冷凍スペースが足りない。そんな悩みを解決してくれる冷蔵庫が話題となっている。ニトリが2025年6月中旬に発売した「まんなか切替冷蔵庫」(6万9900円)だ。冷蔵室にも冷凍室にもなる「変温室」を搭載し、用途に応じて切り替えられる機能がウケている。
発売から1カ月間の売れ行きは好調で、前年に販売した同容量の冷蔵庫と比べて、売上高は3.8倍、販売数量は1.8倍に伸びたという。同商品の特徴と開発背景について、担当者に話を聞いた。
「まんなか切替冷蔵庫」は、2〜3人暮らしに適した271Lサイズで、冷蔵室が135L、冷凍室が100L。冷蔵室と冷凍室の間に約1.2個分の買い物かごに相当する36Lの「変温室」を設けている。変温室はプラス5度からマイナス18度まで1度刻みで温度設定が可能で、季節やライフスタイルに応じて冷蔵・冷凍を自由に切り替えられる。
変温室を冷凍設定にすれば、もともとの冷凍室と合わせて合計136Lの冷凍室容量となり、一般的な400〜450Lクラスの冷凍冷蔵庫に匹敵する容量となる。
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温度調整は冷蔵庫のドアに設置されたコントロールパネルで行い、ドアを開けずに操作できるため、省エネ効果も期待できる。微凍結(マイナス3〜0度)なら食品を凍らせずに鮮度を保ち、弱冷凍(マイナス5〜マイナス3度)なら肉や魚を解凍不要で包丁でカット可能。1度刻みの温度調整によって、幅広いニーズに応えている。
本体の奥行きは595ミリで、一般的なシステムキッチンの奥行き(650ミリ)より省スペースとなっており、限られた住環境でも圧迫感なく設置できる。マット仕様のホワイトとブラックの2色展開で、ニトリらしいシンプルなデザインにするなどインテリア性も重視した。
●半年間の短期開発で市場ニーズに対応
商品を開発したきっかけは、冷凍庫の容量が足りないという消費者からの声が高まったことだ。日本冷凍食品協会によると、2024年の冷凍食品消費額は前年比4.4%増の1兆3017億円と過去最高を更新し、消費量も292万トンと2年ぶりに増加するなど、冷凍食品の消費は拡大傾向にある。
ニトリの開発チームも市場の変化を実感していたという。「スーパーでも冷凍食品の数が増え続けており、チーム全体で共通認識を持っていた」と同社の担当者は振り返る。
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コロナ禍を経た生活様式の変化もあって在宅時間が増えたことや、物価高も続いていることから週末の作り置きや冷凍食品の買いだめが増加したほか、ふるさと納税の食品返礼品も冷凍庫の容量を圧迫する要因となっている。
そのような中、同社は2024年11月に企画を立ち上げ、同年12月から本格的な開発に着手。7月の夏のボーナス商戦を見据えたスケジュールで開発を進めた。
●まとめ買いと作り置きニーズに対応した点が好評
当初は、DINKS(子どものいない共働き)世帯をターゲットに設定していたが、商品開発と並行して実施したアンケートから、1人暮らしの若年層や子どもが巣立った後のシニア層からも好反応を得ていた。
アンケート結果から、消費者に訴求すべきポイントを絞り込んだほか、「まんなか切替冷蔵庫」というキャッチーな商品名とするなど、得られた回答を販売促進に活用した。
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実際に売り出してみると、年配層の購入も目立つなど、想定以上に幅広い層から好評を得ている。購入者からは、コンパクトながら400Lクラス相当の冷凍機能を実現した点を評価する声が多い。
利用シーンとしては、週末に食材をまとめ買いして変温室で冷蔵保存し、作り置き後は冷凍設定に切り替えて保存スペースを確保する使い方が多いという。そのほか、夏場のアイス大量購入や冷凍弁当サービスでの利用、子ども用に冷凍食品をストックするなど、季節や家族構成に応じた活用が広がっている。
●ファミリー向け商品とスマート家電の展開も
好調な売れ行きの一方で、改善要望も挙がっている。最も多いのがファミリー層から寄せられる「容量不足」で、「271Lは家族向けとしては小さい」という声が目立つほか、自動製氷機能を求める声も多い。
こうした要望を受け、ニトリでは今後、より大容量のファミリー向けモデルの開発を進める方針だ。同社の冷蔵庫ラインアップは、最大320Lまでしか展開していないが、400L以上の本格的なファミリー向け商品も視野に入れている。
ニトリは近年、家電事業を強化している。家電の売上高を全体の約1割にあたる1000億円に引き上げる目標を掲げ、全店で家電売り場を拡大し、ファミリー向け大型家電の独自開発を進める方針を示している。
また、これから需要が伸びると予想されるスマート家電への参入も検討しており、担当者は「手に取りやすい商品からスマート家電を広め、将来的には冷蔵庫にも搭載したい」と展望を語る。スマート家電の浸透が遅れている国内において、価格面なども含め、ニトリが貢献できる分野と位置付けている。
インテリア性と機能性を両立させた「低価格の家電」という独自戦略を進めるニトリ。今後の商品展開にも注目が集まる。
(カワブチカズキ)
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