限定公開( 1 )
※本稿は『SPY×FAMILY』最新話までのネタバレを含みます。
「少年ジャンプ+」で連載中の人気マンガ『SPY×FAMILY』といえば、スパイや殺し屋が“本当の家族”のように振る舞うフォージャー家をめぐる物語。しかし7月21日に公開された第120話では、その設定の根幹を揺るがしかねない事件が起きた。ついにヨルがロイドへの恋心を自覚したのだ。
物語が始まって以来、ヨルの心境はどのように変化してきたのか。今回はその足跡を丁寧に辿っていこう。
ヨルは一見平凡な女性に見えるが、裏では「ガーデン」という秘密組織に属する殺し屋、通称“いばら姫”として暗躍していた。そんなヨルの前に現れたのが、西国の諜報機関「WISE」に所属するスパイのロイド。お互いに素性を隠すという目的が一致したことから、偽装結婚を行うことになる。とはいえ、完全にビジネスライクな決断というわけでもなく、ヨルには最初から“特別な感情”の萌芽があった。
偽装結婚に至る前、会社の同僚に招かれたパーティーで、ヨルはロイドに恋人役を演じてもらうことを依頼。そこで意地悪な同僚から、いかがわしいマッサージの仕事をしていた過去があると中傷された際、ロイドに「何かのために過酷な仕事に耐え続けることは」「普通の覚悟では務まりません」「誇るべきことです」とかばってもらったことで、大きく心を動かされる。
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そして今の自分を受け入れてくれるのはこの人しかいないと考え、一度きりの恋人役でなく、偽装結婚してほしいと提案するのだった。すなわちこの時点で、“一緒にいるならロイドがいい”という想いがあったことは確かだろう。
その後、家族の一員となったヨルは、立派な妻になるために日々奮闘。たんに素性を隠す目的だけでなく、家族の暮らしを心から楽しんでいることが描写されていた。
さらに恋愛感情らしきものが見え隠れしたのが、フィオナ・フロスト絡みのエピソードだ。「ロイドと同じ職場の同僚」という肩書きで近づいてきたフィオナに対して、ヨルはモヤモヤとした感情を抱く。
第32話では、ロイドが「仕事仲間とテニス大会」という名目で任務に出向くのだが、ヨルはロイドとフィオナが一緒にテニスしている姿を想像。その際、嫉妬に近い感情を胸にしている。そして第34話では、テニス勝負を挑んできたフィオナに張り合い、勝利を収めるとその結果をロイドに猛アピールしていた。
それに続く第35話では、ロイドが自分を捨て、フィオナに走るのではという不安から意気消沈。見かねたロイドがバーに連れていくと、泥酔しながらフィオナとの関係を問いただし、自分には飽きてしまったのかと涙する。その様子を見たロイドはヨルが自分に本気で恋愛感情を抱くようになったと推測するも、コメディめいたオチでうやむやになっていた。
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この頃のヨルは偽装夫婦という関係である以上、ロイドのプライベートに立ち入る権利はないと自制しつつも、時折それを超えた感情に突き動かされていた。とはいえ、どちらかといえば「フォージャー家という居場所を大切にしたい気持ち」が強調されており、ロイド個人への恋心についてはハッキリとは描かれていなかった。
ヨルの心情がより明確になるのは、第44話から第56話で描かれた「豪華客船編」だ。同エピソードでは、ヨルが要人を護衛する任務に就くのだが、その胸には「なぜ自分は殺し屋を続けているのか」という疑念が兆す。すでに弟のユーリは独り立ちしているため、殺し屋稼業でお金を稼ぐ必要はないからだ。
そうした逡巡によってピンチに陥るヨルだったが、最終的には「大切な人たちの暮らしを守りたい」といった答えに辿り着く。その時脳裏にあったのは、フォージャー家の面々の顔だ。さらにはロイドが自分の仕事を肯定してくれた時の言葉を思い出し、戦う力へと変えるのだった。
こうしてヨルとロイドの関係を振り返ると、何か特別なきっかけで恋愛感情が芽生えたというより、徐々に好意を自覚していったようにも見える。あえて決定的な出来事を1つ挙げるなら、やはりヨルが偽装結婚を提案する理由となったパーティーでの一幕だろう。
ヨルにとってロイドは特殊で孤独な自分の生き方を受け入れてくれた初めての人だったが、一緒に暮らすなかでその存在が“守りたいもの”に変わっていったのではないだろうか。
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ではその一方で、ロイドの側の心情はどうなっているのか。ヨルとは対照的に、元々ロイドは純粋に任務を円滑に進めるために偽装結婚を受け入れた。ただ、本人が考えているほど私情を捨てきれているわけでもない。
たとえばフィオナが初めてフォージャー家に訪問した際には、ロイドがヨルに対して向けた作り物の笑顔の裏に“微細な感情”が滲んでいるのを察知していた。また「豪華客船編」のラストでは、ロイドがフォージャー家を本当の家族として認識しつつあることを自覚する様子が描かれていた。
また第35話では、自分を膝枕して子守唄を歌っていたヨルに対して、母の姿を重ね合わせるという場面が登場。そしてロイドは妻らしい振る舞いができず落ち込んでいるヨルに向かって、「ヨルさんはもう立派にお母さんです」とやさしい声をかけていた。ロイドとしては、あくまで任務を継続するための言葉だったのかもしれないが、無自覚に本音を滲ませたやりとりとも受け取れる。
とはいえロイドの内面は今のところ鉄壁の自制心に閉ざされているため、何か大きな出来事がなければ、恋心を自覚することはなさそうだ。
第120話にてヨルはロイドへの想いをアーニャに打ち明けつつ、それを秘密にしておいてほしいと語っていた。もっと根本的なことを言えば、お互いに本当の正体を明かしてすらいない。2人が“本当の夫婦”になるには、まだまだ多くの課題を乗り越える必要があるのかもしれない。
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会
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