
会社員のAさんは、数年前から本業の合間を縫って、趣味で制作したハンドメイド作品をネット販売していました。2年ほど前から軌道に乗り、多くの人の目に留まるようになってきています。売上も年間で100万円を超えるほどとなり、得られる副収入のおかげでAさんの心は満たされていました。
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一方で、Aさんは「この程度の所得なら、わざわざ確定申告しなくても大丈夫だろう」と考えていました。「税務署が個人の小さな金の動きまで把握できるはずがない」という、根拠のない自信を抱いていたのです。
そんなある日、Aさんの元に見慣れない一通の封筒が届きました。封を開けると「所得税の申告についてのお尋ね」と題された書類が現れました。書類を見たAさんは、血の気が引いていくのが分かりました。
Aさんのように副業の収入を申告していなければ、どのようなペナルティが課せられるのでしょうか。正木税理士事務所の正木由紀さんに話を聞きました。
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税務署には個人の所得を把握するための仕組みあり!
ー確定申告が必要になる売り上げはどれくらいですか?
会社員などの給与所得者の場合、原則として副業による年間の「所得」が20万円を超える場合に確定申告が必要です。重要なのは、売上(収入)そのものではなく、収入から必要経費(材料費、送料、通信費など)を差し引いた「所得」で判断するという点です。
例えば、年間の売上が100万円でも、経費が85万円かかっていれば所得は15万円となり、この基準だけで見れば所得税の確定申告は不要です。
ただし、所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要な点には注意しましょう。また、副業の報酬から源泉徴収(天引き)されている場合は、確定申告をすることで払いすぎた税金が戻ってくる可能性はあります。
ー申告しなかった場合、どのようなペナルティがありますか
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申告漏れが発覚した場合、まず本来納めるべきだった所得税や住民税を全額納める必要があります。これに加えて、ペナルティ(加算税・延滞税)が上乗せされます。
無申告加算税は、期限内に確定申告をしなかったことに対するペナルティで、原則として、納付すべき税額に対して15%(50万円を超える部分は20%)が課されます。税務署の調査が入る前に自主的に申告すれば、5%に軽減される場合があります。
延滞税は、法定納期限(通常は3月15日)までに税金を納めなかったことに対する利息のようなペナルティです。また、意図的に売上を隠したり、経費を偽装したりするなど、事実を隠蔽し悪質であると判断された場合には、無申告加算税に代わって重加算税が課せられます。税率は最大で40%です。
ー無申告はどれくらいの確率でばれるのでしょうか
具体的な確率を示すデータはありませんが、税務署には個人の所得を把握するためのさまざまな仕組みがあるため、発覚しないと思っていると痛い目に合うでしょう。ばれる理由としては、支払調書、銀行口座の動き、税務署・国税庁の調査、第三者からの情報提供などが挙げられます。
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実際に、YouTube動画を活用した副業をしていた男性が、確定申告をしていなかったとして、税務調査を受けた事例があります。約3600万円の報酬を得ていたにもかからず、無申告だったため、重加算税を含む約700万円を追徴課税されています。
税務署は事前に取引記録や銀行口座の情報を入手しているため、「知らなかった」という言い訳は通用しません。もし申告漏れに気づいた場合は、税務調査の連絡が来る前に、一日でも早く専門家である税理士に相談しましょう。
◆正木由紀(まさき・ゆき)/税理士 10年以上の税理士事務所勤務を経て令和5年1月に独立。これまで数多くの法人・個人の税務を担当。現在は、社労士や司法書士ともチームを組み、「クライアントの生活をより充実したものに」をモットーに活動している。私生活では2児の母として子育てに奮闘中。
(まいどなニュース特約・八幡 康二)
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