女子バレー日本代表にネーションズリーグで浸透したアクバシュ監督のスタイル 泥臭く拾い、攻め続ける

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2025年07月23日 07:10  webスポルティーバ

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【ボールを見るのではなく、常に食らいつく】

 女子バレーボール日本代表は7月13日のブラジル戦をもってネーションズリーグの予選ラウンド全日程を終了し、9勝3敗の3位でファイナルラウンド進出を果たした。フェルハト・アクバシュ新監督体制の女子日本代表にとって初陣となるこの大会。目標の表彰台へ、まずは第一関門をクリア、といったところだ。

 予選ラウンドの戦いぶりを振り返ると、今季から指揮を執るアクバシュ監督のスタイルが随所で体現されていた。

 そのひとつがアグレッシブさ。アクバシュ監督は常に"攻めること"を選手たちに促してきた。国際大会では否応なしに日本以上の高さを備えた相手と戦わなければならないが、そこに対して「自分たちから攻めていくこと。アタックはもちろん、しっかりとサーブで崩す意識を持って、全員が攻める気持ちでプレーできていると感じます」とキャプテンの石川真佑(ノヴァーラ/イタリア)は語る。

 それはオフェンス面やサーブにかぎった話ではなく、ディフェンスに関しても同じこと。アクバシュ監督はフロアディフェンスに際して「ノータッチ」、つまり触らずしてボールをコートに落とすことをよしとしない。石川は言う。

「『ボールを見るのではなく、常に食らいつくように』と、監督から言われていますし、全員が意識して取り組めています」

 試合でも、選手たちがとにかくボールを拾う姿が印象的だ。咄嗟の反応もあれば、体を投げ打つ姿も見られる。石川が懸命にボールをつなぐシーンはお馴染み。サーブを打ったあとのミドルブロッカー陣も同様で、ベテランの島村春世(NECレッドロケッツ川崎)も「私自身は取り立てて意識してないですね」と言うが、それは当然の心持ちだからこそ。その上で「そうした姿勢がチーム全体にも浸透していると感じます」と口にした。

 女子日本代表が"東洋の魔女"と呼ばれ国際舞台で隆盛を誇った頃、泥臭く、それでいて華麗にボールを拾い上げる"回転レシーブ"が武器だった。そのDNAは半世紀以上も受け継がれ、史上初の外国人監督になっても変わらない。「『ノータッチは絶対になし』と監督も言いますし、それこそローリングしてでもボールをつなぐ。攻めること、それはオフェンス、ディフェンスともにやるべきだと思いました」。セッターの中川つかさ(NEC川崎)の言葉である。

 アクバシュ監督は2017年から女子日本代表のアシスタントコーチを務め、一度は離れたものの、再び帰ってきた。昨年の監督内定会見では「ヨーロッパに戻った際にも『これで日本との関わりが終わったわけではない』と感じていました」と明かし、その言葉の端々からは日本のバレーボール文化へのリスペクトが滲み出る。

 2028年ロサンゼルス五輪への第一歩を踏み出した今年のスローガン「STRONG ROOTS(=強い根を張る)」のとおり、日本に元来宿るディフェンス力に"攻めの姿勢"を植えつけることで、さらに強固な土台を作りあげているのだ。

【"3本の矢"を軸に攻撃力もアップ】


 同時に、今年5月のキックオフ会見では「アグレッシブな試合運びをするためには、アタックの数字はとても重要」と攻撃力のアップを強化ポイントに掲げていた。その点に関して、2024−25 大同生命SVリーグで得点能力の高さを証明した佐藤淑乃(NEC川崎)を石川の対角に、オポジットには昨年夏のパリ五輪でも非凡なアタック力を披露していた和田由紀子(NEC川崎)を抜擢した。

 海外のリーグでレベルアップを遂げている石川を身近で感じながら、佐藤も試合を通して2段トスの決定力に磨きをかけている。一方の和田も、予選ラウンドではチーム最多得点をマーク。石川、佐藤、和田という"3本の矢"を軸として、セッターの関菜々巳(ブスト・アルシーツィオ/イタリア)が積極的にミドルブロッカーの攻撃を絡めることで、その攻撃はより効果的に得点を生んでいる。

 予選ラウンドを振り返って、アクバシュ監督は「ネーションズリーグではチーム自体を成長させていくことにフォーカスしてきました。(第2週では)イタリアを相手にフルセットへ持ち込んだことも含めて、結果自体には非常に満足しています」とコメントした。とりわけ日本開催の第3週では「攻撃に関してはアグレッシブに攻めきることができていた」とも評価した。

 ただ、高身長の選手が多かったポーランド戦(6月12日)の勝利から一転、ストレート負けの完敗に終わった最終ブラジル戦では冷静に敗因を分析していた。

「昨日(ポーランド戦)まではサーブとレセプションがよかったですが、ブラジル戦に関してはレセプションが少し崩れたことが攻撃にも影響し、さらにサーブも攻めきることができていませんでした。その2つが課題として残りましたし、ファイナルラウンドに向けて改善していくことが必要です」

 監督だけでなく、新戦力としてアタッカーでは北窓絢音(SAGA久光スプリングス)や秋本美空(ヴィクトリーナ姫路)、リベロでは岩澤実育(埼玉上尾メディックス)や西崎愛菜(大阪マーヴェラス)といった選手も加わった女子日本代表。その強みや戦い方は明確で、石川も「予選ラウンドの3週を終えて、とてもいい形ができていると思うので、その質をもう一段階上げていければなと。ファイナルラウンドではどのチームが相手でも、まずは自分たちのやるべきことからやる。しっかりと攻め続けることを忘れずに、戦っていきたいと考えています」と言葉に力を込めた。

 ファイナルラウンドは現地7月23日からポーランドのウッチで開催され、初戦の相手は予選ラウンド6位のトルコに決まった(試合開始は日本時間24日の23時30分)。まぎれもない強敵だが、キャプテンの言葉どおり、まずはやるべきことにフォーカスして戦う。

 攻めて、攻めて、攻め続ける。新生・女子日本代表よ、いざひとつ目の栄冠へ。

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