“壊れていない”は通用しない 旧式スマホに迫る“Xデー”とは?

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2025年07月22日 07:21  ITmediaエンタープライズ

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上記のアプリはiOS 16(iPhone 8)に非対応のため「このデバイスには対応していません」と表示されインストールもできない(出典:筆者のスマホのApp Store)《クリックで拡大》

 3年前の話です。非常に安かったので中古の「iPhone 8」を購入しました。“8”となると、発売は2017年で、購入時点で既に5年が経過したモデルです。「iOS」の提供は16でストップし、現在はセキュリティリリースのみが提供されている状況です。


【画像】旧式スマホに迫る“Xデー”に備えよう【全1枚】


 子どもに動画を見せられればいい程度の考えで購入したもので、フル活用しようにもOSの限界が見えていたので、格安ならば使い捨てでよいと思った次第です。とはいえ購入して数年で使えなくなるというのは、なかなか受け入れられない世代も多いように思えます。


●中古デジタルガジェットに待ち受ける強制終了へのタイムリミット


 先日、SNSで「スマホのアプリが突然利用できなくなった」というポストを見ました。端末は8よりさらに昔の「iPhone 7」。7と8には大きな隔たりがあり、iOSも15までしか使えません。そうなると、OSのセキュリティアップデートだけでなく、既に幾つかのアプリでは未対応として、インストールできない/起動できないという状況にあります。


 スマホはライフラインの一つです。そのためスマホでしかできないことがあれば、それが生活に影響を与えることとなります。アプリ/OSが対応できなくなることは、該当の利用者にとっては大変な問題になります。


 最新の端末は従来と比較して高くなっており、今では中古端末を購入することも珍しくなくなりました。買ったばかりの中古端末もサポート期限という意味では新品よりも短い期間で打ち切られます。


 そのため製品の物理的な寿命よりも先に、ソフトウェアやOSの“寿命”、つまりサポート終了期間の方が先に来てしまう問題があります。Appleの製品はそれでも長期間しっかり面倒を見てくれます。しかしOSのサポート期間は限りがあり、セキュリティアップデートが提供されていても、アプリそのものがサポート対象から外れることもあるわけです。


 筆者のiPhone 8ももはや本格的に活用できる端末ではなくなっています。この点においては、中古端末を購入する人もある程度割り切っておかねばならないと思っています。


●サポートだってただじゃない 意外と目がいかない開発側の人的リソース


 OSのベンダーやソフトウェアのベンダーがサポートを打ち切ることに対し、非難をする人もいるかもしれません。しかしこれも難しい話で、基本的にはセキュリティの面でも最新のOSにアップグレードし、既知の脆弱(ぜいじゃく)性をなくすことが重要です。加えて、古いバージョンでも動くかどうかのテストを繰り返していかなければならないことを考えると、複数のバージョンでサポートし続けることは、ベンダーにとっては人的リソースを投資し続けなければならないことです。


 それに、OSベンダーがサポートを打ち切ってしまえば、ソフトウェアベンダー側がいくら頑張っても、関連する開発ツールもサポートが切れてしまうので、開発者がアプリを作ることすらできなくなります。もはや努力では対応できないことだと考えておく必要があるでしょう。


 このコラムを読んでいただけている方であれば、ここまでの内容は納得してもらえるはずです。問題は、もはや“ガラケー”は売っていないため、スマホを活用し始めている、親世代かもしれません。しかしこれまで身の回りのものを大事に扱ってきた世代は、物理的に壊れなければスマホも使い続けられると思っているはずです。ここは、皆さん家族が説得し、定期的に新しいものに交換していかなければならないでしょう。


 筆者は先日、親のスマホを買い替える手伝いをしました。ある程度セキュリティの話も理解してもらえていたのが幸いし、無事に乗り越えましたが、それはある意味ラッキーだったと感じます。


 「今のものでも十分に使える」「機種変更でデータが消えるかもしれない」と不安になる親を、無理やり機種変更するのは難しそうです。この点についてはいい例え話ですとか、納得してもらえるストーリーがほしいとも思いました。


●来るべき“Xデー”に備えよう


 皆さんも何となくどこかで聞いたことがあるかもしれませんが、実は同じようなことがスマホだけでなく、PCにも降りかかってきます。「Windows 10」が2025年10月14日(米国時間)をもってサポート終了になるのです。


 実はひっそりと「Windows 11 Version 23H2」も、2025年11月にサポートが切れます。筆者が持っていたPCはWindows 11に対応していたものの、23H2以上にアップデートできないことが分かり、サポート切れになることが判明しました。


 わが家の端末も幾つか該当しており、先日、重い腰を上げてそこに「Linux」をインストールしてみました。さすがに万人にはお勧めできない対応方法です。ソフトウェアのサポートが切れた後でも別のOSを入れられるようなルートが用意されることも必要だと思いますが、スマホというライフラインを、新品が買えないために使えなくなる人をどう救うかに関しては、ITでの解決策というよりも福祉の視点からの何かが必要だと思っています。


 加えて、多種多様なバージョンのメンテナンスよりもシンプルでセキュリティが確保できる、最新バージョンへのアップデートこそ、社会全体が担うコストとして最も合理的です。


 全てのOSやアプリのバージョンは最新にしておくのは基本として、特に忘れがちなのはブロードバンドルーターです。こちらもアップデートしつつ、数年おきに買い替えるようにしましょう。親世代のスマホの機種変更時に、いろいろとチェックしてみてください。


筆者紹介:宮田健(フリーライター)


@IT記者を経て、現在はセキュリティに関するフリーライターとして活動する。エンタープライズ分野におけるセキュリティを追いかけつつ、普通の人にも興味を持ってもらえるためにはどうしたらいいか、日々模索を続けている。



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