不動産投資で大切なのは「利回りやローン金利ではない」。家賃収入4000万円の大家が語る“投資が自走”している状態とは

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2025年07月28日 09:01  日刊SPA!

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東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、38戸の物件を所有し、時価資産額約10億円、年間家賃収入約4000万円の個人投資家・村野博基氏。村野氏は「不動産投資のローン金利や借入額はいくらなのか?」を考えるのは投資の本質ではないと言い切ります。ローン金利や借入額よりも大切にすべきポイントについて語ります。
◆時間を味方にすればインフレも金利上昇も怖くない

日本もインフレが起こり、昨今は金利が上がる局面に入りつつあります。不動産投資に懐疑的な人が私の資産状況を知ると「物件の資産10億円で家賃収入4000万円ならば、利回りは4%台? 借入金利や利回りがいくらなのか分からないけど。今より金利が上がると難しくなるのでは?」とコメントをもらうことがあります。

確かに経済学のセオリーからいえば、金利の上昇は不動産投資にはマイナスです。不動産投資では銀行から借入して物件を購入し、家賃を頂きながら借り入れたローンを返済します。金利が上昇し月々の返済額が増加し、家賃収入を上回る事態になれば、キャッシュフローはマイナスに陥ってしまいます。

しかし、私自身の不動産投資では金利上昇の影響は特にありません。現在、自宅の住宅ローンを含めた借入総額は1億円ちょっとですが、毎年約1500万円のローン返済を行っていますから、単純に放置しても「毎年借入額の10%以上は元本が減っていく」状況です。

この状態ならば、仮に金利が上がるとしても「借入の元本が減っており悪影響は飲み込めるのではないか」と考えています。もちろん「明日から毎月1%の金利上昇」といった事態には耐えきれません。しかし毎月1%の金利上昇が発生するような事態はハイパーインフレ状態です。インフレとは貨幣の価値が下がること。インフレが進めば日本経済は混乱し、ハイパーインフレともなればより借金の実質的な「価値」は下がります。不動産に人が住むという価値が変わらずに「固定」されているのであれば、貨幣価値が下がりますので不動産「価格」は上がります。そんな状況であれば1戸でも売却すれば、借金は完済できてしまうでしょう。家賃も実質的な「価値」は変わらないので、ひょっとしたら1か月分の家賃で完済できてしまうかもしれません。

ローンの支払額は「元本×金利」で計算できます。つまり、金利が上がっても元本さえ減っていれば怖くはありません。また、インフレ下では実資産で「価値」が変わらない不動産の「価格」は上昇し、借入の「価格」は同じなので想定的な「価値」は下がります。つまり、インフレ下で借入をして不動産投資を行っていると、往復でメリットを享受できるのです。

◆金利上昇や借入額よりも気にすべきこと

不動産は非常に高額な商品ですから、多くの方が借金、つまりローンのお世話になると思います。そのときの金利は低ければもちろん投資では有利になりますが……。しかし、より大切なのは金利の高い低いではなく「返済額はコントロールの範囲内か?」です。

しっかり考えるべきなのは「キャッシュフロー」で、ポイントになるのは「収入と支出のバランス」です。月々の収入に対して毎月のローン返済額が大きく、生活が圧迫されて苦しいのであれば、それは非常に危うい状況です。一般的には住宅ローンを組む際には年収の5〜7倍にとどめておけば安心と言われています。

しかし、いくら収入が多くたとえ年収1000万円であったとしても、生活を維持するための支出が950万円ならば、手元に残るお金は50万円しかありません。そんな状態で「年収の5倍、5000万円までの借入なら安心だ!」とは当然ならないでしょう。借入額の多寡より「月々の返済額を加えた支出と収入のバランス」のほうが大事なのではないでしょうか。

不動産投資でも同様で、いくら家賃収入が多くても返済額が多くキャッシュフローがマイナスの状況になれば……。投資が「自走している」わけではありません。自分という資本に寄りかかった状態で、働いて得た給与等で借金を補填する状態になります。もしこの状態で自分が働けなくなる事態に陥ると、当然に不動産投資は立ち行かなくなるため、自身と不動産の両方でリスクを背負っている状況と言えるでしょう。

一方で、キャッシュフローがプラスで、投資が「自走している」状態であれば、自分に何があっても勝手に資産は増え続けてくれます。投資を行う際にはこの「自走している状態」というのを目指してほしいと考えています。

◆年収500万円でも4戸物件を所有。10年ちょっとでローンも完済

仮に収入が少なくても、支出が少なくて貯蓄ができ、投資側でもキャッシュフローがプラスになるのであれば、ローンを組んで不動産投資を始めても問題はないでしょう。私の知人には、年収は500万円程度ながら自宅と、投資用の物件を4戸購入し、10年足らずで「投資用の内3物件のローンが完済できそう」という人も居ます。

なぜそんなコトが可能なのかと言えば……。身も蓋もないのですが、そもそも、知人は生活費が非常に少ないのです。そして、その生活からの余剰資金を「返済額軽減型の繰上返済」に回すことで、さらにキャッシュフローを増やしています。すると、さらに余るお金が増えるので、より繰上返済に回すお金が増える……というサイクルに入っています。投資や生活におけるキャッシュフローがプラスならば、それは「借金」という敵を倒すための強力な援軍になります。一方でキャッシュフローがマイナスだと、それは足を引っ張られる存在になり、借金という敵を倒すことが難しくなるのです。

大切なのは「キャッシュフローがプラスである」こと。つまり、安定して収入よりも支出が少ないことです。ですから、収入はなるべく多い方が良いし、支出はなるべく少ないほうがいい。借入金利は低い方がもちろん支出は抑えられますが、金利は支出全体の一部に過ぎません。枝葉の話なのです。

それよりも、不動産投資の幹である「収入」の方が大切。つまり「家賃収入が安定して入ってくるのか、空室になってもすぐに次に住んでくれる人が見つかるのか」を最も重要視して不動産投資に取り組んでほしいと思っています。そして、その収入を産み出すために必要な「支出」である「建物維持にかかる費用」をいかに抑えるか、に注力して運用していくことで、不動産投資は「負けにくい投資」になると考えています。

構成/上野 智(まてい社)

【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち19区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)

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