「まだ居座っている」石破首相続投の裏側にある自民党の意志とは/倉山満の政局速報

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2025年07月29日 08:50  日刊SPA!

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画像は「自民党の第27回参議院選挙特設サイト」より
先の参院選で自公連立与党は過半数を割り込んだにもかかわらず、石破首相はなおもその座に居座り続けている。選挙で示された民意とは、いったい何だったのか。憲政史研究家の倉山満氏が、各党の勝敗を分けた要因と、日本政治の今後を分析する(以下、倉山満氏による寄稿)。
◆常識を超えた石破首相の居座り

石破茂首相、まだ居座っている。

自分が掲げた目標議席を下回ったら、「開票終了を待たずに退陣表明」が常識だが、常識を超えた事態が起きている。

石破首相は続投会見での退陣理由として「あした地震が起きるかもしれない」と噴飯ものの言い訳をして呆れられたが、「アメリカとの関税交渉がある」は建前として成立している。確かに、辞めると決まっている首相と交渉しても意味が無い。

ところがトランプ大統領は、あっという間に関税交渉を妥結させた。「石破よ、さっさとやめてくれ」と言わんばかりに。

◆自民党の意志は「時間稼ぎ」

石破首相の退陣報道は大手紙から出されているが、石破首相自身は打ち消している。石破首相自身はムキになっているかのようだが、関係ない。自民党は今回の参議院のみならず、そもそも衆議院でも過半数を失っているのだ。

戦後政治の定番である、「自民党総裁=総理大臣」の図式は崩れ去った。石破首相が辞めたくないと言い張っても、力づくで降ろされうる状況なのだ。

では、それでもなお最大勢力の自民党の意志はどうか。

ズバリ、「時間稼ぎ」と読む。

◆よほどのことが無い限り負けない選挙だった

ここで流れを読むために、参議院選挙を振り返ってみよう。多くの人は参政党に眼を奪われているが、もっと大きな潮流がある。

選挙前、自民党は114議席(非改選62)で連立与党の公明党は27(同13)。だから、自公で50議席あれば過半数を維持できる、よほどのことが無い限り負けない選挙だった。そのよほどのことが起きた。

「火事は最初の5分間、選挙は最後の5分間」と言うが、89年参議院選挙で土井たか子は3年前に自民党が衆参同日選挙で大勝していたにもかかわらず、1回の選挙でねじれ国会に追いやった。何が起きるかわからないのが選挙だ。

今回、自民党は39議席獲得で新勢力は101。公明党は8議席獲得で新勢力は21。与党は248議席中、122の過半数割れとなった。

◆これでも踏ん張ったと言える自公

結論から言うと、「消費減税を言った政党が勝ったが、ただ減税を言えば良い訳ではない」が、民意だった。

ただ自公は選挙終盤には、もっと負けるだろうとも思われていたから、これでも踏ん張ったと言える。

自民党の敗因は数あれど、自民党の森山裕幹事長が「消費税を守り抜く」と宣言したことに象徴される、輿論が減税を求める選挙で減税を拒否した態度に尽きるだろう。

SNSを敵に回しただけでなく、マスコミも連日のように自民党の不祥事や失言を取り上げた。

公明党は選挙前、そこまで負けないと思ったか、消費減税を取り下げた。自民党と連立を組んでいた“もらい事故”とも言えるが、自分で蒔いた種でもある。

◆実態は大敗の日本維新の会

日本維新の会は、7議席。非改選と合わせ19議席に。選挙前に18議席だったから微増だが、実態は大敗と言って良い。大阪の2議席は接戦で死守、他に京都のみ。選挙区では他の地域で全滅だった。

これは、予算に賛成して減税を潰したと思われたのが原因だろう。柳ケ瀬裕文前総務会長(比例)と音喜多駿前政調会長(東京)の落選が象徴的だ。

しかし、それ以上に、創業者の橋下徹元大阪市長に原因があるのではないか。橋下氏は実質的な今の維新の党首のような存在だ。堂々と「大阪の下請けが嫌なら出ていけ」と発言している。

橋下路線、あからまさに地域政党回帰の路線が明確だ。大阪以外は、せいぜい京都や兵庫まで。これでは他の地域で維新が伸びる訳がない。全国各地で、国民民主党どころか、参政党にも水をあけられた惨状だった。

◆消費減税を掲げるも、有権者に忌避されたリベラル

野党第一党は立憲民主党。選挙前勢力が38で、結果は38(改選22、非改選16)。これほど自民党に大逆風が吹き荒れる選挙で、現状維持。有権者から、まったく期待されていない。

しかも支持率で全世代において自民党に負けている。確かに消費減税を掲げたが、全政党中もっとも規模が小さい。

同様に期待されていないのが、いつものリベラル野党。共産党は新勢力7(改選3、非改選4)で大敗。社民党は2(改選1、非改選1)でかろうじて党が存続。れいわ新選組も6(改選3、非改選3)で伸び悩み。いずれも消費減税を掲げていたが、有権者はリベラルを忌避した。

◆「山尾ショック」から回復傾向にある国民民主党

国民民主党は、「山尾ショック」から回復傾向にある。一時は支持率で野党第一党になったが、山尾志桜里元衆議院議員の公認(内定)で急落。ただ公認内定を取り消した後は、東京都議選で党勢が回復。今回も“取りこぼし”がほとんどなかった。もちろん、あのまま勢いが伸び続けていればもっと議席は伸びただろうが。

底力の象徴が、東京選挙区だ。7人当選の選挙で、2人立てたのは、自民・立民・国民の三党。2人を当選させたのは国民民主党のみ。合計得票数も一番多かった。

◆“SNS”での空中戦だけでなく、地上戦を行った参政党

話題の参政党。一義的には国民民主党の敵失を拾い、一気に勢いがついた。消費減税も訴える。消費減税は段階的廃止だそうで、やれるものならお手並み拝見だが、他の政策が地獄絵図。

核廃絶と在日米軍の撤退を公約に掲げるが、同時に核抑止力に頼る。

テレビで「核廃絶してどのような抑止力を」と聞かれ、神谷宗幣代表の答えは「バリア」。聞いていた有働由美子アナの声の方が裏返っていた。SNSでは有名だったが、地上波でほとんど未登場だったので、実態が知れ渡らなかったのが幸いしたか。

ただ、全国に支部を作り地方議員を当選させ、“SNS”での空中戦だけでなく、地上戦を行った。掲示板のポスター張りなど、どこの党よりも早い。田舎町を歩いていると、突然オレンジの家に出くわす。参政党の熱心な支持者の家が、参政党のカラーに物理的に染めているのだ。この組織力は、侮ってはいけない。

 他にミニ政党として、日本保守党とチームみらいがいるが、まだ勢力とは呼べない。

―[倉山満の政局速報]―

【倉山 満】
憲政史研究家 1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『噓だらけの日本中世史』(扶桑社新書)が発売後即重版に

このニュースに関するつぶやき

  • 自民党の意志・・・集中砲火を引き受けといてもらう「セキニン者はイシバ」カネ? 石破サン、なんで変節したんだろうねぇ・・・自民党の意志、じゃないのかねぇ?
    • イイネ!2
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