
【写真】今年40歳とは信じられない若々しさ! ウエンツ瑛士、撮りおろしショット
◆初共演の奈緒に強い信頼「優しく、愛にあふれていて、厳しさも持っている」
話題となったドキュメンタリー映画を舞台化する本作。原案となった『War Bride 91歳の戦争花嫁』は、2022年12月にTBSで放送され、翌年3月から始まったTBSドキュメンタリー映画祭で上映、今年6月にフランス・パリで行われた日本のドキュメンタリー映画祭「un petit air du japon 2025」にも出品された作品だ。第二次世界大戦後、連合国軍占領下の日本に駐留していた兵士と結婚して兵士の国へ渡った実在の“War Bride(戦争花嫁)”桂子と、夫・フランク・ハーンが紡いだ愛と絆を描く。
主演の奈緒は今もなおアメリカで生活している桂子さんのもとを訪れ、これまでの人生やフランクについて話を聞き役作りに励んだ。そんな奈緒と初共演となるウエンツは、大きな包容力で主人公を包み込む夫フランクを演じる。
――本作出演のお話を聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?
ウエンツ:“戦争花嫁”という言葉は、最初何も知らずに言葉だけを受け取った時には、きっと悲しい言葉なんだろうなという第一印象がありました。
調べてみると、今回のようなアメリカの話だけじゃなくて世界中にいらっしゃって。戦争花嫁と呼ばれた方々の中には、それをポジティブな意味合いに変えようとしている方もいれば、その言葉をまったく聞きたくないという方たちもいらっしゃる。僕らが歴史として知る言葉と、それを実際に投げかけられていた人たちの中では印象も違うんですよね。本作を通してその事実もしっかりとお伝えしていきたいなと思いますし、この先この言葉をなくすことが一番の目的なのか、ポジティブな意味合いとして変えていくのか、すごく難しいところではあると思うんですけど、何かしらの答えや考えをお客様に提示できるのではないかなと思いました。
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――フランクを演じるにあたり、特に意識していることはどんなことでしょうか?
ウエンツ:僕がフランクさんを演じるにあたって、奈緒さんが実際に奥さんである桂子さんに会われていて、そこで感じたことをそのまま稽古場に持ってきて横にいるということがとても大きいなと思うんです。
桂子さんがお話ししていたフランクさんについて奈緒さんからたくさん伺いました。桂子さんは本当にフランクさんがしゃべっているかのようにフランクさんの言葉を紡ぐんですって。絶対フランクさんってそう言うんだろうなって確信を得られるようなしゃべり方をされると伺って、それだけフランクさんの言葉が桂子さんの中に残っているんだなと感じました。
フランクさんを演じるにあたっては、おふたりの夫婦間が密であったということと、愛が疑う余地もなくゆるぎないものだったということが、まず一番大事なんじゃないかなと思います。その上で、フランクさんのお茶目なところやさみしがり屋なところを出していけたらなと思っています。
――奈緒さんとは初共演ですが、印象はいかがですか?
ウエンツ:お会いする前にイメージしていたそのままの方でした。優しくて、愛にあふれていて、それに付随する厳しさをしっかり持っていらっしゃる方ですね。
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◆今年40歳に「30歳のころより今のほうが活力があふれている」
――2018年から1年半ロンドンに留学され、帰国後は積極的に舞台にチャレンジされている印象があります。ウエンツさんが感じられる舞台の魅力というのはどういうところにありますか?
ウエンツ:お客さんとのコミュニケーションを直に取れることでしょうか。ライブやファンクラブのイベントをやると当然僕を知っている方たちがたくさん来てくれるんですけど、舞台をやると作品のファンだったり共演者のファンの方たちだったりといろんな方たちと触れ合える機会ができるんですね。それがすごく楽しみなことです。
一方、1年に1回、自分を追い込む場という感覚もあります。稽古期間も含めると2ヵ月、3ヵ月近くになりますけど、全身でその人物を演じる。そしてそのキャラクターでありながらも、その瞬間瞬間の空気に合わせてセリフを発して動いていくという瞬発力も必要になる。毎日違うことが起こるという中で日々の鍛錬ができる場所でもありますね。
――今年10月に40歳を迎えられるとお聞きし驚きました。30代はどんな10年でしたか?
ウエンツ:30歳になりたての時は、2作目のミュージカルの稽古場だったんですよね。お祝いしてもらったことをすごく覚えています。その数年後にはイギリスに行き、帰ってきたらその月がもうコロナ禍の始まりで。イギリスでまだ受けている途中だったオーディションもなくなったし、帰国して「イギリスでこういうことをやってきました!」とお見せする場にしようと考えていた舞台も全部なくなってしまいました。いろんな人に「帰ってきました」とご挨拶もできない期間も2年くらいあって…。そういう感じの、割とこの期間はこうでしたということを明確にお伝えできる10年だったなと思います。
20代の時は地続きというか走ってきたっていう感覚があったんですけど、30代になってからは、走り出すのも勢いというよりも自分で「走る!」と決めて走り出している感じでしたね。なので、止められた時はきつくって。それを何回も経験したので脚力はついたかなと思いますし、30歳のころより今のほうが活力があふれている気がします。
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ウエンツ:最初のころは不安もあったと思うんです。1人でどうやっていくのかなと。でも、離れても彼が頑張っている姿を見るし、それはユニットを組んでいた時と変わらずに「あいつが頑張っているから俺も頑張ろう」という気持ちになれました。同じ会社なので彼が今何に取り組んでいるとか情報も入ってきますしね。底辺のところでつながっているなという感覚はありました。
――これからどんな40代を過ごしたいという思いをお持ちですか?
ウエンツ:40代は20歳からのスタートくらいの感覚でいます。もう1回、ウエンツ瑛士という人物がどういう人間で、エンタメの世界に長く身を置かせてもらっている自分としてどんな貢献ができるだろうということを考え、デビューのころと同じくらいの気持ちで目の前のことに取り組んでいこうと。ここまで経験を積んで、こう年を重ねてきたからこうしようというのとは真逆ですね。もう1回新しくという感じです。
――長いキャリアの中でのターニングポイントを挙げるとすると?
ウエンツ:やっぱりWaTが一番大きいんじゃないですかね。歌はすごく好きだったんですけど、やっぱり自分で分かるじゃないですか、芸能界で歌をやれるやれないって。才能ある人をたくさん見ているし、自分に足りないこともたくさん分かるし。
そういう中で、奇跡的な出会いを(小池)徹平として、そしてデビューすることができて、たくさんの人に愛してもらった。僕としてもひとつ違う流れができたなという大きな瞬間だったんですよね。
――最後に、本作に絡めてウエンツさんの結婚観を教えていただけますか?
ウエンツ:20歳のころと比べたらいろいろ考えることは変わっていますね。桂子さんとフランクさんを見ても、もちろん夫婦としてすごく素敵だなと思いますし、このおふたりが、自分たちの家族だけじゃなく、相手の家族やご近所もそうだし、こういう物語になったことでまったく知らない人すら幸せにしている。そういう意味では、結婚の持つ力というものを改めて感じています。
もし夫婦になれるということがあるならば、年も年ですし、周りの人たちを、まずは自分が大切にしている人や相手の大切にしている人も幸せにできるような、そういう輪を広げていくことをしっかりできたらいいなと思っています。
(取材・文:佐藤鷹飛 写真:高野広美)
舞台『WAR BRIDE −アメリカと日本の架け橋 桂子・ハーン−』は、東京・よみうり大手町ホールにて8月5〜27日、兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて9月6・7日、福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホールにて9月13日・14日上演。