※画像はイメージです―[佐藤優のインテリジェンス人生相談]―
キャバ嬢、ガールズバー嬢、コンカフェ嬢……夜職につく女性に恋をしてしまうことはよくある話。しかし、今回の相談者は結婚を前提に付き合っていた彼女が交際中にガールズバー嬢になってしまったという話だ。夜職を辞めてほしい男は辞めなくない女に交渉するも「じゃあ、別れましょう」と言われてしまう。男女交渉というものは難しいものだ。混迷を極める男女の世界に“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報・外交のプロ・佐藤優が、その経験をもとに、読者の悩みに答える!
◆夜職彼女に別れを告げられたけど復縁したい
★相談者★AI(ペンネーム) 会社員 45歳 男性
5年付き合った彼女(39歳)に別れを切り出されました。
彼女はガールズバーのキャストとして働いています。彼女はそれをずっと隠していたのですが、1年前に彼女のLINEを覗き見てしまい、夜職だということに気づきました。それ以来、私は夜職を辞めてほしい、と言うようになりましたが、彼女は「収入が減るのが怖い」と言って辞めませんでした。些細なことで言い合いになることが増えました。同棲の話、結婚の話もしてきましたが、夜職が頭に引っかかって私が気のない返事しかしなくなった結果、別れを切り出されてしまいました。
年齢的に本気で別れるつもりじゃないだろう、と思っていたのですが、もう1か月以上返信はありません。謝っても彼女には届きません。それでも、もう一度やり直せるならやり直したい。彼女をもう一度振り向かせる方法はないでしょうか?
◆佐藤優の回答
多分、復縁はできないと思います。彼女としては、十二分に考えた上で、「別れましょう」とLINEでメッセージを送ってきたのだと私はみています。あなたの電話番号、メール、写真などもすでに消去していると思います。女性が本気で別れると決めた場合、見直しがない場合がほとんどです。
彼女には、それなりのレベルの生活を維持することと、あなたと本気で結婚することを天秤にかけてそれなりの生活をするほうを選択したのです。もし、彼女が夜職を辞めても、それを補塡するのに十分な収入があれば、彼女もあなたとの同棲や結婚に応じた可能性はあったと思います。
一般論として、一旦上がった生活水準を落とすのは、とてもツラいです。彼女はあなたと結婚した後、自分がどれくらいストレスを抱えた生活になるか、容易に想像できたので、別れる選択をしたのだと思います。間違えても、彼女が働いているガールズバーに押しかけていってはいけません。ストーカーと見なされ、生理的に嫌悪されるようになります。
発想を変えて、彼女はもともと別の世界の住人であったと考えることをお勧めします。『竹取物語』のかぐや姫は、さまざまな男性から言い寄られますが、無理難題を言って、帝を含む誰の愛も受け入れませんでした。それはかぐや姫が月の世界の住人だったからです。かぐや姫は、天の羽衣を羽織ると、地球での記憶がすべて消えてしまいます。だから、その前に帝宛ての手紙を書きました。
〈「天人が天の羽衣を着せた人は、心が地上の人とは違ってしまうのだという。何か一言言って置かねばならないことがあったのです」と言って、手紙を書く。(中略)たいそう物静かに、帝にお手紙を差し上げなさる。あわてず落ち着いた様子である。/このように大勢の人をお遣わしくださって、わたしを引き留めなさいますけれど、とどまることを許さない迎えがやってまいりまして、わたしを捕えて連れて行ってしまいますので、残念で悲しいことでございます。(中略)無礼な者だとお心にとどめあそばされたことが、とても心残りでございます。/と書いて、/今はこれまでと、天の羽衣を着る時です。その最後に、あなた様をしみじみと思い出しております。/と歌を詠み、壺の薬を付け添えて、頭中将を呼び寄せて帝に献上させる。〉(『新版 竹取物語 現代語訳付き』122〜123頁)
彼女からのLINEのメッセージをかぐや姫からの手紙のようなものと受け止めて、人生に一段落つけることをお勧めします。そのうちあなたにも新しい出会いがあります。
★今週の教訓……別れのメッセージはかぐや姫の手紙と同じ
※今週の参考文献『新版 竹取物語 現代語訳付き』(室伏信助訳注 角川ソフィア文庫)
―[佐藤優のインテリジェンス人生相談]―
【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数