乳がん罹患率は40代〜60代が増加、「もしも」の場合を解決する医療費と保険の“心配事”

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2025年07月21日 11:00  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

知らないと貰えないものも!乳がんとお金

「乳がんは、がんの性質や進行度に合わせて治療が行われるので、早期発見だと早く治療が終わりお金もさほどかからずに済む、とも言い切れないのが現状です」

早期発見だからといって医療費が安いわけではない

 そう話すのは、看護師でありファイナンシャルプランナーでもある黒田ちはるさん。

「乳がんは性質によっていくつかのタイプに分類されます。化学療法を3か月行ったらその後は経過観察、ということもあれば、早期発見の乳がんでも、術前に化学療法をしてから手術を行い、その後はホルモン療法に移行するなど1年以上治療が続く場合もあります。つまり、それだけお金もかかるということです」(黒田さん、以下同)

 とはいうものの、検査をきちんと行い早期発見するに越したことはない。

「乳がんに限らず、がんは早く見つかったほうが治療の選択肢が広がりますし、一概にはいえませんが、治療期間が短くて済む傾向があります」

自分の高額療養費制度の限度額を知る

「乳がんの治療には高額な医療費がかかる」というイメージを持つ人は少なくない。

「実際、『医療費を払い続けられるだろうか』と不安になる患者さんもいらっしゃいます。そうした患者さんには、日本には医療費が高額にならないような仕組みがあることをお伝えしています」

 その仕組みが健康保険制度(公的医療保険)だ。

「この制度によって、患者さんの医療費負担は1〜3割で、69歳以下の就労世代の方は3割負担です。例えば、乳がんの治療で総額100万円の医療費がかかったとしても、窓口で支払うのは30万円となります」(黒田さん)

 では、手術や放射線治療、化学療法といった高額な印象がある治療を受けた場合はどうなるのだろうか。

「がんの標準治療とは、現在の治療において科学的根拠に基づき、最も効果が期待でき、安全性が確認されている治療のことです。標準治療のほとんどが健康保険の適用となります。手術や化学療法といった治療も標準治療であれば健康保険が適用されますから、突然、大きなお金がかかる可能性は極めて低いです」

 健康保険の適用で100万円の医療費の支払いが30万円になった場合、さらに負担を減らす仕組みがある。それが「高額療養費制度」だ。

「健康保険には『高額療養費制度』があり、自己負担額には上限が設けられています。所得によって設定された1か月あたりの自己負担額の上限を超えた場合は、払いすぎた金額が後日、戻ってきます」

 高額療養費制度の自己負担額は収入によって変わる。

「年収が約370万円から770万円の方の自己負担額は8万円台ですが、年収が約770万円以上になると自己負担額は16万円台になります。つまり、同じ治療を受けても自己負担額が倍近くになることもあるのです。まずはご自身の自己負担限度額を知っておきましょう」

 また、加入している健康保険の種類によっては上乗せ給付が出るケースもある。

「健康保険組合や共済などは、『付加給付』『一部負担金払戻金』といった名称で、後日、お金が支給されるものも。自動で手続きしてもらえることが多いものの、ご自身での手続きが必要な場合も。ご自分が加入している健康保険組合の要項を確認しておくことをおすすめします」

自分の社会保険はがん保険並みに強い

 扶養に入っている人は、夫の年収で高額療養費制度の自己負担限度額が変わる。

「扶養に入っている方は、自分の収入がないのに医療費だけが一気に上がり、家計の負担が増えてしまうということになります」(黒田さん)

 扶養の範囲内で働く女性は多いが、病気という側面から見ると必ずしも得策だとはいえないようだ。

「扶養を外れてしまうと社会保険料や税金などの負担が増加するため、損をしたような気持ちになってしまうのだと思います。ただ、自分の社会保険があるというのは、病気にかかったとき非常に心強いものであることを知っていただきたいと思っています」

 社会保険に加入していると他にもメリットが。

「夫のほうが収入が高い場合、自分の収入を基準に高額療養費制度を利用すれば医療費を抑えられます。また病気やケガなどで仕事ができず、十分な報酬を得られない場合に生活を保障する『傷病手当金』という制度も。審査に通れば給料のおよそ3分の2が受け取れます。これらをふまえて、元気なうちの働き方を考えてみては」

 現在の乳がん治療は、主に通院で放射線治療や抗がん剤治療を行うことが多いという。「治療中は、医療費以外にも、日々の通院費や食費など、なにかとお金がかかります。健康保険、社会保険以外にも、診断一時金があったり、通院費なども給付されるがん保険を選んで入っておくのも手ですね」

 しかし、保険に関しては、次のような注意が必要だ。

「がんに一度かかると、保険料が上がります。また入り直すことも難しい場合が多く、継続の支払いが負担となってくることも。がん保険の中には、がんになると保険料の払い込みが免除されるタイプのものもあります。特約で少しお金がかかるとしても、保険料の払い込み免除の設定をしておくと、後々、金銭的な負担が軽減するのではないかと思います」

乳がんとお金 実話(T・Nさん(62歳))

「49歳のとき、右胸にステージ2bの乳がんが見つかりました。私の乳がんは全摘しか治療の選択肢がなく、全摘手術を受けました。幸いにも抗がん剤治療などは必要なく、術後はホルモン療法のみとなりました。本来なら治療期間が短く、お金も少なくて済んだと思います。私は乳房再建手術を選択したのですが、今ほど再建手術が一般的ではなかったこともありトラブル続きでした。

 数回ほど手術や治療を行い、乳がんが見つかってから再建手術が終わって退院するまで約2年かかりました。医療費は300万円くらいかかったように思います。ただ、医療費は高額療養費制度とがん保険ですべてまかなうことができました。ひとつだけ後悔しているのは、がん保険に保険料免除の特約をつけなかったこと。当初の保険料は月3000円程度でしたが、乳がんを患った今は約1万2000円。私はもう新しい保険には加入できませんし、月々数百円の特約をつけていればよかったと思っています」

乳がんと告知を受けたらやるべきこと

□高額療養費制度の適用限度額認定証を取得
□加入している保険の内容の確認
□勤務先や組合の保険の内容の確認
□自治体の補助を確認
□就労規則を確認
□仕事関係への連絡

一般社団法人患者会計サポート協会代表理事。看護師・黒田ちはるさん。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。CFP(R)認定者。看護師としてがん患者や家族と関わる中で経済的な負担が治療や生活に及ぼす影響を痛感し、FPとしての活動を開始。著書に『【図解】医療費・仕事・公的支援の悩みが解決する がんとお金の話』など。

<取材・文/熊谷あづさ>

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