小谷実可子、『世界マスターズ』直前の心境を吐露「多くの人が応援してくれていることに感謝!オリンピックの時のような気持ちで挑みます」【連載9回目】

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2025年07月29日 07:00  ORICON NEWS

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小谷実可子 
 2025年7月にシンガポールで開催される世界マスターズ水泳選手権に出場することを発表したアーティスティックスイミング(AS)の小谷実可子(58)。7月30日の初戦まで残り1日。

【写真】抜群のプロポーション!水着姿の小谷実可子

 挑戦の軌跡を記す連載『生涯現役!58歳 アーティスティックスイミング小谷実可子の挑戦』の9回目となる今回は「大会直前!今の心境を語る」。『マスターズ競技の盛り上がり』『ソロ、ミックスデュエット、チーム種目の完成度』『今大会の目標』などについて語ってもらった。

――大会本番が近づいてきました。今の心境をお聞かせください。

小谷:率直に、楽しみ半分・不安半分ですかね。マスターズスイマーとしてだけではなく仕事の面でも大きな変化があり、その事への不安などもあったりする状況です。

 2023年の世界マスターズ九州大会の時は、すごく楽しみでした! ただ初めてのマスターズ大会挑戦だったので、どんな選手がエントリーするのか? どのくらい選手が出場するのかなど、未知な部分がありました。

 チーム、デュエット、ソロと出場しましたけど、どのくらい頑張れば金メダルを取れるのかというのが分からなかったので、とにかく練習では自分の限界に挑戦していました。特に(藤丸)真世さん(2004年アテネ五輪・銀メダリスト)と組んだデュエットは、かなり内容にもこだわって、ハードなルーティンを頑張りました。結果的には、20点ぐらい差をつけて優勝することができましたが、やはりそこに出るまではどんなライバルが出てくるのかわからないという不安はありましたね。

 2024年のドーハ大会では、初めて安部篤史さん(2019年世界選手権・混合デュエット銅メダリスト)とミックスデュエットに挑戦。それを通して、アーティスティックスイミング(AS)がジェンダーレスなスポーツだということを発信したいという想いがあったので、競技だけではないモチベーションがあり、男子ASの普及につなげたいというミッションがありました。

 ただスタートするとそのミッションよりも、とにかく楽しいという思いが先にきました。今までミックスデュエットで演技をしたことがなかったので、男子選手とパートナーを組み、新しい種目に挑戦することが楽しかったんです。

 そして今大会は、不安もありますが…“自分一人で戦っているわけではない”ということが活力・原動力になっています。

――“一人ではない”とはどういうことでしょうか?

小谷:前回のドーハ大会からですが、ジャージにスポンサーのロゴをつけて出場するようになりました。前回は4社で、今回は5社(スタイリングライフ・ホールディングスBCLカンパニー、日清オイリオグループ、ローソンエンタテイメント、SEIKO、東急コミュニティー)と応援してくれている人たちが増えているので、より一層、身が引き締まる思いです。

 やはりジャージにスポンサーロゴをつけて大会に参加するというのは、自分一人だけではないという気持ちにしてくれます。応援してくださる人のために泳いでいるという、かつてのオリンピックのような気持ちに近いんですよね。自分だけの楽しみや目標だけではなくて、私の結果を待ってくれている方々がいるっていう心境がとても似ています。

 一緒に演技をする安部さん、渡辺千晶さん(2003年世界水泳選手権・銀メダリスト)、藤丸さん、箱山愛香さん(2016年リオ五輪・銅メダリスト)、木村叶さんらチームメイトたちはもちろんのこと、ともに戦ってくれている人がいるというのが本当に支えになっています。

 現役時代はまだ、アスリート個人にスポンサーがつくなんてことはなく、日本を代表して戦っていたのですが、まさかマスターズ選手として初めて個人スポンサーがつくなんて思いもしませんでしたし、感謝しかないです。

――マスターズ選手として5社がサポート。国内の中で、ASマスターズの関心度は高まっていますか?

小谷:そう感じています。2023年は日本で大会があるから、出ようと考えていた人がいました。しかし今回のシンガポール大会では、私がお世話になっている東京リズムのみなさんもほとんどの方がエントリーをしています。人生の大先輩たちも同じマスターズ大会に向けてともに頑張っていると感じられるので、とても幸せですね。

――ソロ、ミックスデュエット、チーム種目の完成度はいかがでしょうか。

小谷:チーム種目が、一番完成度が高いです。振りつけなど改善に改善を重ねてやってきて、これで行こうという“最終の演技”が固まりました。

 大会会場の全体図も届いたので、どこが観客席で、どこを向かないといけないとか、本番に向けた修正ができてきたので、あとは元気に現地に行き演技をするだけ、というところまで来ました。

 次は、ミックスデュエット(フリー)ですね。昨年のドーハ大会でも演技をしたので、慣れていて安心感はあるのですが…4曲の中で一番ハードなので、苦しいんですよね。だから、最後まで泳ぎ切れるのかという不安はあります。

 今は、ミックスデュエット(テクニカル)とソロが一番不安ではありますが、本番までできる限り練習をして、不安を取り除いていければと思っています。

――大会直前になると、練習する内容にも変化が生まれるのでしょうか。

小谷:もちろん変わりますね。目線をどこにするのかなど、細かいところを気にしています。ただチームやミックスデュエットに関しては、現地に行ってから、斜めの時は“あのはしごを見ようね”とか、“観客席の何段目を見ようね”とか、より具体的な申し合わせが必要になってきます。

 シンガポール大会の会場を以前訪れたことがありますが、何が一番不安かというと…プールに線がないという点です。ダイビングプールや普通のプールには、何かしらの目印みたいなものがプールの底にあるのですが、視察に行ったときの記憶だと、本番会場となるダイビングプールには何一つ目印がなかったんですよね。そしてプールが真四角…自分が回転したときに、どこを向いているのか分からなくなってしまうんですよね。現地に行って2日間練習ができるので、そこで最終的な調整を行い、試合に臨みたいです。

――あらためて、最後に今大会の目標を教えてください。

小谷:当初は“4種目で4つの金メダル獲得!”と明るく話していたのですが、実際にやってみると本当に大変で…でもそれは達成したいです。

 前回ドーハ大会でミックスデュエットを泳いだ時に、ジャッジの方々からもお褒めの言葉をいただき、とてもうれしかったんです。そして今年オーストラリアに行った時も「実可子の活躍すごいね!」などと言ってもらいました。私が活躍しているのはマスターズ大会しかないので、それを見てくださっている方が世界中にいるということも感じることができました。だからこそ、その期待を裏切らないようにしたいです。

 『オペラ座の怪人』をどうして今回も泳ぐのか?というと前回大会でリフトのところでミスがあったりしたので、100点満点ではなかったんですよね。

 だからこそ、より完成度の高い演技を披露したいねと安部さんとも話しています。4種目あって、泳ぎ切れるのか不安になってしまっている自分がいけないんですが…より進化した『オペラ座の怪人』を見せたいです。今のASの技術とか難易度とかそういうのはもちろん無理ですけど、人々の心に残る、歴史に残るようなパフォーマンスをしたいです!

■小谷実可子(こたに・みかこ)
1966年8月30日生まれ、東京都出身。ソウルオリンピックでは夏季オリンピック初の女性旗手を務め、ソロ・デュエットで銅メダルを獲得。1992年に現役引退。東京2020招致アンバサダーを務めるなど国際的に活動。東京2020オリンピック・パラリンピックでは、スポーツディレクターに就任するなど幅広く活躍。日本オリンピック委員会 常務理事(JOC)、世界オリンピアンズ協会 副会長(WOA)、日本オリンピアンズ協会 会長(OAJ)など、15の役職をこなしながら、2025年7月に開催される世界マスターズ水泳選手権(シンガポール大会)で、4つの金メダル獲得を目指している。

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