
サマー2000シリーズの第3戦、GIII小倉記念(小倉・芝2000m)が7月20日に行なわれる。昨年は阪神競馬場の改修工事にともなって中京競馬場で行なわれたが、今年は本来の舞台に戻っての開催となる。
過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気は3勝、3着1回。「荒れる」傾向が強い夏のハンデ重賞のなかでは、比較的好成績を残していると言えるかもしれない。
とはいえ、絶対的な信頼を置くまでには至らず、波乱含みの一戦であることは間違いない。現に、3連単の配当はすべて万馬券。2020年には100万円超えの高額配当が飛び出している。
しかも今年は、従来の開催(8月中旬)から前倒しされて7月の開催。例年とは違う時期に行なわれることで、思わぬことが起こっておかしくない。そのうえ、今の小倉の馬場はやや特殊な状況にある。その点について、デイリー馬三郎の吉田順一記者が説明する。
「2週前に施行されたGIII北九州記念の時にも触れましたが、現在の小倉はオール野芝の時計勝負にはなっていません。開幕週はエアレーションの効果が大きく、2週目と3週目は降雨が少なかったことによる水分不足で、野芝が暑さによってへたってしまったことが要因のようです。
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こうした状態が一気に回復するには、ある程度まとまった雨が必要になりますが、水曜日にJRAの馬場造園課にうかがうと、『木曜日から土曜日にどれだけの雨量があるかによりますが、現在の芝を見ていると、(現状から)劇的によくなる、というのはどうでしょうか......。3〜4コーナーの芝は、少しはげて色も落ちています。今開催はずっとAコース使用ですし、急に変わることはないと思うんですが......』とのことでした。
となれば、今週も高速決着は見込めません。これまでの傾向をしっかりと踏まえて、流れと展開を味方にした馬が浮上する、と判断していいでしょう」
吉田記者は続けて、今年のレース展開についてこんな見解を示す。
「小倉記念は小回りコースらしく、3角から激しい攻防戦となる傾向があります。また、過去10年の連対馬20頭中、4コーナー7番手以降の馬が10頭とやや多めです。現在の馬場状態からして、今年もそういった傾向に変わりはないと見ます。
実際、今年のレースでは、逃げて結果を残すスズカダブル(牡5歳)や前づけのナムラエイハブ(牡4歳)、好位につけてしぶとさを生かしたいニホンピロキーフ(牡5歳)やリカンカブール(せん6歳)らが早めに踏んでいく形が想定され、斤量を背負う有力勢も瞬発力より持続力勝負に持ち込みたい馬のほうが多く、それらに続いて3角すぎから動いていく、という見立て。
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つまり、ハンデ58kgのディープモンスター(牡7歳)をはじめ、ハンデ57kgのハピ(牡6歳)、ハンデ56kgのメリオーレム(牡4歳)といった人気どころも、外から早めに動いていって前をねじ伏せにいくことが予想され、例年どおり3角すぎから激しい展開になりそうです」
では、そういった展開にあって、台頭するのはどんなタイプなのか。吉田記者は「有力馬の仕掛けどころによって、好走するタイプは変わってきそう」と言って、今の馬場状態を加味しつつ、2頭の伏兵候補をピックアップした。
1頭目は、ショウナンアデイブ(牡6歳)だ。
「トモ腰の強化とともに、速い脚が使えるようになってきました。ムラ駆け傾向ですが、2走前には初の小倉となるGIII小倉大賞典(2月23日/小倉・芝1800m)で2着と奮闘。今までよりもポジションを取っていきながら、勝負どころから動かして最後までしっかりと伸びきる走りを見せました。
好走のポイントは最後まで真面目に走れるかどうかですが、今週は落ちついた状態にあり、集中力が高かった攻め気配からも心配はなさそうです。ハンデも手頃な56kg。鞍上も、有力馬の動きを見ながら内にロスなくエスコートするのが得意な岩田康誠騎手。一発の魅力は十分です」
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吉田記者が推奨するもう1頭は、「今週の追い切りで躍動感たっぷりの動きを披露した」というニホンピロキーフだ。
「同馬は腹袋があり、少し前が強い体型。前々で運んで、粘り強さを生かしていく形を得意とします。小倉は水が合うのか、過去4戦3勝と好相性なのも強調材料です。
体型や脚元、走法からして、スローペースの瞬発力勝負は苦手。適度に引っ張られる流れで、後続の有力馬が来る前に早め、早めの競馬ができれば、56kgというハンデを最大限に生かせるのではないでしょうか」
夏の小倉開催は今週でフィナーレ。ここに挙げた2頭が最後に大きな花火を打ち上げるのか、注目である。