2025年参院選 自民党敗北と新興保守勢力の躍進が示すもの 国民感情の変化は政治に大きな影響

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2025年07月21日 20:50  まいどなニュース

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国会議事堂(maroke/adobe.stock.com)

2025年7月の参議院選挙は、日本の政治地図を大きく塗り替える結果となった。長年日本の政治を牽引してきた自民党が敗北し、参政党をはじめとする新興保守勢力が予想外の躍進を遂げた。この現象の背景には、国内の政治的不満、国際的な安全保障環境の変化、そして経済的・社会的要因が複雑に絡み合っている。

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自民党への不満と保守層の分裂

自民党は日本の保守勢力を代表する政党として、長年にわたり政権を維持してきた。しかし、その長期政権は国民の間に不満を蓄積させる要因ともなった。経済停滞、格差拡大、コロナ禍後の復興の遅れなど、国民が直面する課題に対する自民党の対応は、多くの有権者にとって十分とは映らなかった。

特に、保守層の間では、自民党が伝統的な価値観や国家主義を十分に体現していないとの批判が高まった。この不満が、新興保守勢力、特に参政党のような新顔への支持の流れを生んだ。

参政党は、明確なナショナリズムや反グローバル化のメッセージを打ち出し、従来の自民党支持層の一部を取り込むことに成功した。彼らの訴求力は、自民党の「安定」に対する反発と、変化を求める保守層の期待に支えられたと言えるだろう。 

安全保障環境の緊迫とナショナリズムの台頭

日本を取り巻く国際環境の変化も、新興保守勢力の躍進に大きく影響した。近年、中国の対外的な覇権拡大や台湾海峡を巡る軍事的緊張、北朝鮮の核ミサイル開発、ロシアと北朝鮮の軍事協力の強化など、東アジアの安全保障環境は急速に悪化している。

これらの脅威は、日本国民の間に「自分の国は自分で守るべきだ」という意識を強めた。さらに、2025年に再びトランプ政権が誕生したことで、米国の内向き志向が顕著になり、日米同盟への信頼が揺らいでいる。

「米国は本当に日本を守るのか」という疑問が広がり、ナショナリズムや自主防衛を訴える声が強まった。参政党などの新興保守勢力は、このような国民感情を巧みに取り込み、「日本ファースト」を掲げることで支持を拡大した。彼らの主張は、従来の自民党の親米路線とは一線を画し、より独立志向の保守層に訴求した。

経済的衰退と外国人への排斥感情

国内では、経済的・社会的な不満が保守勢力の台頭を後押しした。日本経済は、かつての輝きを失い、世界における競争力の低下が顕著である。円安の進行や世界的な物価高により、実質賃金は下落し続け、国民の生活は厳しさを増している。

かつて経済大国としての自信を誇った日本人は、現在の経済的停滞に苛立ちを感じている。この不満は、外国人労働者や移民への反発として表面化するケースも見られる。

日本に住む外国人の数は増加傾向にあるが、一部で「外国人に仕事が奪われている」といった根拠のない危機感が広がり、ゼノフォビア(外国人嫌悪)や排斥主義的な動きが台頭している。新興保守勢力は、このような感情を背景に、「日本人のための日本」を訴えることで支持を集めた。特に、若年層や経済的に不安定な層の間で、こうしたメッセージが共感を呼んだ。

新たな政治潮流の胎動

2025年7月の参院選における自民党の敗北と新興保守勢力の躍進は、日本の政治が新たな局面を迎えていることを示している。長年の自民党政権への不満、国際環境の緊迫によるナショナリズムの高揚、そして経済的・社会的危機感が、新興勢力の台頭を後押しした。

この動きは単なる一過性の現象ではない。保守層の分裂や国民感情の変化は、今後の日本の政治に大きな影響を与える可能性がある。自民党は、保守層の信頼を取り戻すための新たな戦略を模索する必要があるだろう。一方、新興保守勢力は、感情的な訴求を超え、具体的な政策で支持を維持できるかが問われる。日本の政治は、国内外の複雑な課題に直面しながら、新たな均衡点を見出そうとしている。

◆和田大樹(わだ・だいじゅ)外交・安全保障研究者 株式会社 Strategic Intelligence 代表取締役 CEO、一般社団法人日本カウンターインテリジェンス協会理事、清和大学講師などを兼務。研究分野としては、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研究者である一方、実務家として海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務(情報提供、助言、セミナーなど)を行っている。

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  • 安倍は自民党が保守政党であると宣言しながら選挙で圧勝してきた。岸田から石破へと左傾化して岩盤支持層なはずの保守票が他党へ流れてギリ過半数割れ。今も昔も票を取れるのは保守ということ。
    • イイネ!7
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