
中学受験では、子どもだけでなく親もまた、見えない戦いを抱えています。ある日、知人のママ友Hさん(40代)がインスタグラムで語っていたホンネを目にしてしまったJさん(50代)は、驚きとともに、中学受験という世界に潜む矛盾や葛藤を改めて感じました。表向きは「うちはそこまでしてない」と言いながら、裏では塾の特別コースに通い、平静を装っていたママ友Hさん。受験が終わったあとに知った発信は、受験の裏にあるリアルを物語っていました。
何気なく目にしたインスタのリールに…
50代の主婦・Jさんがその事実を知ったのは、子どもの中学受験が終わってしばらくたった頃のことでした。何気なく見ていたインスタグラムのリール動画に、知人のHさん(40代)が登場していたのです。顔こそスタンプで隠されていましたが、背景や服装、話し方ですぐにHさんだとわかりました。
Hさんは、塾の送迎時や近所で顔を合わせるママ友で、Jさんとは立ち話をする程度の関係でした。普段は「受験はなるようにしかならないよ〜」と笑いながら話す、穏やかで協調的な印象の人でした。子どもにはサッカーやピアノなどの習い事も無理なく続けさせていると語っており、どちらかといえば“余裕のある母”に見えていたのです。
ところが、インスタグラムに投稿されたリール動画では、そんなHさんがこう話していました。
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「受験は周りみんな敵なので、振り落としてなんぼだと思っています」
その瞬間、Jさんはスマホを持つ手が震えました。日常では決して見せなかった本音が、インスタグラムではあけすけに語られていたのです。そして、投稿の中でこんな話まで。
「特別講習に行かせるときはサッカーユニフォームを着せて、『今日はサッカーの練習だよ』ってことにしてるんです。他塾の特別授業に行くのを知られたくないから」
そのリアルすぎる言葉に、Jさんは目を疑いました。
“なるようにしかならない”…言葉の裏にあった思い
Jさんの息子も昨年、中学受験をするため志望校を目指して地道に努力する日々でしたが、「他の子を振り落とす」などという発想を抱いたことは一度もありませんでした。だからこそ、Hさんの言葉には衝撃を受けました。
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しかし、よくよく考えてみると、「なるようにしかならない」という言葉は、Hさんが自分に言い聞かせていたのかもしれないと思いました。本音では「どうしても勝ちたい」「上に行きたい」と思っている。でもその気持ちを人前では隠して、あくまで余裕がある母を演じる。受験は子どもだけの試練ではなく、親自身の感情との戦いでもあるのです。
カモフラージュ受験という情報戦の実態
今回のエピソードで印象的だったのが、「塾の特別クラスに行っていることを隠す」という行動です。まるでスパイ映画のようですが、実はこうした情報戦は受験界ではそれほど珍しいことではありません。
「どこの塾に通っているか」「どのコースを受講しているか」「どんな教材を使っているか」「春期講習や夏期講習には参加するのか」、こうした情報が漏れることで、周囲に志望校を明かすことになり、ライバルを増やすと考える保護者は少なくありません。競争が激化する中学受験では、些細な情報も勝敗を分けると信じられているからです。
受験は親の自尊心を映し出す鏡
中学受験の本質とは何でしょうか。学力を高め、志望校に合格すること? それとも、社会で生きていく力を育むこと? どちらも正解かもしれません。しかし、その裏には、親の見られ方や評価されたいという欲求が色濃く影を落としています。
Hさんの投稿を見て、Jさんが「ホンネだとしてもそれを発信してしまう度胸はすごい」と感じたのは、彼女の姿が極端であると同時に、どこか自分自身にも重なる部分があったからかもしれません。
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うちはそんなにやらせてないよと口では言いつつ、心のどこかでは「もっと頑張らせたほうがいいのでは」「このままでは出遅れるのでは」と焦っていた時期もありました。受験を通して試されているのは、子どもの学力だけでなく、親の自尊心や他者との比較からどれだけ自由でいられるかという、もっと深い課題なのかもしれません。
◇ ◇
あなたの周りにも裏の顔を持つ保護者はいましたか?
▼奈良県・40代 中1娘
ママ友が「うちは塾へは行かず通信にしてて、わからないところは父親が教えてるよ」と言っていたのに、実は他市まで遠征して有名塾の特訓講座に通っていたと、卒業後に別のママに聞きました。なんでそんなに隠してたの!?って衝撃でした。
▼大阪府・30代 中1息子
どこの塾に通ってるとか、どの模試を受けてるとか一切教えてくれなかったママ友。子どもの誕生日のSNS投稿に、超難関塾のテキストが映り込んでいて、「え…、あの塾だったの!?」。別の塾に行ってるのをずっと匂わせていたのに。
▼埼玉県・40代 小学3年息子
「中学受験なんて無理やり勉強させて子どもがかわいそう。うちは伸び伸び育てる!」とママ友に言われモヤモヤ。でもその子、実は公立中→超進学校狙いですでに小学校のうちから塾に通ってると聞いてビックリ。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)
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