画像はイメージです(以下同) こんにちは。これまで3000人以上の男女の相談に乗ってきた、恋愛・婚活コンサルタントの菊乃です。髪もボサボサで化粧もしない“完全なる非モテ”から脱出した経験を活かし、多くの方々の「もったいない」をご指摘してきました。誰も言ってくれない「恋愛に役立つリアルな情報」をお伝えします。
奨学金受給率と奨学金受給者数はともに増加しており、日本学生支援機構『令和4年度 学生生活調査結果』によれば、大学(昼間部)生の約55%が何らかの奨学金を受給しています。とはいえ、奨学金を受給していない人の中には、奨学金返済中と聞くと「金銭的に余裕がない」「借金を抱えている」というネガティブイメージを持つ人もいます。
今回、夫さんが奨学金返済中に婚活し、結婚したあるご夫婦を取材しました。
◆一人暮らし経験がない元同僚のアドバイス
今から約8年前、愛知県在住の美帆さん(仮名/メーカーの法人営業職)は当時28歳。婚活パーティーで出会った機械メーカーで技術者として働いている達也さん(仮名・30歳)と出会い、デートを重ね1カ月後にはお付き合いに発展します。翌年、プロポーズされて結婚することになりました。
達也さんは東北大学を卒業しています。事前に奨学金を返済中であることは聞いていましたが「勉強のための投資だし、親のスネをかじる甘い人間よりも自立心があって、大変なことも乗り越えられそうな人」とあまり気にはならなかったそうです。
美帆さんは新卒で金融機関に就職し、同期とは合コンや街コンによく行っていたそうです。転職後も同僚とは恋バナをすることがあり、彼氏からプロポーズされたことを元同期の典子さん(仮名)にも報告します。すると、典子さんから驚くことを言われました。
「そんな奨学金なんてある人と結婚して大丈夫?」
もうすぐ30歳になる典子さんはずっと実家暮らしで、一人暮らしも転職もしたことがありません。毎年、親にお金を出してもらって家族で海外旅行をしているような、実家依存気味の女性でした。
自分の生活力の無さを棚に上げて、何を言っているのかと思ったそうです。
◆奨学金を受給した彼氏側の事情
達也さんは1987年、岩手県で生まれました。3人兄弟の末っ子で、父親は地方公務員、母親はパートで訪問介護をしている家庭で育ちます。達也さんの近所には、同様の家族構成のご家庭が多かったと記憶しているそうです。
お兄さんは県内の公立大学に進学しました。達也さんは2005年に東北大学理学部に合格し、実家を出て一人暮らしをすることになります。
大学の学費・生活費は親が出してくれ、アルバイトやフットサルサークル活動も楽しみながら学生生活を送ります。大学卒業後は就職の進路を考えていたそうです。
ところが2008年にリーマンショックが起き、就職先候補が激減します。就活が難航しそうなこともあり、大学院に進学する道を選びます。両親は理系に進んだ時点で、大学院進学の可能性も想定していたそうで、その決断をすんなり受け入れてくれました。
親に迷惑もかけたくないので、第二種奨学金を月10万円受給(2年間で240万円)することにしました。達也さんの感覚では、大学院生のうち半分ぐらいが奨学金を借りていたそうです。
◆就職して立て続けに起きた「おや?」なできごと
2012年に大学院を卒業した達也さんは首都圏にある機械メーカーに総合職として就職します。奨学金の返済も始まり、毎月の返済額は約1万7千円でした。
入社後、「おや?」と感じることが立て続けに起きます。技術部門を希望していたのですが、配属されたのは営業職でした。その企業で、営業から技術へ異動するケースはありません。
その企業には社員寮がありました。しかし、その社員寮は一戸建てに男3人が共同生活するというもので、ストレスが溜まる環境です。自分と同じ新入社員が他に2人暮らしていましたが、2人とも一人暮らし経験がありません。
そのうちの1人は京都出身の偏食家で、達也さんが調理していると不機嫌そうな顔をし、ごく普通のマヨネーズやドレッシングを見ても嫌な顔をしていました。彼のもとには毎週、実家から冷凍ご飯が届いて、母親が作った料理を解凍して食べていたそうです。
他にもノー残業デーに残業したら罰金という謎の習慣があるなど「おや?」が重なった結果、達也さんは転職を決意。一年後に機械系の企業の技術職として転職し、東海地方に引っ越しました。
転職先に家賃補助はなかったそうですが、家賃約5万円を払い、1年目から貯金もしながら返済は無理なく続けることができて、特に返済が苦しいと思ったことはなかったそうです。
◆結婚前に奨学金を繰り上げ返済した夫に感激
達也さんは29歳の時に婚活を開始し、30歳の時に美帆さんに出会いました。2019年に結婚しますが、婚姻届を提出する前に、奨学金の残債150万円は繰り上げ返済しました。
美帆さんによると「初めに奨学金のことも言ってくれたので誠実な人と思っていましたが、繰り上げ返済してくれてさらにポイントは上がりました」とのこと。
2019年に、約70人規模の結婚式を開催します。
「友人からは『奨学金なんか借りている人と結婚して大丈夫?』と心配されました。でも、夫の同級生はみな有名企業に勤務する高収入な人ばかりで、その人たちも半分ぐらいは奨学金受給していたそうです」
新婚旅行ではヨーロッパへ行き、現在は2人のお子さんにも恵まれ、名古屋市のベッドタウンにマイホームも購入して幸せな家庭を築いています。
「私は仕事を辞めて専業主婦ですが、一馬力で生活できています。相手が奨学金を借りているというだけで、結婚を不安に感じることはありません」と美帆さんは断言します。
◆「奨学金ある人と結婚して大丈夫?」と言った友人の“その後”
美帆さんに「奨学金ある人と結婚して大丈夫?」と言った典子さんはその後、高校時代からの知り合いと復縁し、33歳で結婚したそうです。お相手は高校卒業後に親族経営の工場を継いだ男性で、典子さんは実家から徒歩2〜3分の所に家を購入して暮らしています。
典子さんは、美帆さんが名古屋近郊の街で暮らすことが決まった際も「そんな遠くに住むの!」と言ったそうです。
「電車に乗れば30分で栄に着くのに、何を言ってるんだろうと思いました。彼女は、鶴舞線沿線の実家に生まれて、大学も勤務先もすべて同じ路線1本で通える場所。他を知らないんです。結婚してもずっと実家近くに暮らしたいと言ってました」
なお、典子さんは結婚後も新卒で就職した金融機関で、正社員として働いているそうです。
婚活市場では奨学金返済中の人よりも、「実家暮らしで海外旅行が好きで実家近くに暮らしたいという実家依存の30歳女性」の方がずっと地雷なのですが、典子さんはそんなことを知る由もありません。
※個人が特定されないよう一部脚色してあります。
<取材・文/菊乃>
【菊乃】
恋愛・婚活コンサルタント、コラムニスト。29歳まで手抜きと個性を取り違えていたダメ女。低レベルからの女磨き、婚活を綴ったブログが「分かりやすい」と人気になり独立。ご相談にくる方の約4割は一度も交際経験がない女性。著書「あなたの『そこ』がもったいない。」他4冊。Twitter:@koakumamt