一時津波警報 北海道で47万人に避難指示 交通乱れ、生活直撃

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2025年07月31日 11:50  毎日新聞

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津波に備え、高台に向かう車などの列=北海道根室市で2025年7月30日午前9時49分、本間浩昭撮影

 ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする地震の発生に伴い、太平洋側を中心に全国で発表された津波警報。北海道内では根室市や浜中町などで津波が観測され、住民48万人以上を対象に避難指示などが出された。けが人や体調不良者は少なくとも13人に上り、沿岸部を走る鉄道が運休するなど住民生活にも影響が出た。【本間浩昭、高山純二、平山公崇、三沢邦彦、水戸健一、後藤佳怜、和田幸栞】


根室・花咲で80センチ


 札幌管区気象台は30日午前、緊急会見を開いた。道内各地に津波が押し寄せ、同日午後8時現在で、根室市花咲で高さ80センチ▽浜中町霧多布港と十勝港60センチ▽苫小牧東港50センチ――などを観測した。


 丹藤英司・地震津波対策調整官は「海外から到達する津波は継続時間も長くなる傾向にある。警報解除には半日〜1日くらいかかる可能性がある」と指摘した。


 道は災害対策連絡本部を設置し、69市町村に災害救助法の適用を決めた。道によると、道内では、浦河町で約1万人を対象に緊急安全確保の指示、36市町村で約47万人を対象に避難指示が出た。


 道や消防などによると、厚岸町では80代男性が避難中に転倒して左足を骨折した。函館市では4人、苫小牧市では90代女性が熱中症などの症状を訴えた。苫小牧の8歳男児が避難所の公園でハチに刺されて運ばれたが軽傷だった。釧路市と浜中町、白老町、日高町でも体調不良者がいるという。


高台へ長い車列


 鈴木直道知事は「海岸や河口には近づかず、警報が解除されるまで避難を続けてほしい」と呼びかけた。


 津波警報の発表に伴い、道内では各地で住民が避難した。


 根室市は避難指示を出し、市内では車で高台へ避難しようとする市民の車の列ができ一時渋滞した。


 花咲港では、津波注意報が警報に変わると、漁業者が次々と漁船を沖出しした。岸壁に近い防潮堤も閉じられた。根室漁協は車両を高台に移動させ、業務を打ち切った。


洋上慰霊も延期


 この日、根室港から出港を予定していた北方領土の元島民らによる今年度3回目の「北方領土洋上慰霊」は31日に延期された。


 待避所の市図書館に身を寄せた鈴木重子さん(66)=同市弥生町=は「着替えとスマートフォン、通帳だけ持って急いで逃げました」と話した。岡村順子さん(79)=同=は「運転免許証を2年前に返納したので、歩いて坂を登って来ました」と話した。


 海岸沿いの自宅から徒歩で避難した齋藤邦子さん(81)=同=は「防潮扉の閉門が遅く、漁師も防潮堤の外で仕事をしていて危機感がわかなかった。迅速に閉門した方が良いと思う」と話していた。


 釧路市では沿岸部の2813世帯4050人に避難指示を出した。市によると、午後2時時点で避難所32カ所に3827人が避難した。


 苫小牧市では、津波警報の発表直後から市内では標高35メートルの高台に位置する緑ケ丘公園展望台に市民が次々と避難した。107台分の駐車場はすぐに満車となり、通常は駐車できない場所まで車が駐車した。


 公園近くの自宅から避難してきた70代女性は「身の回りのものだけ持ってきた。警報が解除されるまで落ち着かない」と不安げな表情だった。


JR函館駅閉鎖


 函館市は6万4331世帯の10万7082人に避難指示を出した。市内では小中高校や公共施設など50カ所以上の避難所を設置。市役所8階会議室に設けられた避難場所にも多くの市民が避難した。


 海に近いJR函館駅も安全確保のため閉鎖。駅にいた乗客らは避難所として開放されたホテルに避難した。東京から訪れた女性(34)は「駅の閉鎖は知らなかった。札幌に向かう予定なので、しばらく様子を見ます」と話した。


 市内は津波警報の発令を受け、函館市電や函館バスといった公共交通機関も運休。多くの店舗が営業を休止した。


列車運休相次ぐ


 交通機関のダイヤも乱れた。


 JR北海道によると、午後5時10分時点で、津波警報の発令を受け、全区間、一部区間で運転を見合わせた列車は215本。札幌と各地を結ぶ特急は41本、快速・普通は174本が運休した。


 174本の内訳は、函館・千歳線26本▽函館線29本▽室蘭線50本▽根室線36本▽日高線12本▽釧網線12本▽花咲線9本−−だった。北海道新幹線は平常どおりに運行した。


 道によると、午後2時時点で、道内の国道は16路線30区間、道道は80路線92区間、高速道路は道央道15区間が通行止めになっている。道道の補修工事の予定も見送られた。


 また、苫小牧港管理組合などによると、津波警報を受け、港が使えなくなり、沖合で待機する客船、貨物船が相次いだ。商船三井「さんふらわあ」の苫小牧と大洗(茨城県)を結ぶフェリーは両港のターミナルが閉鎖され、海上で警報の解除を待った。


 北海道電力は地震発生後、非常災害対策本部を設置。運転停止中の泊原発(泊村)について、津波による異常は確認されていないと発表。道内にある泊原発1〜3号機や火力発電の設備などに異常は確認されていない。


 住民生活にも影響が出た。北洋銀行は30日午前、避難指示が出た地域にある浦河支店、厚岸支店をはじめ最大で19支店の営業を取りやめた。ATMも使えなくなった。セイコーマートも道東、道北、道南の沿岸部の店舗を中心に一部休業した。


 太平洋沿岸部に立地する門別競馬場(日高町)で開催中のホッカイドウ競馬は30日の全競走を取りやめた。石狩市内にあるいしかり砂丘の風資料館、はまなす郷土資料館などは臨時休館を決めた。



このニュースに関するつぶやき

  • 心に警戒を怠ったのでは急場の事態に対処する事は出来ない��警報を出すのは当然ǭ普段と違うわけだから影響は出る��もし無警戒で津波がやってきたら無数の人が巻き込まれて死人の山になる����
    • イイネ!1
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