ギェケレシュやクルゼフスキらを輩出…“欧州No1”の育成組織を誇るブロマポイカルナとは

0

2025年07月26日 13:17  サッカーキング

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

サッカーキング

ブロマポイカルナが輩出したギェケレシュ(左)とクルゼフスキ(右) [写真]=Getty Images
 スウェーデンの首都ストックホルムに拠点を置くブロマポイカルナの育てた才能が、また一人ビッグクラブの門を叩く。その名はヴィクトル・ギェケレシュ。狂想曲の末にスポルティングからアーセナルへの加入が決定的な27歳の大型ストライカーは、ブロマポイカルナの出身選手としては最も高額な総額7350万ユーロ(約126億円)の移籍金でステップアップを果たそうとしている。

 ブロマポイカルナは1946年に創設され、2007シーズンにアルスヴェンスカン(スウェーデン1部)初参戦。1部在籍は通算10年で、欧州カップ戦出場はヨーロッパリーグ予選に出場した2014−15シーズンが唯一。数年前には3部まで降格したこともあり、スウェーデン国内でも強豪と呼べる立場にはない。

 だが、ブロマポイカルナの育成力は、スウェーデンだけでなく欧州でも指折りだ。近年の有名どころでは、ギェケレシュ、デヤン・クルゼフスキ、ルーカス・ベリヴァル(ともにトッテナム・ホットスパー)、ダニエル・スヴェンソン(ドルトムント)らが育成組織出身。アルビン・エクダル(ユヴェントス、カリアリ、サンプドリアなど)、ヨン・グイデッティ(マンチェスター・シティ、セルタなど)、ルドビク・アウグスティンソン(ブレーメンなど)、カール・スタルフェルト(セルティック、セルタなど)らスウェーデン代表で活躍した面々もブロマポイカルナから巣立った選手たちだ。世界であまり知られてない小さなクラブにもかかわらず、次々に有望株を輩出するブロマポイカルナに、イギリスメディア『BBC』がスポットを当てた。

育成組織は欧州最大規模


 育成組織は4500人の会員が年齢ごとに250のカテゴリーに分かれており、ヨーロッパで最大の規模だ。ほとんどの選手は地域活動のチームでプレーしているが、才能ある選手はA〜Cチームを代表する。シニアチームも含めたさまざまな年代のコーチが、選手たちができるだけシームレスに移動できるよう、チーム間で連携しているという。

 ブロマポイカルナのフィリップ・ベリルンドSD(スポーツディレクター)は、「私はいくつかのクラブで働いたことがありますが、このようなやり方をしているクラブは初めてです」と語り、その育成メソッドについて説明した。「U−17のコーチとU−19のコーチがアシスタントコーチとしてトップチームにも帯同し、トップチームのコーチも週に2日はユースチームで働くという形で、3チームを統合しています。トップチームのコーチが最大のタレントのすべてを正確に把握していれば、ユース選手をトップチームに統合するのも容易になります」

 また、集める選手はストックホルム近郊の選手が多いこともブロマポイカルナの特徴だ。「いろいろな都市を観光する前に、ストックホルムですべてを満喫することが本当に重要だと思います」とベリルンドSDは説く。アカデミー責任者のナトホルスト・ウィンダール氏も次のように語り、地域に根ざした育成をモットーに掲げている。

「ストックホルムには、ブロマポイカルナがタレントとスカウティングにおいて常にナンバーワンであったという歴史があります。どの選手も、ここにいてプロになった他の選手たちが、ブロマポイカルナで過ごした時間が今の自分たちを築いた土台だといつも話していることを知っています。私たちにとって、スウェーデンのさまざまな都市から選手を集めるのは珍しいことなのです。バルセロナがアジアから選手を連れてくるとき、私たちはバスで15分のところにいた選手を連れてきます」




 ギェケレシュは育成年代の多くをアスプッデン・テルスというストックホルムのアマチュアチームで過ごし、ブロマポイカルナに加入したのは17歳のことだった。ウィンダール氏はギェケレシュについて、「もしかしたら、彼はもっと早くうちに来ていたら、もっと良くなっていたかもしれませんが、彼は所属していたクラブですべてのパスをもらって得点王になっていました。現在代表チームやクラブでプレーしている選手で、これほど長く小さなクラブに在籍し、その後アカデミーに行くような選手は本当に珍しいです。彼は遅咲きで、スウェーデンには1998年生まれで彼より高いランクの選手はたくさんいました」と、その成長ぶりに目を見張る。

「彼はアカデミーで1年プレーしてトップチームに行きました。彼はまだ子供でしたが、大人たちと対戦するメンタルはすでに準備できていたのです。ここに来た時は良いストライカーでしたが、去る時にはすべてを備えていたと思います」

 2018年1月に加入したブライトンでは十分なチャンスを得られなかったが、2021年1月に加入したコヴェントリーで開花し、2023年夏にポルトガルの名門スポルティングへ。公式戦通算102試合の出場で97ゴールを挙げる活躍を披露し、スターダムにのし上がった。

「今私たちが見ているのは、スウェーデンの1部や2部で見てきた彼の姿だと思います。ヴィクトルにとって最も重要なことは、全試合に先発出場し、監督に気に入られるためだけの選手ではなく、“ヴィクトル・ギェケレシュ”としてプレーできるクラブにいることです。全くもってエゴではなく、そういう戦略でクラブを選んだのだと思います。だから、スポルティングに行ったとき、彼は自分がスターになると100パーセント思っていたはずです」と、ウィンダール氏は同選手のメンタリティに太鼓判を押している。

 同じストックホルムのAIKソルナが約3万人の平均観客動員数を記録する一方、ブロマポイカルナのトップチームは1試合あたり2000〜3000人が関の山。ウィンダール氏は「クラブの最大の収入は移籍金です。サポーターからの収入が少ないからです。ファンの数はそれほど多くありませんが、少数ながらファンはいますし、彼らを愛しています。それでも、十分な収益は得られないので、毎年選手を売却する必要があるのですが、それは素晴らしいことです」と語り、スモールクラブながらも多くの才能を送り出す育成メソッドに誇りを持っている。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定