<巨人6−5阪神>◇21日◇東京ドーム
25年は「メークロマン」を−。3点ビハインドの7回1死一、三塁から巨人リチャード内野手(26)が左中間へ起死回生の同点3ランを放った。“ロマン砲”の一打でよみがえったチームは、9回2死満塁から吉川尚輝内野手(30)がサヨナラ打。最大5点差をひっくり返し、前半戦ラストゲームを白星で飾った。首位阪神とは10ゲーム差。リーグ連覇への道は険しいが、26日からの後半戦に向け一筋の光が見えた。
◇ ◇ ◇
“ロマン砲”が、もがくチームに希望をもたらした。7回1死一、三塁。巨人リチャードは千載一遇のチャンスに「こんないい流れ、今日はもう来ないな」とバットを短く持って打席に入った。「ゲッツーは打ちたくなかった」。阪神2番手ネルソンの低めチェンジアップをうまく拾うと、打球は美しい放物線を描いた。左中間への同点3ランとなり、雄たけびを上げながらガッツポーズ。「うわーやったなー」と、自身初めての東京ドームのお立ち台をかみしめた。
誰もがロマンあふれる一打を渇望していた。6月12日ソフトバンク戦(みずほペイペイドーム)以来のスタメン出場。「ホームラン以外の打席は反省するところが多い」と振り返るように、2打席目までは凡退していた。代打も考えられる状況で、阿部監督は「なかなかホームランが出ない打線。冗談で『宝くじが当たったら』って言ってたけど、(バットに)当たったらホームランにできる力を持っている」とリチャードに託し、その期待に満点回答で応えた。
|
|
ファンの必死な思いが届いた同点劇でもあった。右翼席を埋めた巨人の応援団は、7回先頭佐々木の打席からチャンステーマ「Gフレア」を演奏。すると、打線がつながった。一挙5得点の猛攻。4万2000人超で膨れ上がった球場が、興奮に揺れた。リチャードも「打った瞬間の歓声がすごかったので、その振動でボールも伸びたのかな」と感謝だ。
1度つかんだ流れは離さない。同点のまま迎えた9回は、2死満塁から吉川が中前へサヨナラ打。チーム全員の執念で勝利をもぎ取り、球宴前最後の試合を白星で締めた。とはいえ、首位阪神とは10ゲーム差。指揮官も「(逆転優勝は)現実的には厳しい」と、置かれている立場は理解している。一方で「野球は何が起きるか分からない」と奇跡を信じる。簡単に追いつけるゲーム差ではないが、この日のようにチーム一丸の試合が続けば、96年の「メークドラマ」ならぬ「メークロマン」も−。“ロマン砲”が描いたアーチに、大逆転優勝への夢を見た。【水谷京裕】
<巨人の過去の逆転V>
◆メークドラマ(96年) 首位広島に最大11・5ゲーム差をつけられるも、7月から13勝5敗と猛追。広島の失速もあり、8月20日に単独首位に。8月も19勝7敗と加速し、10月6日に優勝。2桁ゲーム差をひっくり返して優勝はセ・リーグ初だった。8月には長嶋監督が「まだまだ分からない。メークドラマを演じてみせますよ」と予言し、この言葉は同年の流行語大賞に選ばれた。
◆メークレジェンド(08年) 球団初の開幕5連敗と序盤につまずき、首位阪神と最大13ゲーム差をつけられ、7月中に阪神に優勝マジックが点灯。しかし、北京五輪での中断を境に阪神が失速。巨人は9月に12連勝し、同21日に同率ながら首位に。10月8日に初めて単独首位に立つと、同10日に優勝。13ゲーム差からの逆転Vはセ・リーグ史上最大だった。
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 Nikkan Sports News. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。