達成した作品。本稿ではその面白さと斬新さについて、詳しく紹介していきたい。
同作の連載が始まったのは2022年。「世界一わかりやすくて熱いループ漫画」という謳い文句の通り、タイムリープをテーマとしている。
主人公のクロノは、過去に時間を巻き戻し、非業の死を遂げた人々を救う特殊機動隊「巻戻士」の1人だ。右眼に宿したタイムマシン「リトライアイ」を使って過去へとタイムリープし、事件解決のために何度もリトライを繰り返していく。
いかにも便利そうな能力だが、決定した未来を変えるのはそう簡単なことではない。新しい未来を創り出せる確率は「10万分の1」とされており、歴史の修正力のようなものが働いて同じ悲劇的な結末に向かってしまうからだ。
たとえば第0話では、クロノがショッピングモールの高層階から転落した少年を救う任務に挑戦。そこでまず少年に転落することを直接警告するも、信じてもらえず同じ事故が起きてしまう。次のリトライでは少年を拘束するが、警備員に咎められて失敗する……というように、安易な策では事故が起こる未来を変えられない。
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結局この任務で、クロノがリトライした回数は1,000回を超えていた。いかにして未来を変えるかという試行錯誤こそが、同作の大きな見どころとなっている。
なお「巻戻士」は時間を巻き戻せるものの、蓄積された疲労はなかったことにできない。だからこそそれを苦にせず、犠牲者を救うために地道で泥臭い努力を重ねるクロノの姿が胸を打つのだ。
同作は『月刊コロコロコミック』において熱烈な人気を獲得しており、史上初となる読者人気アンケート12カ月連続1位を達成。さらにYouTubeの「運命の巻戻士 公式チャンネル」は総再生回数5億回を突破するなど、破竹の勢いを記録している。
誰かを救うためにタイムリープを繰り返す漫画には、『サマータイムレンダ』や『僕だけがいない街』など数々の名作が存在する。その魅力といえば、緻密に張り巡らされた伏線と謎が謎を呼ぶ壮大なストーリー展開にあるだろう。しかし『運命の巻戻士』はまったく別のアプローチによって、斬新な物語を生み出している。
その斬新さは、誰でも理解できる分かりやすいストーリー構成にある。とくに序盤のエピソードでは1話完結型で、タイムリープの基本となる「時を巻き戻し、問題を解決して正解にたどり着く」ステップをシンプルに描き出している。
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最初に「コンビニ強盗から店員を救う」「無人島から隣の島までターゲットを脱出させる」といった単純明快な目的を提示。そこで立ちはだかるトラブルを1つずつ解決していき、最後には読者の意表を突く“正解ルート”へとたどり着く……。タイムリープものとしては破格の読みやすさだ。
それでいて単純なストーリーに終始するわけでもなく、悪の組織「クロックハンズ」との抗争を描いた長編は十分な読み応えがある。さらに物語の要所では、複雑なタイムパラドックスを扱うなど、子ども向け作品に留まらない要素も併せ持っている。
また、タイムリープ以外の特殊能力が登場することも大きな見どころ。熟練した巻戻士たちは、術者をスピードアップさせる「早送り」のような時間にまつわる能力をそれぞれ持っている。そして「クロックハンズ」のキャラクターたちも凶悪な能力を使いこなし、巻戻士を追い詰めていく。そこで高度な能力バトルが展開されるというわけだ。
その一方でどれだけ激しいバトルでも、グロテスクなシーンや他者を傷つける表現などは極力避けられている。万人がストレスなく楽しめる作風と言えるだろう。おそらくアニメ版も、親子で一緒に視聴できる作品になるのではないだろうか。
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